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東京オートサロンでついに姿を見せた三菱の新型軽EV! 市販間近のその期待値やいかに!?

 東京オートサロン2022で発表された新型軽EV「K-EV concept X Style」。

 2021年8月に、日産は三菱との共同プロジェクトNMKVで企画・開発を進め、新型の軽クラスの電気自動車を、2022年初頭に発売することを発表。「バッテリー容量は20kWh」、「実質購入価格は約200万円から」と、おおよその車両構成と価格感も発表していた。

 ここで発表されていた軽EVが、「K-EV concept X Style」として2022年についに発売されることになる。

 電動化が世界的に進むこれからの波に乗って、K-EVは売れるのか? 売れるために必要な価格と戦略と性能とは何か? 渡辺陽一郎氏が考察していく。

文/渡辺陽一郎
写真/MITSUBISHI、NISSAN

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■国内メーカーでも電気自動車シフトが進むなか、新たに登場する三菱の軽EV

東京オートサロン2022で発表された新型軽EV『K-EV concept X Style』。日産と三菱の共同プロジェクトNMKVで企画開発が進められていた

 最近の自動車業界では、電気自動車の話題が多い。ホンダは2040年までに、世界で新車として販売する車両をすべて電気自動車と燃料電池車にすると発表した。モーター駆動を併用するハイブリッドを含めて、エンジンを全廃する方針だ。

 トヨタは170以上の国と地域でクルマを販売しており、電力インフラの不整備によって電気自動車を利用できない地域もある。

 従ってすべてを電気自動車にすることはできないが、2030年には、1年間に350万台の電気自動車を販売すると発表した。トヨタの2021年における世界販売台数は962万台だから(ダイハツと日野を除く)、その約36%が電気自動車になる計算だ。

 そしてトヨタが2030年に北米・欧州・中国で販売する車両は、すべて電気自動車で占められる。同年までに、30車種の電気自動車を発売するという。

 日産は、三菱やルノーと提携して、2030年までに35車種の電気自動車を投入するとしている。

 日本の自動車メーカーは、全般的に電気自動車で遅れているといわれてきたが、トヨタは1997年に世界初の量産ハイブリッドとして初代プリウスを発売した。

 ほかのメーカーも含めて日本にはハイブリッドが多く、マイルドタイプまで含めると、2021年に国内で新車として売られた乗用車の約40%が電動車であった。

 つまり日本のメーカーは、ハイブリッドを通じて電動車の技術を蓄積しており、電気自動車にも応用できる。それを示したのが、トヨタの2030年に350万台の電気自動車を販売する計画だ。

 国内市場では、2021年に国内で販売された新車の内、37%を日本独自の規格とされる軽自動車が占めた。そこで2022年には、日産と三菱から、軽自動車サイズの電気自動車が発売される。

 ちなみに三菱は、2009年に軽自動車サイズの電気自動車として、「i」をベースに開発した「i-MiEV」を投入している。しかし航続可能距離が短い割に価格が高いこともあり、リーフのような好調な売れ行きに至らなかった。そこで日産との業務提携に基づき、新たな軽自動車サイズの電気自動車を開発している。

 2022年に発売される軽自動車サイズの電気自動車は、東京オートサロン2022に「三菱K-EV concept X Style」の名称で参考出品された。三菱eKクロス/日産デイズなどの軽乗用車と同様、日産と三菱が共同開発したから、日産ブランドも用意される。この内、三菱ブランドが先に披露された。

■三菱K-EV concept X Styleの気になるスペックとは?

 パワーユニットからプラットフォームまで電気自動車としての専用設計だから、eKクロスやデイズとは共通性がほとんどない。それでもK-EV concept X Styleのフロントマスクは、三菱車に共通するダイナミックシールドのデザインで仕上げた。

 今の三菱は、同社の伝統とされるSUVを中心に開発しており、K-EVコンセプトXスタイルのフロントマスクにもブランドの統一性を表現したわけだ。日産もV字型グリルを採用する。

写真の三菱 eKクロスをはじめ、三菱の現ラインナップと『K-EV concept X Style』との共通性はほとんどないが、フロントマスクは三菱車共通のダイナミックシールドデザインでまとめた

 日産は2021年8月に「軽自動車クラスの電気自動車を2022年度初頭(2022年4~5月頃)に発売」すると発表した。駆動用電池の総電力量は20kWhとされ、補助金を差し引いた実質購入価格は200万円以上としている。三菱が公表したK-EV concept X Styleの市販版も、この規格に基づいて開発されている。

 日産では軽自動車サイズの電気自動車について、ボディサイズも公表した。全長:3395mm、全幅:1475mm、全高:1655mmだから、デイズやeKワゴン&eKクロスよりも若干高い程度だ。軽自動車のカテゴリーとしては、ワゴンR、ムーヴ、N-WGNといった全高が1600~1700mmのハイトワゴンに属する。

 ボディの下側に駆動用電池を搭載するから、床の位置が若干高くなって室内高が減ることは考えられるが、大人4名が快適に乗車できる居住性が備わる。

 かつてのi-MiEVでは、駆動用電池が16kWhの場合、1回の充電によってJC08モードで164kmを走行できた。リーフもJC08モードなら、40kWhで400km、62kWhでは570kmを走行できる。大雑把にいって1kWh当たりの航続可能距離は10kmだ。

 そうなるとK-EV concept X Styleの市販版と、その姉妹車として日産から発売される軽自動車サイズの電気自動車は、20kWhの駆動用電池を搭載して200kmを走行できると考えられる。

 ただし今はWLTCモードで計測されるから、80%の160kmという見方も成り立ち、いかに200kmの水準まで伸ばせられるかが見どころだ。

■売れるために求められる2つの条件! 軽EV販売成功のポイントとは

 エコロジーを重視する電気自動車の世界観では、クルマは日常的な買い物など、短距離の移動に使う。そのために電気自動車は、本来的に軽自動車サイズと親和性が高い。

 そして長距離の移動は、パーク&ライド(クルマを使って駅まで出かけて電車に乗り替える移動方法)とする考え方だから、「1回の充電で何kmを走れるか」は優先順位の高い性能ではない。

 それでも現実的には、移動の途中で電気を使い切る不安を払拭できない。安心して使うには、1回の充電で走行できる航続可能距離をWLTCモードで200kmの大台に乗せることが大切だ。200kmを走れるか否かは、売れ行きを左右する大切な要素になる。

 好調に売るために大切な2つ目の条件は価格だ。前述のとおり日産は、補助金を差し引いた実質購入価格を200万円以上と発表したが、そのグレードの内容が重要になる。

 200万円で手に入るのが、快適装備の大半を省いた法人用の最廉価仕様なると、売れ筋グレードは220~230万円に高まる。上級グレードは250万円前後に達する。

 リーフで価格が最も安いSは、40kWhの駆動用電池を搭載して332万6400円だ。補助金の交付額を差し引くと約294万円だから、20kWhの軽自動車が250万円だと、割高感が生じてしまう。

 逆に補助金を差し引いた200万円で、相応に満足できる内容が得られると、リーフに比べて90~160万円は安くなる。軽自動車サイズの経済的なメリットも際立つ。

東京モーターショー2019に出展された日産の軽EVコンセプトカー『IMk』

 また今の軽自動車では、ルークス、eKクロススペース、N-BOXといった全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた車種が人気だ。これらのスーパーハイトワゴンは、軽乗用車の新車販売総数の半分以上を占める。

 このスーパーハイトワゴンに、エアロパーツ、ターボ、4WDを装着した最上級グレードが約200万円だから、電気自動車が補助金を差し引いた200万円の実質購入価格で実用的に不満のない仕様となれば、購入の対象に入るだろう。

 装備を満載した最上級のスーパーハイトワゴンか、電気自動車か、という選択になるからだ。

 そしてもうひとつ、数年後の売却額を高く保つことも不可欠だ。日産の残価設定ローンで、5年後の残価率(新車価格に占める残存価値の割合)を計算すると、セレナは47%、ノートは33%だが、リーフは23%まで下がる。

 電気自動車は使用期間が伸びると駆動用電池が劣化するから、中古車を買うユーザーは少なく、価格を下げねばならない。そのために数年後の売却価格も下がってしまう。電気自動車は、いわゆるリセールバリューが悪い。

 電気自動車の売れ行きを増やすには、「売却時に買い叩かれる」という不安を取り除いて、安心して使えるようにすることも大切だ。そのためにはリチウムイオン電池の劣化を抑え、なおかつ認定中古車の整備など、中古車需要を盛り上げる工夫も求められる。技術と販売面の連携が不可欠だ。

 以上のように軽自動車サイズの電気自動車を成功させるには、WLTCモード燃費で200kmの航続可能距離、実質購入価格が200万円で満足できる内容を得られること、リセールバリューの改善が求められる。

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