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 大型二種免許を持つバスファンは少なくないが、実際に路上を運転する機会は自家用バスを手に入れない限りはそうないはず。バスを運転したくてうずうずしている人にオススメなのが、ペーパードライバー講習だ。今回は実際に受講し、路上教習を敢行。実際の営業中のバスと並走できるなど、ファン垂涎の内容であった。そして今回の教習からバスドライバーのスゴさを痛感したポイントがいくつもあった。果たしてどんな内容だったのか!?

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:平和橋自動車教習所
(動画が見れない場合はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBからご覧ください)


趣味目的でも免許さえあればOK

 趣味目的で大型二種免許を持っているが、職業運転士でないとバスを自家用で買わない限りは運転する機会はほぼない。そこで東京23区内で大型二種免許が取れる2つしかない教習所のうちの一つ、葛飾区の平和橋自動車教習所で大型二種のペーパードライバー教習を、取材のために短縮版を組んでもらい受けてきた。

京成バス奥戸営業所を右に見る

 現在はペーパードライバー教習はコロナなど、諸般の事情により募集を中止しているので興味のある方は再開までお待ちいただきたい。またペーパードライバー教習の詳細は、普通車も含めて【場内教習編】に詳報したので合わせてご覧いただきたい。

 場内コースで必修科目ではないが坂道発進・S字・鋭角・停留所停車と4つの課題をクリアし、いよいよ路上に出る。新小岩駅にほど近い場所なので、付近は京成バス、京成タウンバス、都営バスの路線がある場所だ。よって路上を走るコースは、ほぼこれらの路線バスの経路と重なっている。

 市街地の路上駐車がある道路、場内コースほどではないが鋭角で曲がらなくてはならない道路、生活路線で人や自転車が行き交う信号のない交差点を通過する道路、片側2車線で思い切って速度を出さないと渋滞の原因になりそうな幹線道路等、さまざまなコースを指示される。

路上教習360度動画を約20分収録!

 路上教習でも指導してくれたのは平和橋自動車教習所の営業企画担当で教習指導員の千葉尚祐さん。そして乗客役として後で感想をいただき、カメラマンとしても同乗してくれた同社営業企画担当の岡本佳奈さん。

平和橋自動車教習所の千葉尚祐さん(右)と岡本佳奈さん(左)

 では路上教習の一部を約20分間、360度VR動画で収録したのでご覧いただきたい。PCの場合はポップアウトにより360度どの視点でも視聴可能なほか、ジャイロ内蔵のスマホであれば画面を向けた方向に視点が動く。

【360度VR】平和橋自動車教習所 ペーパードライバー教習 大型二種 路上編

スタートは路上から!

 場内から路上教習コースへは道も狭く一方通行が多いので教習指導員の千葉さんが運転し、指定場所で運転を交代する。免許取得のための路上教習も同じ場所からスタートするそうだ。

 平和橋付近からスタートし、東新小岩付近を通り、奥戸付近で環七通りに入りスピードを上げ、今度は小岩駅方向に進み鋭角を曲がり奥戸方向に戻る。京成バス奥戸営業所の前を通過して京成立石駅付近の狭く路上駐車の多い駅前通りを通過して平和橋自動車教習所に戻った。

12m大型車のため左折には前をそれなりに突っ込む

 場内コースに戻るのはさほど難しくないのか記者が運転して教習所内に付けた。

世間話をする余裕はあるものの…

 VR動画をご覧いただければお分かりと思うが、結構世間話をしながらしゃべっている余裕があるように見えるだろう。確かに運転そのものは普通自動車では運転しているのでペーパーではないが、大型車となると勝手が異なる。

 しかもワンマンバスの運転士は運転に加えて前後の扉開閉操作、運賃箱の操作、放送設備の操作、自分での放送、車内監視とやることが多すぎて、記者のしゃべっている余裕どころの騒ぎではないはずだ。

 それを一層感じさせてくれたのは、やはり都心部で普段乗客として乗っているバス路線をバスで自分が運転していることのすごさからだろう。

記者の運転総評は?

 さて記者の運転についての千葉さんの総評は「いや良かったですよ。ただし全体的に左に寄りすぎで、もう少し中央線よりでもいいと思いました。しかし大型車の場合は運転のうまいヘタというよりも、車両の挙動をイメージできるかによるところが大きいので、それができなければ少しのズレが最終的に修正不能なまでに広がってしまい立往生です」

 「古川さんはペーパードライバーかもしれませんが、お仕事柄バスをよく見ているはずですのでバスの動き方が自然とイメージできているのでしょう。それはさすがだなと思いました」と、取材のため多少の下駄をはかせてくれたのかもしれないが、大型車の運転には自信がついた。

京成バスと行き違う!

 一方、乗客役で終始立席で写真を撮影してくれていた岡本さんは、「いや~、私も全然普通に乗ってましたよ。コケることも、つまずくこともなかったですし普通にバスに乗っている感じでした」と、ノンステップバスよりも確実に乗り心地が良いツーステップバスだからということもあろうが概ね好評だった。

 実際に東京都内の複雑かつ混雑した道路を路線バスと一緒に走る経験などそうできるものではない。その点でマニア目線ではもちろんだが、それ以上の経験と収穫があったように思える。それは何でもない路駐車両や2車線だが緩やかな何でもないカーブがバスにとっては難所であることがよくわかったからだ。

 よって自転車や普通自動車を運転する際にバスの挙動をイメージして、こちらが少し気を使うだけでバスは非常に走りやすくなることが改めて理解できたような気がした。

教習所が区民の足を確保?

 平和橋自動車教習所は他の教習所と同様に最寄りの駅までの送迎バスを多数運行している。記者も新小岩駅からの送迎バスに乗車したのだが、教習所の送迎バス乗り場の案内看板が妙にバス停っぽい。聞いてみると、いくつかあるコースのうち京成立石駅コースは地元の高齢者に開放しているのだという。

時刻表付きの「バス停」看板

 教習所近くの高齢者に京成立石駅に行く送迎バスを、葛飾区との共働で開放することにより、高齢者の足を確保することにしたという。常に座席が埋まるわけではないので開放することにした京成立石駅への送迎バスの運賃は無料。高齢者の証明のためだけにシルバーパスを見せるだけで乗車できる。

京成立石駅行きを高齢者に開放!

 そもそも有償運送ではないために、あくまでもシルバーパスは年齢の証明のためだけに提示を求めるだけでだ。同所では地元への社会貢献の位置付けて送迎バス乗り場の看板をバス停のようにしたのだろう。ダイヤも決まっていて時刻表が掲示してあるので本当に路線バスが来そうで面白い。

送迎バスは普通免許のハイエースと中型免許のハイエースコミューター

プロ運転士に畏敬の念を抱く

 今回のペーパードライバー教習を通じて、トラックであれバスであれ、記者と同じ免許を持っているのだが、走れば走るほどプロドライバーには畏敬の念すら抱いた。大きなバスを動かすことは記者でも十分に可能だが、バス停に付け乗客対応をし、案内放送をしダイヤ通りにバスを動かすとなると、相当の訓練を受けなければできることではない。

普通車ではなんでもない道が大型車では狭い道に!

 免許を持っている方はペーパードライバー教習が再開されれば、運転したい目的でも構わないのでチャレンジしていただいきたい。おそらく教習終了時には記者と同様の気持ちになっているはずだ。機会があれば実在のバス路線を全線トレースしたいくらいに興味深い体験になった。

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