節分の季節恒例のJAIA(日本自動車輸入組合)主催の輸入車試乗会が、大磯プリンスホテルを舞台に開催された。コロナ禍の影響で残念ながら中止となってしまった昨年から早1年。今回開催できたことは多くの関係者のご努力の賜物であり、まずは心から感謝の言葉をおくりたい。
さて、今年、記念すべき40周年を迎えたJAIA試乗会のレポート。第2回目は、新型VWゴルフのディーゼルモデル、TDIのドライビングインプレッションをお届けする。
おいしい水と空気のような存在
―フォルクスワーゲン ゴルフTDIアクティブ アドバンス
JAIAの試乗会“一気乗り”は、朝から夕方までいろいろなクルマをとっかえひっかえ試乗するシステムで、たいてい細かいスペックの予備知識や操作方法のレクチャーもなく走り始める。同乗者がいる場合、感想をあれこれ言いながらあっという間に持ち時間の試乗時間が終了してしまうものである。
このゴルフTDIに至っては、試乗時間の途中に同僚記者から奪って試乗したもので、いつも以上に予備知識もなく乗り込んだ。すでにエンジンは掛かっていたので、エンジン音からディーゼルであることはわかっていたが、ドアを閉めるとディーゼル特有のエンジンノイズもあまり気にならない。さすが2020年代のクルマ、コクピットの液晶メーターはもとより、エアコンの操作からライトスイッチに至るまでタッチパネル操作で、旧世代の人間としては初対面だとまごついてしまう。
「こういうので良いんだよ」的な一台。インスタ映えもしないしTwitterで炎上もしないしFacebookで自慢もできないけれど、実用車として真面目に作り込まれており飽きが来ない。地味だけど運転も楽しい。オーナーの人生に寄り添いつつ10万キロ、20万キロと距離を重ねて家族の一員になるような隠れた名車。
不思議な形状のセレクターレバー(スイッチ?)を操作すると(操作自体は直感的でわかりやすい)、ディーゼル特有の豊富な低速トルクでスルスルと走り出す。大磯の市街の少々荒れた路面でも不快な突き上げもなく適度にいなしながらスルスルと進む。決してロードノイズは静かではないが、同乗者との会話を妨げるほどではない。
ワインディングに持ち込むと2リッターディーゼルターボ+7段DSGのトランスミッションの組み合わせ(あとから調べた)とコンフォート寄りのサスペンションでも、狙ったところにすっと鼻が向き、意図通りのブレーキングによって、思いのほか気持ちよくコーナーを次々とクリアしていく。
……などと同乗者と話していたのだが、いつの間にか大磯の街の美味しいお店の話とか、昔のJAIAの思い出話に花が咲いていることに気がついた。これは試乗にあるまじき、クルマの存在を忘れてしまっているのである。
これは高原に行って美味しい空気と水に最初は感動するが、ちょっとしたらその存在を忘れてしまうのと同じかもしれない。汚い空気とまずい水はいつまでもその存在を意識してしまうものだが、その存在を忘れてしまうということはそれだけ自分に自然にフィットしている証左なのではないか。
深い感動から自然にフィットさせる……やはりゴルフは究極のベンチマークとなる一台だ。(日比谷一雄)
VWゴルフGTI
クルマ偏差値が70を超える優等生だ。実用性も動力性能も運転フィールも何も文句の付けようがなく、年収偏差値が50を切る筆者にとっては余りに高額に感じるものの、それ以外はまさにミスターパーフェクト。ただし、クルマに何らかの叙情的想いを寄せる人にはTDIか、いっそイタ車かイギリス車がおすすめ。
※以下にゴルフGTIの友達と言ってもいい3台のホットハッチを短いコメントとともにご紹介!
アバルト595
ルノー メガーヌR.S.
ミニJCW(ジョン クーパー ワークス)
Text: 日比谷 一雄(KH) / 大林晃平(KO) / 田仏 呑 / AUTO BILD JAPAN(アウトビルトジャパン)
Photo: 中井裕美 / 大林晃平 / 日比谷一雄 / AUTO BILD JAPAN