ミニバンというカテゴリーにありながら、年間に10万台弱の販売台数を誇るトヨタ アルファード。自販連が発表する乗用車ブランド通称名別順位では、2021年累計販売で4位に入る。
このランキングの上位常連は、コンパクトカーだ。トヨタ アクア、ホンダ フィット、日産 ノートなどがベスト5の中にひしめいていた。安価で小さいクルマのいる場所に、アルファードという高価で大きいクルマが2年連続で入っていることは、驚愕の事実である。
なぜアルファードだけがここまで売れるのか。トヨタ ヴォクシー、日産 セレナなどのミニバンたちと比較しながら、アルファードが圧倒的に勝ち誇る理由を考えていきたい。
文/佐々木 亘
写真/TOYOTA、NISSAN、AdobeStock
■ミニバンNo.1は5ナンバーが常連!それでもアルファードが勝った理由はサイズにあり
2021年に各種ミニバンがどの程度売れたのか、その数を見ていこう。最上位に来るのがアルファードで9万5049台だ。
次いでヴォクシーが7万85台、フリードが6万9577台、セレナ5万8954台となる。シエンタ(5万7802台)、ノア(4万4211台)、ステップワゴン(3万9247台)と続いて、トップ20のなかには、ミニバンが7台入った。
ランクインするミニバンは、ほとんどがスモール・ミドルサイズであり、標準グレードは5ナンバー枠に収まる車種だ。
販売台数を見ても、ランキングが隣同士の車種では、それほど大きな差はなく、数百台から数千台の違いである。5ナンバーミニバン同士の争いは熾烈で、ユーザーの支持を各車が分け合う形で決着したのだろう。
対して、アルファードと次点のヴォクシーの差は約2万5000台にもなった。さぞかしラージサイズミニバンが売れるのだろうと、周囲を見渡しても、同サイズのライバルは見当たらない。
31位にホンダ オデッセイ、36位に三菱 デリカD:5といった大きめのミニバンは出てくるが、アルファードの直接的なライバルとは言い難い存在だ。
ハイト・ラージ・プレミアムという3拍子を備えた存在として出てきて欲しいのは、エルグランドだが、ランク外に終わった。2020年には約1万8000台を販売したヴェルファイアの姿も消えている。つまりアルファードは、このカテゴリーの需要を一手に引き受けたということになるだろう。
争いに巻き込まれることなく、独占状態でアルファードは販売を伸ばし続け、独り勝ちになった。大きいミニバンとして驚きの販売台数を記録しているが、裏を返せば大きいミニバンだからこそ、ここまで売れたとも言えるのではないだろうか。
■ミニバンは4人で乗るのが主流に? 大切なのは2列目シート
ひと昔前までは、大家族が愛用するクルマがミニバンであった。ミニバンは、夫婦二人に子供が3人以上、あるいは2世帯で同居家族が6名以上となるユーザーが買い求めたものだ。
しかし、2000年初めからのミニバンブームを機に、少人数の核家族がミニバンに乗る様になった。3人~4人家族でも、広くて居住性の高いミニバンを買っていく。
購入層が変化し、ミニバンに求められる機能性も大きく変わったと思う。多人数乗車のシーンはほとんどなく、3列目の居住性はほぼ意味をなさない。大切なのは「2列目」だ。
ミニバンを検討する核家族ユーザーの希望は、キャプテンシートになっているのは当たり前、シート幅は広く、どっしりと腰を据えられるほうがいい。シートは後方へ大きくスライドでき、リクライニングしながらオットマンを使い、足を延ばしても運転席や助手席に届かないくらいの広いスペースが欲しいという。
こうした要望を叶えるためには、ヴォクシーやセレナよりもアルファードのほうが適任だ。より少ない人数で乗るからこそ、より大きく快適な空間が求められる。矛盾しているようにも見えるこのニーズが、今のスタンダードと理解するべきだろう。
■クルマは移動手段から財産へ! ライバルにはない圧倒的なリセールバリュー
最近は比較的高価なものを、短い周期で「買い替える」ことに抵抗が少なくなった。スマートフォンがいい例だろう。日本で圧倒的な人気を誇るiPhoneは、機能性はもちろんリセールバリューの高さから、多くのユーザーから支持される存在だ。iPhoneユーザーの多くは、次もiPhoneを購入する。
クルマにもこの傾向は現れてきており、アルファードの人気の裏には、圧倒的なリセールバリューの高さがある。iPhoneと同じように、短い周期での買い替えが実現できる「価値」が長く維持されるのだ。
残価設定ローンやサブスクリプションサービスを使うことで、毎月の負担を少なく抑え、車検を受けることなく常に新しいクルマを使うことができる。残価率で比べると、ヴォクシーやセレナは、アルファードに遠く及ばない。アルファードはクルマを短期間で「買い替える」という、新しい選択肢を作り上げた。
今後、クルマにとっても「最先端」であることは重要なポイントだ。常に新しい価値に触れられるアルファードの売り方は、これからの自動車販売のスタンダードになっていくだろう。
【画像ギャラリー】ミニバンランキング無敵の1位!! 王者アルファードとラージミニバンのライバルたち(10枚)画像ギャラリー投稿 ライバルを圧倒しミニバントップに! 高いのになぜアルファードばかり売れるのか!!? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。