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2022年ニッポンの自動車業界のカギは何?

「百年に一度の変革期」と言われるクルマ界。専門家の予想をも超えるスピードで変貌を続ける2022年のクルマ界で、カギになるのは何かを覗いてみよう。

※本稿は2021年12月のものに適宜修正を加えています。
文/渡辺陽一郎、清水草一、鈴木直也、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
初出:『ベストカー』2022年1月26日号

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■2022年どうなるクルマ界 5つのテーマで予測する

●テーマ1:2022年に半導体問題はいったいどうなる?(TEXT:渡辺陽一郎)

ヴェゼル、NXとも人気が高く納期は現在も延びている

 半導体、ワイヤーハーネス、各種のユニットが足りず納期が3カ月以上の車種も多い。ヴェゼルは生産工場をNシリーズやフィットと同じ鈴鹿製作所に移した影響もあり、大半が8カ月以上でPLaYは1年に達して受注を停止。

 レクサスでもNXは半年から1年という。販売店によっては「ディーラーオプションのカーナビが遅れるので、まずは車両を納車して、その後に届いた段階でカーナビを装着する」という話も。

 納期遅れの終息時期だが、メーカーでは「ロックダウンが終わっても、新しい変異株が発生しており先行きが見通せない」という。長期戦を想定し、購入商談は早めに始めたい。販売店からは「乗り換えの提案は、愛車の車検が満了する約1年前から行っている」という話も聞かれる。

●テーマ2:大注目!! 2Lクラスミニバン戦争が激化(TEXT:渡辺陽一郎)

ノア/ヴォクシーが1月、ステップワゴンが5月、セレナが9月にデビュー予定。3メーカーとも気合充分で楽しみ。画像はトヨタの新型ノア

 2022年1月13日に新型ノア/ヴォクシーが発表され、次期ステップワゴンも5月に発売される。その後はセレナがフルモデルチェンジを行う。長年熾烈な販売合戦を展開しているライバルが初めて同じ年に刷新されるのだ。

 ミニバンは少子高齢化になった今でも需要が根強く、新車として売られる小型/普通車の25%前後を占める。販売店からは「お子様が成長しても、車内の広さに魅力を感じてミニバンに乗り続けるお客様が多い」という話も出る。

 売れ筋カテゴリーとあって競争が激しく、実用指向の車種で価格にシビアなユーザーが多いため、買い得な新型ミニバンが出揃う2022年は、購入のチャンス到来でもある!

●テーマ3:2022年は120km/h時代に本格突入か!?(TEXT:清水草一)

常磐道も120km/h区間の候補だが、2022年中はなさそう

 ちょうど1年ほど前の2020年12月22日、新東名の御殿場JCT〜浜松いなさJCT間145kmの全線6車線化が完成し、最高速度が120km/hに引き上げられたが、2022年に対象区間の拡大はあるのか?

 追加が予定されている区間は、東北道(浦和IC〜佐野スマートIC間、52.9km)、常磐道(柏IC〜水戸IC間、71.2km)、東関東道(千葉北IC〜成田JCT間、26.1km)の3つだが、2022年中の追加は見送られる可能性が高いだろう。

 この1年は新型コロナの影響で、高速道路の交通量が激減した期間が長く、充分な安全性の検証データが取れていないと思われるためだ。残念ながら拡大の実施は2〜3年先になると見る。

●テーマ4:F1、WRC、WECの注目ポイント

・F1…2021年からの最大の変化は、ホンダが撤退したこと。しかし、少なくとも2022年に関してはホンダがパワーユニットの組み立てなどを支援する。名称は変わっても2022年もホンダのパワーユニットは健在。

WRC…最大の変革は1.6L、直4ターボ+モーターのハイブリッドとなる点だ。モーターのパワーが加わることで、SSタイムが速くなるケースが続出すること必至。最高にスペクタクルな戦いになる。そしてラリージャパンがチャンピオン決定戦となる、これが最高のシナリオ!!

WEC…2022年トップカテゴリーのハイパーカーにプジョーが新規参入。参戦したカテゴリーで必ずチャンピオンを獲得してきたプジョーと耐久の王者トヨタのガチ勝負は必見!!

●テーマ5:改正道交法の施行で混乱必至!?

 警察庁が改正道交法を2022年5月から施行すると発表。

1)75歳以上で誕生日の160日前までの3年間に対象となる違反行為(表参照)があった場合、運転技能検査(実際にコースを走行)の義務付け

2)サポカー限定免許の導入

 の2点が盛り込まれている。

 運転技能検査は運転免許証の更新期限の半年前から何度でも受けることができるが、不合格の場合は更新できない。

 高齢者の運転するクルマの重大事故が増えていることを受けての措置だが、施行後の混乱は必至だろう。

運転技能検査の対象となる違反

■2022年に注目すべきEVのターニングポイント

●青天の霹靂を超える巨大爆弾が炸裂

 世の中先のことはわからない。実は、このページの原稿を書こうとした矢先、トヨタの「バッテリーEV戦略に関する説明会」という巨大爆弾が炸裂したのだ。

 それまで「2022年は日産からアリアも出るし、トヨタからもbZ4Xが発売されるし、EVで日本車の反撃が始まる年だ」という原稿を書いていたのだが、そんな構想はコナゴナに吹き飛びました。

 で、気を取り直して考えたのだが、この『トヨタEV爆弾』の爆風をまともに食らったのがどこかといえば、そりゃやっぱり日産だよね。

 日産は11月29日に「日産アンビション2030」と題した発表会を実施。電動化に向け今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに15車種のBEVを市場に導入することを表明、あわせて新しいコンセプトカーを3車種披露した。

 これはこれで充分に意欲的な構想なのだが、わずか2週間後にこんな発表があるとは……。電動化に関する話題、トヨタに全部美味しいところ持っていかれちゃった。

●2022年はEVにとってのターニングポイント

トヨタがEVに本気になったのは他メーカーにとって脅威でもありメリットでもある(撮影/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 新車販売の現場としても寝耳に水。東京モーターショー2019での発表以来、2021年6月には予約注文を開始するなど、日産はアリアの発売に向けた準備を整えてきた。

 ところが、上海ショーで伏兵bZ4Xが発表されたと思ったら、そのバックにはさらに15車種ものコンセプトカーが控えていたとは!

 ここまで強烈なEV戦略を目にしたら、普通の人は「とりあえずトヨタのEVを見てから考えよう」ってなる。

 日産期待の新世代EVのローンチは、思わぬ逆風にさらされたと言わざるを得ない。

 ただ、この「トヨタのEVを見てから考えよう」は長期的に見れば悪いことではなく、日本のEV市場全体にとって重要な分岐点になると思う。

 政府がカーボンニュートラルの旗を振り、大手メディアが「EVに移行しないとガラパゴスになる」と煽っても、これまで実際にEVを買ったのは新しい物好きの『アーリーアダプター』と言われる顧客層まで。多くの「普通の人」はまだまだ様子見だった。

 そんな「普通の人」にすんなりEVを買ってもらうには、トヨタのディーラー網やサービス体制への信頼感が不可欠。トヨタが本気になったことで、やっとEVが『アーリーマジョリティ』層まで拡大する。2022年はそのターニングポイントの年になるわけだ。

 本当はマツダの直6FRのことも書きたかったのだが、『トヨタEV爆弾』に吹っ飛ばされちゃった。

 来年のことを言うと鬼が笑うというが、まさにその諺どおりの出来事でしたね。

(TEXT:鈴木直也)

■国産8メーカー この先の「戦略ロードマップ」をよむ

 国内各メーカーの今後5〜10年を見据えた中長期戦略を見ていくと、やはり「電動化」へ向けたロードマップが各社中心となっている。

 これは2050年を目指すカーボンニュートラルに向けた動きが背景となっている。

 CO2排出量の削減には、ライフサイクルアセスメント(LCA=製造時から廃車時まで、トータルでのCO2排出量を考慮する)の視点が重要ながら、やはり内燃機関一辺倒では実現はかなわず、ハイブリッドパワーユニット(HEV)、PHEVも含めた『電動車』が必須となってくるということだ。

●電動化への流れはますます加速する

各メーカー電動化への動きがロードマップの中心(撮影/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 トヨタが2021年12月14日に発表したEV戦略はあまりにもインパクトが大きく、それまで「トヨタはEVで後れを取っている」など頓珍漢な見解を示していた方面に一矢報いたものとなった。

 トヨタはそれでもEV一辺倒ではなく、HEVやFCEV、さらには内燃機関まで含めた最適な手段で目標=カーボンニュートラルを目指すことを示したのは凄いことだ。

 電動化といった観点ではホンダが急進的で、今後6年間で6兆円の開発費を投じ、2040年にはグローバルで販売する新車すべてをEV及びFCVにシフトするとのロードマップを示している。ここにはハイブリッドは含まれないので、ホンダから内燃機関が消滅するという近未来像だ。

 さらには、比較的電動化に消極的に見えたマツダや三菱も、2025〜2030年にかけてEVを相次いで投入することを示している。

●今後の展望は電動化だけではない

 ホンダは一方で「2050年にはホンダ車がかかわる交通死亡事故をゼロにする」目標を掲げ、センシング技術のみならず、人間の脳の認知メカニズムにまで踏み込んで予防安全技術を推進することを掲げる。

 いわゆる「レベル3」以上の自動運転ではなく、既存の交通環境のなかで、各車両が自律的に予防安全を実現できるソフトウエアの開発である。この知見が来たるべき「レベル4」以上の自動運転時代へ大きく寄与することは間違いない。

 安全技術に関しては、当然ほかのメーカーも積極的に取り組んでおり、2022年以降、さらなる新技術が市販車に搭載されることになる!!

国産メーカー中期計画のメイン部分
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