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日産全固体電池の謎 自転車バッテリーなぜ盗まれる? クルマ界近未来ニュース3選

 本誌『ベストカー』にて、毎号技術系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。

 今回は日産の全固体電池、電動アシスト自転車のバッテリー盗難、ホンダに続き自動運転レベル3を実現しそうな企業などをお届けします!

※本稿は2021年12月のものです
文/角田伸幸、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年1月26日号『近未来新聞』より

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■トヨタの先を行く? 日産の全固体電池の謎

日産が公開した全固体電池プラットフォーム。電池の薄板化は車両のパッケージングにも影響

 2022年11月末に発表した長期ビジョン「アンビション2030」で、久しぶりに元気のいいところを見せた日産。

 なかでも全固体電池の発表は胸躍るものだった。内田社長によれば、2024年に社内に試作品工場を作って全固体電池の生産を始め、2028年には量産に移行するという。

 これには筆者も驚いた。なぜなら日産は2018年、リーフのバッテリー生産会社である「AESC(オートモーティブエナジーサプライ)」を中国エンビジョン社に譲渡しており、今後の電池開発はエンビジョンとの共同開発になると思っていたからだ。

 わざわざ社内にパイロット工場を作るということは、日産総研をはじめとする日産側の研究陣のほうが、一歩先を行っているということか。

 実際に内田社長は発表会で「全固体電池の正極、負極には新しい素材を使う」と語っている。電解質を固体化するだけでも快挙なのに、正極、負極の活物質まで刷新するとは、日産恐るべしである。

 現在のリチウムイオン電池を見てみると、正極材ではコバルトフリー化、負極材ではリチウムイオンをたくさん収容できるシリコンの採用が話題となっている。日産が実際に何を使うかはわからないが、実現すればEVの使い勝手が一変することは確実だ。やっちゃえ、日産!

■自転車のバッテリーはどうして盗まれるの?

18650電池が詰まったバッテリー。18650電池を大量に繋げて家庭用蓄電池を作った強者もいる!

 電動アシスト自転車のバッテリー盗難が相次いでいる。警視庁によれば、2021年10月末までに都内だけで266件の盗難が発生しており、年間では300件を超えるようだ。

 なぜ自転車のバッテリーが盗まれるかだが、筆者はふたつのパターンがあると考える。

 ひとつは単純に、交換用バッテリーとしての需要狙い。電動アシスト自転車の交換用バッテリーは、普通に新品を買うと3万円以上するが、ネットで中古品を探すと1000円程度から見つかる。

 コロナ禍もあって、電動アシスト自転車は大人気(2020年の販売台数は約74万台)だから、よからぬ輩がこの市場に目を付けて、盗品を売りさばいていると予想する。

 もうひとつの動機は、内部の「18650電池」狙いだ。

 電動自転車のバッテリーの中には、単3電池に似たリチウムイオン電池がぎっしり詰まっている。

 この電池を、直径18mm、長さ65mmというサイズから「18650電池」と呼ぶのだが、実はPCからドローンまで、さまざまなデバイスがこの電池で動いていて、多くの需要があるのだ。

 一度パックから取り出してしまえば、18650電池は盗品の区別が難しいため、窃盗犯は何食わぬ顔をして売りさばいてしまうのだろう。

 物騒な話題も増える年の瀬。電動アシスト自転車のオーナーはバッテリーに鍵をかけるか、自宅内に保管する習慣を身につけたほういいだろう。

■ホンダに続くレベル3を実現するのはこの企業

ドイツの自動運転レベル3の口火を切りそうなベンツSクラス。日本での実現はもう少し先?

 2021年はホンダのレジェンドが世界初のレベル3自動運転を実現した画期的な年だったが、それを追う他社の動きを紹介しよう。

 本稿が読まれる頃にはレベル3を実現しているのではないかと思われるのが、メルセデス・ベンツだ。Sクラスの本国仕様には「ドライブ・パイロット」という技術が搭載されていて、これによるレベル3自動運転が、ドイツでスタートする予定だ。

 ドイツの法律も日本と同じで、現在は高速道路の時速60km以下でのみ、作動が許される。とはいえメルセデスはすでに高速巡航にも対応済みだといわれ、規制が緩和されれば、ネット経由でソフトウェアをアップデートさせて対応するようだ。

 ちなみに日本での対応だが、メルセデスはオランダ「ヒア」製のデジタル地図を使用しており、こいつの日本対応が待たれるところ。実現にはもう少しかかるだろう。

ヒュンダイはラグジュアリーブランド、ジェネシスでレベル3を実現。韓国の後に北米市場へ

 ドイツ勢ではBMWも2022年後半からレベル3を実現するが、導入は北米からとなりそう。最初は7シリーズでスタートし、5シリーズやSUVモデルにも仕組みを移植させていくことが明らかになっている。デジタルマップの整備状況によっては、カリフォルニアやニューヨークなどが先行するのかもしれない。

 ドイツ勢以外に目を向けてみると、あなどれないのがヒュンダイだ。同社はジェネシスのフラッグシップサルーン「G90」の新型を発表済みだが、こいつにレベル3を実装する。まずは韓国国内の高速道路からスタートし、メイン市場である北米へとサービスを拡大させるはずだ。

 このほか、トヨタがミライとレクサスLSに積むアドバンスト・ドライブも、実質的にはレベル3の実力を持つが、いまのところレベル2にとどまっている。2022年の自動運転は、先に述べた3社がリードしそうだ。

■そのほかの近未来系ニュースを20秒でチェック

●2019年にドイツ製のEVトラックで配送サービスを始めたヤマト運輸だが、今度は日野と手を組んだ。日野が開発したデュトロのEV仕様トラックで、集配業務の実証実験を始めるという。

 トラックは普通免許で乗れる小型車で、先に導入したドイツ製モデルとほぼ同サイズ。一部ではドイツ製モデルにトラブルが多いという噂も聞こえていたが、ヤマトとしてはCO2削減を急ぐため、パートナーを増やしたいということだろう。東京・日野と埼玉・狭山を拠点とするそうだ。

床面地上高400mmという超低床を実現した日野デュトロZ EV。2022年5月まで東京、埼玉を走る

●全固体電池の研究を急ぐ会社は日産だけじゃない。日本電気硝子が全固体のナトリウムイオン電池を開発した。

 ナトリウムは海水や土中に豊富に存在するため、リチウムのように資源確保を心配しなくていい点がミソ。さらに今回の電池は活物質にもコバルトやニッケルなどの希少金属を使っておらず、全固体だから発火や有害ガスの不安もないそうだ。

 現状の試作品は小さくて、スマホの充電程度しかできないが、ナトリウムイオン電池は中国CATLも取り組む注目技術。日本電気硝子にはぜひ車載用も開発してほしい。

●地元とのごたごたが報道されていたテスラの欧州進出だが、どうやら独ベルリンに工場が完成したらしい。すでに量産準備に入ったようで、遠からずヨーロッパ製テスラ車が誕生しそうだ。

 最初の生産車はSUVのモデルYになりそうだが、欧州の自動車産業にとっては、新たな火種ともなりうる。2022年もEV界は激動しそうだ。

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