伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ新世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、13巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数320万部を突破している。
当連載では、同作品内で繰り広げられる『MFG』で活躍するドライバーや、主人公・片桐夏向の周囲を取り巻く人々など、魅力あふれる登場人物たちの人となりを分析し、そのキャラクターや人物像を明らかにしていく。
第3回目となる今回は、夏向と同様、ライトウェイトマシンを駆る兄と妹、八潮翔と北原望の「ヤジキタ兄妹」を取り上げる。個人戦になりがちなMFGで繰り広げられる、兄妹ならではの連携プレーとは?
文/安藤修也
マンガ/しげの秀一
■物語を彩る兄妹キャラクター
しげの作品における兄弟キャラクターといえば、やはりその代表格は高橋兄弟(涼介&啓介)だろう。『頭文字D』ではストーリー上で重要な役割を果たしつつ、主人公の藤原拓海をしのぐほどの人気を獲得した。『MFゴースト』でもすでに弟の啓介は登場しており、兄・涼介の登場が待たれている。しかしこの『MFゴースト』では、新たな兄妹キャラクターが新登場した。
それは、八潮翔(やしお かける)と北原望(きたはら のぞみ)の兄妹だ。どちらもMFGのドライバーであり、「なぜか苗字ちがうけど、血のつながった実の兄弟」(緒方談)だという。初登場シーンは、第17話の「ヤジキタ兄妹」であり、その名は、十返舎一九による『東海道中膝栗毛』の主人公の2人、「ヤジさん、キタさん」のオマージュであろうことが予想される。
『東海道中膝栗毛』では、ヤジさん、キタさんの楽しくこっけいな掛け合いが見ものだが、『MFゴースト』ではそれがヤジキタ兄妹によって現代風に描かれている。初登場シーンでも、ファミレスで食事をしながら、仲がいいのか悪いのかよくわからないカラミをみせつつ、夏向や86を見つけると、無邪気さと闊達さが同居したような、以心伝心の振る舞いを見せている。
八潮翔は、スポーツマン風の短髪で、初登場時のファッションは、デニムonデニムにアクセサリーなどを付けて、ストリートっぽい雰囲気だ。
北原望は、染めた髪をポニーテールで縛っており、ショートパンツで大胆に生足を出したファッションが特徴的。目が大きく鼻筋が通っていて、意志の強そうな顔立ちをしているところは兄妹共通であり、これは両親の血なのかもしれない。どちらも異性からモテそうなルックスではあるが、ともに口が悪いのはご愛嬌(笑)。
■愛車はともにライトウェイトスポーツ
兄の翔は22歳。前年度のポイントランクを表すカーナンバーは16。ことレースに関してはストイックで、結果を追求する面も見られ、最初に夏向と仲良くしようとした望に、「ライバルだぞ」とたしなめている。一方で、予選の走りを見て夏向の実力を見抜いており、やりあう前から「そいつとテクニカルセッションでまともにやりあったら勝ち目はない」と予測。
バトル中は、ところどころで妹の望に無線でアドバイスを送る優しさを見せつつ、カマボコストレートでスリップストリームを使う際はスタッフに秒数を計算させるなど、兄妹の連携プレーでは司令塔的な役割もこなしている。
妹の望は20歳。兄からは「ちょっとイイ男だからって、すぐにホイホイなつくな……」と注意されているように、恋に敏感な乙女なようだ。夏向との初対面では、「イケメンだあー♡」と目を輝かせており、どうやらひと目ぼれしてしまった様子。
一方で、レース中、ピンチを迎えたシーンでは「おもしろくなってきたね」とバトルを楽しんでいる一面をみせる。さらに、「望むところだよ。夏向とガチで勝負してやる!!」と息巻くなど、カーナンバー18らしく、バトルに対してチャレンジングな姿勢も披露している。
2人の愛車は、白いロータス エキシージ。、赤いアルファロメオ 4Cとなっており、どちらもライトウェイトスポーツモデルだ。翔は、「曲がることにかけては他のどんなメーカーにもヒケはとらない」とロータスを選んだことに対して、こだわりが感じられる。きっと妹の望みも、その影響を少なからず受けているに違いない。
■連携プレーでライバルの脅威に!
そんな2人は、基本的に個人戦となるMFGにおいて、連携プレーを使えるという部分はメリット。気心の知れた兄妹だからこそ実現できる、阿吽の呼吸もある。第1ラウンド「小田原パイクスピーク」では、スタートするなり2台でシビックタイプRを間に挟んだ体勢から、前方のエキシージがフェイントをかけて、そのスキに後方の4Cがシビックのインを突くという、”サンドイッチフォーメーション”を披露。
その後も、後方から追い上げてきた86を追い抜かせないための”ブロックフォーメーション”を匂わせたり(実際にはフォーメーションを実施する前に4Cがパスされてしまった)、ロングストレートでのスリップストリーム走法など、いくつかの戦術を実施している。さらに、ほかのドライバーにはなしえない戦略がまだほかにも用意されていることが予想される。
(第3ラウンドが終了した)現時点では、トップドライバーとハイパワーマシンらに太刀打ちできず、今いちブレイクしきれていない。しかし、トヨタ 86やアルピーヌ A110といったライトウェイトマシンが上位入りをしていることから、まだまだ付けいる余地はあると思える。
はたして、シーズン終了時の神フィフティーン入り、そして望がカナタと結婚して「ヤジキタ三兄弟」になるという、兄妹の野望は叶うのか(←後者は叶わないだろう)。兄妹の過去、苗字の違う理由などとともに、気になるところである。
■掲載巻と最新刊情報
投稿 兄妹ならではの阿吽の呼吸で神フィフティーンを狙う! 『MFゴースト』を彩る人物列伝03 ヤジキタ兄妹 編 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。