海外での日本車の人気は抜群! 実際、オデッセイ、ジューク、パジェロなど、惜しまれつつも国内では生産が終了してしまったモデルが、海外ではいまだ好調なセールスを記録し続けている。
その一方で、国内販売は堅調であるにもかかわらず、一部の国では生産終了、または、モデルチェンジを機に販売終了となってしまったモデルも存在する。
今回は、そのなかでも、国内ではいまだに高い人気を誇りつつも、海外の一部地域において、さまざまな事情により受け入れられることなく姿を消してしまったクルマたち、5台を紹介していこう。
文/入江凱、写真/スズキ、ホンダ、トヨタ、マツダ、FavCars.com、NewspressUK、NetCarShow.com
【画像ギャラリー】日本では人気なのに……海外で失速した日本車をもっと見る(18枚)画像ギャラリー欧州の厳しい排ガス規制が障壁となり、乗用車仕様が消滅! スズキ ジムニー
日本でも2018年の発売当初から人気が集中し、納車まで1年はかかると言われるほど大ヒットしたジムニー。欧州では軽自動車という枠組みが存在しないため、1.5リッターのエンジンを搭載した国内で言うところのジムニーシエラがジムニーという名称で販売されている。
伝統のラダーフレーム、左右どちらかのタイヤが空転した際に空転した側のタイヤにブレーキをかけて駆動力を確保する「ブレーキLSDトラクションコントロール」と呼ばれるシステムを採用するなど、本格オフローダーとしての機能を進化させつつ、初代から貫いている無骨なスタイリングを擁するジムニーは欧州でも高い人気を誇っている。
しかし、ここにきて欧州におけるジムニーの立場は厳しいものとなってきているようだ……。
なんと、2022年現在、英国スズキの公式サイトで確認できるのは、後部座席が撤去され、荷室と乗車スペースが金属製のパーテーションで区切られたCommercial vehicle=商用車仕様のジムニーのみ。乗用車がラインナップから消滅してしまっているのだ。
これは、ますます厳しくなっていく欧州の排出ガス規制に対して、乗用車という枠ではクリアすることが難しかったことが理由と言われている。
商用車仕様の基本的な構造や装備はシエラと同様のものだが、トランスミッションは国内モデルでは4速ATと5速MTが設定されている一方、こちらは5速MTのみ。価格は公式サイトの表示価格で税別£16,796、日本円で260万円前後(2022年2月現在)と、200万円を切る国内仕様よりも高価な設定となっている。
欧州では2025年には現在施行されている自動車の排出ガス規制よりもさらに厳しいEuro7の導入が予定されており、欧州では乗用車仕様のジムニーの復活は絶望的と言えるだろう。
身内に負けた!? 北米市場から姿を消したホンダ フィット
国内ではバリバリ現役のホンダ フィット。。2001年に発売され、上質でありながらシンプルで人を選ばない内外装に、ホンダの特許技術であるセンタータンクレイアウトを採用したことで、コンパクトでありながら広い乗車空間と荷室を確保。基本的な安全装備はもちろん、4WDやe:HEVも設定されるなど進化を続け、幅広い層に支持され続けている。
フィットはホンダのグローバルモデルであり、欧州ではJazzという名前で販売されている。ただし、ガソリンとハイブリットの仕様を選ぶことができる日本モデルに対してハイブリッド車のみのラインナップに。これは、欧州におけるメーカー全体での平均燃費に規制をかけるCAFE(Corporate Average Fuel Economy)規制や、2025年に導入される予定の排出ガス規制Euro7を見据えた判断と考えられる。
欧州ではデザイン、安全性が評価され好調なJazz(フィット)だが、北米では少々事情が異なるようだ。ちなみに、北米では日本と同様、フィットの名称で販売されていた。
発売当初はそのスペース効率の良さなどが評価され、堅調な売れ行きを見せていたが、2020年、2013年から発売されてきた先代のGK系から現行となるGR系へのモデルチェンジのタイミングで北米市場からは撤退となってしまった。
ちなみに、シビックのクーペも同時期に北米市場から姿を消している。
フィットの撤退の原因は、シビックのハッチバックと、クロスオーバーSUVであるHR-V(日本名:ヴェゼル)に需要を奪われたことと言われている。実際、HR-Vは北米では日本の現行ヴェゼルの前のモデルが販売されているにもかかわらず絶好調となっている。
意外にも北米ではユーザーが獲得できなかった? トヨタ ランドクルーザー
2021年8月に14年ぶりのフルモデルチェンジが行われたランドクルーザー300系。
ガソリン車仕様は3.5リッター、ディーゼル仕様は3.3リッターのパワフルなV6エンジンを搭載し、前後のスタビライザーを独立して自動的に電子制御するという世界初の技術「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」を採用するなど、どんな悪路でも臆せず走ることができるハイエンドなクロスカントリーモデルとして発売以降、国内では好調なセールスを続けている。
そんな新型ランドクルーザー300系は意外にも「タフ」なクルマが好まれるイメージのある北米では販売されることはなかった。現地メディアは先代モデルが年間販売台数3000台以上をキープするのに苦戦するほど低調な売り上げだったことが原因だと伝えている。
同社のピックアップトラックであるタンドラ、RAV-4などの販売は相変わらず好調で、悪路での走行にはタンドラ、舗装路での走行にはRAV-4と、両車がそれぞれの需要を満たしてしまったことが北米でランドクルーザーが苦戦した一因かもしれない。
今後、北米でのランドクルーザーの系譜はプラットフォームを同じくするレクサスLX600が継いでいくことになる。
とはいえ、これは北米などの一部地域だけの話で、中東、東南アジア、欧州などでは旧モデルも含め、ランドクルーザーの人気は健在。とくに中東ではランドクルーザーを愛車とする王族も多いという。
北米ユーザーのニーズとのズレも撤退の原因!? マツダ CX-3、MAZDA6
同じく北米で2021年に販売終了が決定したのがマツダのCX-3とMAZDA6だ。どちらも日本国内では販売が続いているが北米の現地法人のホームページでは2021年モデルのMAZDA6は残されているものの、すでにCX-3の姿はない。
MAZDA6はもともと国内ではアテンザの名称で販売されていたセダンで、2019年のマイナーチェンジのタイミングでグローバルモデルとして位置づけられたことで名称を統一。国内では根強いファンを持つモデルだ。
北米での販売終了の理由のひとつは、日本同様、北米でもセダンカテゴリーの市場は低調であり、MAZDA6もそのあおりをくったことと言われている。また、新型コロナの影響も大きかったことは事実だろう。そのため現在では、MAZDA6よりも安価なMAZDA3に車種を絞っての販売となっている。
一方のCX-3は市場的にはいまだ活気があるはずのクロスオーバーSUV。同じCXシリーズであるCX-5、CX-30と比較して、コンパクトなサイズ感で、狭い道路や街乗りでも快適な運転を楽しめるモデルとして国内では人気のモデルだ。
しかし先に紹介したホンダのHR-V(日本名:ヴェゼル)が好調なことからもわかるように、道路事情の異なる北米ではこうしたコンパクトボディに対する需要は少なかったのか、ひと回り大きいCX-30のほうが人気を博している。こういった事情もあり、CX-3は車種整理の対象となってしまったと考えられる。
ただし、北米ではCX-3が販売終了となるかわりにオフロード色を強調したCX-50が追加される予定となっている。
ただし、2022年以降にフルモデルチェンジが予想されているMAZDA6とCX-3。もしかしたら、北米市場への再登板もあり得るかもしれない。
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