今や一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が発表する販売台数ランキングの上位モデルでは、ほとんどがハイブリッドを設定している。それほどハイブリッド車の人気は高く、普及している。
しかし、ハイブリッドカーを長く乗ろうと思うと問題になってくるのがバッテリーだ。スマホだろうがクルマだろうが、遅かれ早かれ電池は使っていれば性能が落ちてくる。愛着もあるし長く乗りたいからと交換しようと思うと、なかなかしびれる金額を提示されることになる……。
そんな時に代替品として注目されるのが、リビルドバッテリーだ。今回は高根英幸氏が取材したIAAE(国際オートアフターマーケットEXPO)で注目した、ハイブリッド車用の格安リビルトバッテリーの裏側に迫っていきたい。
文/高根英幸
写真/高根英幸、TOYOTA
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■知っているようで知らない! リビルドバッテリーとはいかなるものなのか!?
IAAE(国際オートアフターマーケットEXPO)は、自動車整備業者にさまざまな整備ツールや便利グッズ、新しいサービスやビジネスのチャンスを紹介する展示会。つまり整備のプロ向けの展示会で、モーターショーのような一般ユーザー向けのイベントとはちょっと違う。
しかしエンジニアやディープなクルマ好きに向けて面白い情報を探している、筆者のような報道関係者にとってはユニークな商品、面白い技術が見つかる空間でもあるのだ。
そんななかで見つけたモノの1つが、リビルドバッテリー。日本では電動車両として普及しているハイブリッド車のバッテリーを新品ではなく、再生することでリーズナブルに修理を可能とするアイテムだ。
再生バッテリーとは、使用済みのバッテリーに何らかの対策をして再び使用できるようにしたモノで、実はかなり昔から存在するものだ。
通常の電装用に使われている12Vの鉛酸バッテリーも機能が低下したモノは新品と交換されてリサイクルされるだけでなく、一部はパルス充電などを行なってサルフェーションを解消させて、再び使えるバッテリーとして安価で販売されている。
今回、IAAEで展示されていたのは、20プリウス用と20アルファード用と思われるリビルドバッテリーだ。
20プリウスからは、MGS(バッテリーマネージメントシステム)を大きく改善させて、耐久性を大幅に向上させてきた。そのため走行20万kmを超えても、通常どおり走行できる車両も珍しくない。
それでもさすがに新車から20年近くが経過した20プリウスでは、走行距離が数万kmでもバッテリーが本来の機能を果たせなくなっている車両も増えている。トヨタのハイブリッド機構THSを採用したハイブリッド車は、バッテリーの充放電能力が低下すると、走行性能が悪化して加速や燃費が悪くなるのだ。
ニッケル水素バッテリーの場合、その前世代のニッカドバッテリー同様、メモリ効果があるので、使わなくても使える容量が減少してしまう。また、たくさんのセルを組み合せたバッテリーパックは、セルの個体差や配列の関係などで劣化の度合いが違ってくる。
そうなると容量の少ない、内部抵抗の大きいセルが全体の足を引っ張り、充放電の能力低下や電圧降下などを引き起こして走行性能を悪化させてしまうのだ。
要は中古バッテリーではないか、と思う方もいるだろう。大雑把に言えばそうなのだが、厳密に言えばバッテリーには新品バッテリーと中古バッテリー、そしてリビルドバッテリー(再生バッテリー)が存在するのである。
中古とリビルドの違いは何かというと、一番の違いは再使用可能か点検しているところにある。中古バッテリーというのは、車両から外しただけの状態であり、外す寸前まで正常に使えていたモノもあれば、しばらく眠っていた車両から外して、使えるかどうかわからないモノなど状態についてはさまざま。
購入して交換しても、すぐに使えなくなってしまう可能性もあるのが中古バッテリーであり、点検して保証(1年間が一般的)も付くので安心して使えるのがリビルドバッテリーなのだ。
■リビルトバッテリーで10万円を切る価格! その秘密は
そして今回、注目は20プリウス用で9万円(バッテリーコア返却を含む価格)という、10万円を切るロープライスを実現したことだ。また、20アルファードや20エスティマ用を始めとするリチウムイオンバッテリーを初めてリビルドバッテリーとして用意したこともニュースである。
展示していたのは兵庫尼崎市に本社があるリビルド部品業者、ながおテクノという、トラック用部品を始めとして幅広くリビルド部品を販売している企業。
特にトラックは年間走行距離が多く耐用年数も多いため、タフな部品構造としていても一定の期間を過ぎると部品交換の必要が出てくる。そのため、リビルド部品が多く利用されているのだ。
クリーンディーゼルになって補機類の種類が増えていることも、新品より安価で保証も付くリビルド品の需要を高めているらしく、実に幅広い部品をラインナップしている。
トヨタのハイブリッド車用リビルドバッテリーに話を戻すとリビルドされるのは、リビルドバッテリーを購入時に引き取った使用済みのバッテリー。つまりダメになったバッテリーを引き取って、それを再生して再び使えるようにリビルドしているのだ。
具体的には個々のセルに対して約20時間をかけて充放電を繰り返すことで良否を判定しており、80%以上の容量を維持しているセルのみ再利用して、足りないセルは新品を組み合せているらしい。
しかし自動車メーカーほど大量に仕入れる訳ではないだろうから、新品セルの入手も難しそうだ。入手経路はどうやって確保したのだろうか。説明員にそう訊くと意外な答えが……。
「新品のバッテリーパックをディーラーから購入して、それを分解して新品セルとして取り出しています」
なるほど、自動車メーカーに納入された新品のバッテリーパックならば品質はお墨付き、まとめて購入できるので個別に電池メーカーから購入するより調達コストも抑えられそうだ。
また各セルを連結している銅製のプレートも当初は磨いて再使用していたそうだが、劣化により導通のバラつきが存在するらしく、現在は新品を製作して利用しているそうだ。
リチウムイオンバッテリーの場合は、単純に充放電の能力や電圧だけでは、寿命を判断できないため、再生してリビルドバッテリーとすることが難しいそうだ。また新品に近いセルを多く組み込むより、すべてのセルの容量を均一に近付けたほうが、バッテリーパックとしては性能が安定するらしい。
ガソリン価格が高騰する今、クルマの燃費を改善する手段はクルマの維持費を抑えるのが目的だから、バッテリーさえ交換できれば乗り続けられるハイブリッド車にとって、安く能力を復活できるリビルドバッテリーは非常に有効な手段。
これが一般に周知すれば、ハイブリッド車の下取り価格もより安定することにつながるだろう。
トヨタが信頼性、耐久性を第1に考えてニッケル水素を採用し続けただけあって、20プリウス以降のバッテリーはかなり耐久性が高くなっているが、それでも販売台数が多く使われ方もさまざまなだけあって、バッテリー交換が必要なハイブリッド車は増えているようだ。
トヨタのハイブリッド車でも、多くの車種がリビルドバッテリー交換業者のメニューに掲げられていることからも、その需要が窺い知れる。ながのテクノでも、アクアやカローラ ハイブリッド、レクサスCT200h、クラウン ハイブリッド用などをラインナップしており、今後も対応車種は拡大していく計画だ。
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