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 4月6〜7日、静岡県の富士スピードウェイで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の次世代車両開発テスト。通称“赤虎”“白虎”と呼ばれる2台のダラーラSF19開発車両(SF19 CN=カーボン・ニュートラル)が、石浦宏明と塚越広大の手によってドライブされ、空力やタイヤ、燃料など、幅広いテストが行われた。

 7日のテスト終了後、ふたりのドライバーと日本レースプロモーション(JRP)の上野禎久社長、およびテクニカル・ディレクターを務める永井洋治氏らが、メディアの前でテストの内容などについて説明した。

 現在、JRP(日本レースプロモーション)は、『SUPER FORMULA NEXT50』と題したプロジェクトのもと、次なる50年も持続可能なモータースポーツ業界を目指し、さまざまな取り組みを行っている。

 このなかでレース車両に関する部分では、『カーボンニュートラルの実現に向けた「素材」「タイヤ」「燃料」の実験』、『ドライバーの力が最大限引き出せるエアロダイナミクスの改善』、『エンターテイメントの魅力向上に繋がる車両開発』の3つのテーマで技術開発を進めていくとし、2022年の各レースイベントの前後で、トヨタエンジンとホンダエンジンを搭載する2台のテストカーにより開発テストを進めることになっている。

 今回、初回となった富士でのテストは、具体的には新カーボンニュートラル・フューエルのテスト、新たなタイヤスペックのテスト、そしてオーバーテイク促進を目的とし、ダウンフォース量を削減した状態での走行テストなどが行われた。

 テスト全体は石浦いわく「想像していたよりもスムーズに進んだ」といい、マシンにはトラブルも発生せず、「昨日の段階で予定になかったロングランまでできた」ほどに順調だったという。

 新たなカーボンニュートラル・フューエルに関しては、2日目のセッションから使用された。成分や銘柄などについては非公開とされたが、永井氏は次のように説明し、長期にわたるプログラムであることを強調した。

「カーボンニュートラル・フューエルにはいろいろとあり、ひとつだけではない。自分の感覚としては数カ月とか半年ででき上がるものではなく、市販車にちゃんと使える燃料を開発しようとすると、数年かかると思います」

「それを、我々の現場を実験場としてやっていくことに意味がある。ですから、いろんなものをテストしていきます」

「今日も課題は出ました。たとえば、燃焼がいまのものよりは少し悪い、とかですね。今回はエタノールが入っているので、発熱量は落ちます。ただ、これで固定ではありませんから、どう進化させていくかが大事かと思います」

 塚越は新燃料での走行について、「従来のガソリンよりもまだ乗りにくさとパワーの無さを感じる」としながらも、「それでもレーシングスピードで走れますし、最高速もかなり近いところまで行っている」とインプレッションを語っている。

 石浦もこの点は同様のようで、「事前に聞いていた話とフィーリングは全然違った」という。

「最初は(エンジン側の)適合などもあってまだ性能が出ていませんでしたが、その状態でも、もし『全員がこの燃料だよ』と言われれば、レースができる状態」に感じたという。

「課題はたくさん出たようですが、ドライバーの乗っている感覚でいえば、合わせ込んだらこれまでと同じドラビリ(ドライバビリティ)になりそうですし、多少パワーが落ちたとしても、トップフォーミュラが成り立つパワーはあると思います。ダウンフォース量やタイヤのグリップと合わせて開発していけば、最終的に面白いレースができるものになるんじゃないかなという感覚が最初からあったので、そこはいい意味で驚きでした」

テスト2日目に入って行われたカーボンニュートラル・フューエルのテスト
テスト2日目に入って行われたカーボンニュートラル・フューエルのテスト

 そのダウンフォース量とタイヤの面では、今回は以下のようなテストが行われた。

 ダウンフォースについては、リヤウイングの迎角を減らした(従来より寝かせた)状態を3段階試し、その都度2台での追従走行を行って、“接近戦”が可能かどうかの検証が行われた。

「ここ(富士)で通常使われる23度くらいのところから、17度、13度までの3段階をテストしました。計算上は10%、15%くらい(ダウンフォース量が落ちる)」と永井氏。

 実際に行われた追従走行では、「(空気を)跳ね上げる量が減れば(前車に)近づけるんじゃないかという想像はありましたが、劇的に改善したという感覚は、正直それほどなかった」(石浦)、「変化はありますが、みなさんや僕らが求めているようなテール・トゥ・ノーズのバトルに向けては、まだまだ課題がある」(塚越)という状態となったが、それでも“ダウンフォース削減だけでは、接近戦の実現は難しい”と分かったことが、今回の大きな収穫だったという。

「すごくダウンフォース量の多いSF19に合わせてタイヤも作られているところがあるので、タイヤが必要とするダウンフォース量を下回ってしまうと乗りづらさが出たり、低速コーナーでグリップ不足だったりする。ダウンフォース(の削減)だけでなく、タイヤやセットアップ、トータルで探して合わせていかないといけない、ということが分かりました」(石浦)

 将来、時期車両に対してはアンダーフロア形状の変更も視野に入れられているが、まずは次回のテスト開催地となるハイダウンフォースの鈴鹿サーキットなどでも同様のテストを行い、コースによる違いなどを検証していくという。

 また、塚越は「安定したコンディションではダンフォースを減らしても走れるのですが、トップフォーミュラとしては譲れない部分もありますし」と、速さが犠牲になる可能性や、レインコンディションでの安全性などにも考慮する必要があると述べている。

空力性能を確認するため、開発テストでは2台での追従走行も行われた
空力性能を確認するため、開発テストでは2台での追従走行も行われた

 タイヤは、サイドウォールにグリーンのマーキングが入った新スペックが準備された。今回用意されたスペック数は8種類におよび、「まるでスーパーGTのタイヤテストのように」(石浦)次々と異なるスペックが試されていったという。

 横浜ゴムの清水倫生MST開発部長によれば、今回はタイヤのサイドウォール部分とトレッド部分でそれぞれ4種類、原料の異なるスペックを投入したという。

「サイド部分については、再生可能資源、いわゆる天然ゴムをどれだけ使い込めるのかということで、その比率を変えたものを4種類。トレッドに関しては、いわゆる植物由来の──名前は言えないのですが──原料の比率を変えたものを4種類、準備しました」

 塚越も石浦も、「いまの(今年のレースで使われる)コントロールタイヤより、いいものもあった」と口にしており、ロングラン性能にも手応えがあったという。

 タイヤに関しても空力同様、今回のスペックを他のサーキットでのテストでも試し、今後の方向性を見極めていく方向とのことだ。

 次回の開発テストは4月25〜26日、第3戦明けの鈴鹿サーキットで行われる。このテストでは引き続き空力やタイヤ、燃料のテストが行われるほか、天然素材由来のエンジンカバーなどのカウル類も初めて投入される予定となっている。

新素材が使われているヨコハマのタイヤ
新素材が使われているヨコハマのタイヤ
テスト後、メディアセッションに出席したJRP上野社長、開発ドライバーの石浦・塚越、永井テクニカルディレクター
テスト後、メディアセッションに出席したJRP上野社長、開発ドライバーの石浦・塚越、永井テクニカルディレクター