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運転免許証とマイナンバーカードが一体化へ!? 道交法改正案の閣議決定でどう変わるのか!!?

 去る2022年3月初旬、政府はマイナンバーカードと運転免許証の一体化を含む道路交通法改正案を閣議決定、国会に提出した。この法改正では、マイナンバーカードに運転免許情報が盛り込まれることになる。

 さかのぼって令和2(2020)年に政府(当時は菅政権)は、マイナンバーカードと運転免許証の一体化を提案。当初は令和8(2026)年度末の開始を予定していたが、今回の提出時には2年前倒しされて令和6(2024)年度末に実施されることになった。

 今回の道路交通法改正案では、「希望者」はマイナンバーカードに免許の番号や有効期限など、運転免許に係る情報を記録できるとされ、マイナンバーカードに免許情報を記録した場合は、住所などの変更が生じた際には、自治体に届け出てマイナンバーカードの情報を変更すれば、従来必要だった警察への届け出が不要となる。

 自動車を運転する際は、運転免許証の情報が記録されたマイナンバーカードもしくは従来と同じく運転免許証を携帯することが義務付けられるが、所定の手続き後にマイナンバーカードを携帯していれば、運転免許証を自宅などに残したままでも「免許証不携帯」に問われないことになる。

 今回は、この運転免許証とマイナンバーカードが一体化について現在わかっている内容と、政府が考える狙い、一体化で考えられる課題について考察していきたい。

文/岩尾信哉
写真/AdobeStock、警察庁(トップ画像=umaruchan4678@AdobeStock)

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■マイナンバーカード普及を目指して

警察庁は運転免許証の情報をマイナンバーカードに記録する形で一体化する道路交通法改正案を今年度の通常国会に提出した。一体化は希望者が対象とされ、令和4(2024)年度末に運用開始される予定(Yusei@AdobeStock)

 今回のマイナンバーカードと運転免許証を一体化した、正式名称「免許情報記録個人番号カード」は、簡単に言えば運転免許証の情報をマイナンバーカードのICチップに登録して一体化するものだ。

 ちなみに、ICチップが埋め込まれた運転免許証は平成19(2007)年から順次導入され、平成22(2010年)年から全国で導入されており、偽造防止を主たる導入の目的としていた。

 マイナンバーカードについては、コロナ禍のなかでの給付金などの支給などで普及率の低さがメディアで取り上げられ、現状では国民全体で約40%と半数に届かぬ状況が続いている。

 政府はこの状況を打開するために、マイナンバーカードに健康保険証の機能を与えて「マイナ保険証」を令和3(2021)年に実現した。

 しかし、カードリーダーの設置など医療機関の対応など、利用のためのインフラ整備に課題が残されたままになっており、利用者のメリットが少ないことが指摘されるなど、敏速な普及には至っていないようだ。

 それでも政府はデジタル化推進の元に、いずれは段階を経てマイナンバーカードと健康保険証、運転免許証の3つを一体化することを目標として掲げている。

■運転免許証の手続きは簡単になる?

所定の手続き後には、転居した際に自治体に届ければ、警察での住所変更手続きが不要になり、マイナンバーカードを携帯していれば、運転免許証を自宅などに残したまま外出しても、車両の運転時に「免許証不携帯」には問われないことになる(miya227@AdobeStock)

 それでは運転免許に関する手続きは簡単になるのだろうか。この点について、警察庁の運転免許証のデジタル化に関する改正道路交通法の説明資料を見てみよう(以下、抜粋および要約)。

 改正道路交通法の「特定免許情報の記録等」を定める第九十五条の二における「特定免許情報」とは、次に掲げる事項とされる。

一 免許情報記録(個人番号カードに記録された特定免許情報に係る記録)の番号
二 免許の年月日及び免許情報記録の有効期間の末日
三 免許の種類

などとなる。

 そのほかの個人番号カードと免許情報記録個人番号カードに関連する手続きなどについては、たとえば「個人番号カードの失効は、免許情報記録の効力に影響を及ぼさない」とされ、「免許を受けているもののうち当該免許について免許情報記録個人番号カードのみを有するものは、いつでも、その者の住所地を管轄する公安委員会に当該免許に係る免許証の交付を申請することができる」と捕捉されている。

 気になる警察による交通取り締り業務については、「免許証とみなされた免許情報記録個人番号カードの提示を受けたときは、当該提示をした者に対し、警察官が当該免許情報記録個人番号カードに記録された特定免許情報を確認するために必要な措置を受けることを求めることができる。

 この場合において、当該求めを受けた者は、これに応じなければならない」ということになる。

 今回の道路交通法の改正では、利用者はマイナンバーカードと運転免許証を一体化したあとにマイナンバーカードのみを所持してもよく、両方を持つこともできるが、車両の運転時にはどちらかを携帯しなければならないことになる。

 免許証と異なり、マイナンバーカードの表面に有効期限などの免許情報は記載されず、交通取り締まり時に警察官などは端末で読み取る仕組みを採用するとのことだ。

■「利便性向上」とはいうものの……

 このように今回の道路交通法の改正は、運転免許証のデジタル化の一環として進められたわけだが、ふたつの官製ICカードを一体化することのメリットが筆者には感じられない。

 警察庁は利便性の向上を謳い、将来的には政府のデジタル化推進の流れを受けて、スマートフォンに機能を移して「モバイル運転免許証」の実現を目指すとのこと。

 現状での政府見解として「約8000万枚の運転免許証がマイナンバーとつながることは画期的」であり、「交通取り締り業務のデジタル化は、交通反則切符の作成時間の短縮につながるなど、国民の負担軽減にもつながるものであり、引き続きこれを広げていくよう検討を進めている」などといったコメントも見られる。

 しかし、マイナンバーカードのさらなる普及を求めて、民間のクレジットカードなどの利用を進めるにも、個人情報の管理などセキュリティの問題をクリアする必要があるから、そう簡単に利便性を高められるわけではない。

 今回の運転免許証を利用してマイナンバーカード普及を進める政府の手法は、現状では国民の「積極的なニーズ」が見当たらないように思える。

 官製カードのデジタル化を促進する手段としては有効かもしれないが、まずは政府には慎重に事を進めていくことを望みたい。

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