以前にもレポートしたXバスは、いよいよ2022年内には市場投入される予定だ。キャンピングモジュールとトランスポートモジュールはXバスにフィットする。価格は17,380ユーロ(約229万円)から、全長は4メートル未満で、200kmの電気走行(航続距離)を想定している。
このアイデアが近々実現することを祈ってやまない。「Xバス」は、シリコンバレー発の派手なショーカーではなく、アイデアで勝負している。イッツェーホー? 聞いたことがない? シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州にあるこの小さな町は、最近、モジュール式の軽量多目的バスを作ろうとするスタートアップ企業の本社設立の場所となった。
旧東欧圏の輸送機に似ているという悪意ある意見もある。私たちも、それはあながち間違っていないと思うこともある。しかし、その一方で、こんなに親しげに微笑んでくれるクルマも、久しぶりだ。グリムLEDのスリットはなく、ギョロ目で子供らしい表情。つまり、シンパシーキャリアだ。ご機嫌なバスは、物流業者のパックミュールとして、商売人の車として、家族のためのマルチシーターとして活躍できることを目指している。そして、キャンピングカーとしても。用途に応じて、「Xバス」がピギーバックで運ぶモジュールを2~3人で交換できる、という賢いアイデアだ。
Xバスは軽自動車クラスに属する
「”車”と呼ぶな」と、エレクトリック ブランズ社の好漢な43歳のボス、マーティン ヘンネは言う。そして、自分の赤ちゃんが「VWブリ(Bulli)」のライバルに、なりたがらない、ならない、理由も率直に説明している。「Xバス」は軽自動車クラスL7e-B2に属する。つまり、「ルノー トゥイージー」や、「マイクロリーノ(スイスの新型イセッタ)」と同列に扱われるのだ。
価格表は18,000ユーロ(約237万円)以下からとなっている
「Xバス」の基本モジュールは、約500kmの重量しかないとされている。車輪に搭載された電動モーターで駆動し、航続距離は約200km、大型バッテリーであれば600kmを想定している。最高速度は100km/hだ。家庭用コンセントからでも充電できるほか、追加料金で11kWのタイプ2急速充電システムも利用できる。そして、屋根には太陽電池が標準装備されている。エアコンは別料金だし、エアバッグもないだろう。少なくとも、この車種クラスでは義務化されていないとはいえ、スタートアップ企業は、ほかの車のように衝突テストを行うと約束している。
車両データ: エレクトリック ブランズXバス
• エンジン: 4輪ハブモーター
• 最高出力: 56kW(76PS)
• 最大トルク: 1,200Nm
• 駆動方式: 全輪駆動
• 全長/全幅/全高: 3945/1633/1963mm
• バッテリー: 交換可能なリチウム電池パック、最大30kWh
• 乾燥重量: 約500kg(本体・モジュール含まず)
• 最高速度: 100km/h
• 電力消費量: 5~10kWh/100km
• 価格: 17,380ユーロ(約229万円)より
ベースが17,380ユーロ(約229万円)、キャンピングカーが3万ユーロ(約396万円)弱と、シンプルな技術だからこそ、扱いやすい価格設定になっている。ノーマルバージョンとオフロードバージョンが用意される予定だ。いずれも背丈は4m弱、幅は1.65m程度だ。そして、いずれも全輪駆動を標準とし、4輪ハブモーターの連続出力は20馬力、短時間では76馬力となっている。
可変性がXバスの大きな強みだ
ボディにもよるが、「Xバス」は800から1100kgの荷物を積むことができる、とマーティン ヘンネは約束する。8つのボディが用意される。そして、「Xバス」で休日に出かけたい人は、キャンピングボディに2つの寝台と、シンク、冷蔵庫、ホットプレートを完備したミニキッチンを持つことができる。すでに15,000台以上の注文があり、そのうち約5,000台は個人客で、すでに支払いも済んでいるという。そして、600社のカーディーラーが、事態が動き出すのを待っているとされ、サービスも引き継ぐことになっている。
これは野心的な計画だと思う。「Xバス」には、すでに3年の開発期間が費やされている。現段階で走行しているとはいえ、それはインゴルシュタット近郊で、手作業で作られたわずか2台のプロトタイプで、他の車両の部品(この場合は古いVWバスの部品が使われている)使ってテストが繰り返されている。一つはダブルキャブのピックアップ、もう一つは6,000リットルのボックスを持つバンだ。
リサイクルにより環境配慮を実現
「現在、サプライチェーンを構築しているところです」とヘンネは言う。これまで、生産はイッツェーホーで行うと言われていた。今は、「ドイツのどこか」とだけ言う。ネジ止めは、車と同じようにシンプルにすることだ。「自動車工場」ではなく、「組立工場」を作っているのです」とヘンネは言う。これは、経験豊富な製造委託先が行うことになる。目標は「Xバスの購入、リース、サブスクリプションができること」と、ヘンネ氏は言う。10,000km走行後でも、気候変動に影響を与えない。そして、最後の最後にはリサイクルされるが、その割合は98%がリサイクル可能となっている。
2021年末、ヘンネとその仲間たちはヨーロッパを巡る広告の旅に出た。デュッセルドルフ、フランクフルト、ミラノ、パリ、ニース。そうそう、イッツーホーも。興味のある客層? 「Xバスでは、まだ自分のクルマを買おうとは思っていない多くの若者にもアプローチしています。なぜ? 理由は、”サスティナブル、クール、エモーショナル”だから。そして、4つのUSBソケットとApple CarPlayとAndroid Autoを搭載した10.2インチディスプレイが常に搭載されているわけです」とヘンネは語る。
Xバスはまだ始まりに過ぎないはずだ
「Xバス」の親会社である、エレクトリック ブランズ(Electric Brands)」にとって、このクルマはまだ第一段であり、始まりに過ぎない。今後は、他のモビリティソリューションも追加していく予定だ。AからBへの移動手段が変わってきている、とヘンネは言う。だから、カーディーラーも「なんとしてもXバス」をプログラムに加えたいのだ。「彼らも、変わらなければならない。最後は、Xバスを抱きしめて、その幸せを祈りたくなるのです」とヘンネは語る。
【ABJのコメント】
まだコンピューターグラフィックスの段階から、AUTO BILDでは、ずっとその存在を追い続けている「Xバス」。すでに15,000人もの人が注文しているとのことだが、今回のレポートを見てちょっと残念に思ったことが2点ある。ひとつはこの内装で、魅力的な外装に比べ、ちょっとあまりに無機質というか雑然としている感じがすることで、ぜひ生産型は、この部分をもう少し改善してほしいと思う。といっても無理に可愛くしたり、カラフルにしたりするのではなく、機能的ながらも、スマートなものにぜひ改良してほしいのである。素材の使い方でも大きく印象は変わるし、シートも含めてあと一歩頑張ってほしい。
もう1点は、ちょっと登場の日程や可能性に関して歯切れが悪い表現をしていることで、これが昨今の半導体不足や、ロシアの仕掛けた戦争のせいだとしたらあまりに悲しく寂しすぎる。ちょっとだけ登場の時間が伸びてもいいので、平和な世界に、このクルマが晴れ晴れと出てくる日を待っていたい。(KO)
※Xバスの情報はこちらもどうぞ。
Text: Holger Karkheck
加筆: 大林晃平
Photo: Electric Brands