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防芸(ぼうげい)引き分け 八 三十をすぎ頭を丸めている晴賢(はるかた)だが、かつて義隆を虜(とりこ)にした魅力の残り香が、ととのった顔から時折――色濃く匂う。今がそれだ。武骨な人柄の隆兼(たかかね)すら、つい見惚(と)れてしまい、生唾を飲んだ。晴賢が呟(つぶや)く。「御屋形様(おやかたさま)は深…