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 中国・上海市は4日、5日までを予定していた浦西地域(黄浦江西岸)での都市封鎖延長を発表した(期限は現地5日午前時点で未定)。1日までの予定だった浦東地域でも封鎖が続く。上海は中国の「7大石化産業基地」の一つであり、奉賢区と金山区にまたがる上海化学工業区(SCIP)では、中国石化(シノペック)や日系、欧米の化学大手がおおむね平常通りの生産活動を継続。化学産業は不可欠な産業の一つと位置づけられ、メーカーには封鎖下での原料搬入や製品輸送が認められているが、長期化が設備稼働率に及ぼす影響を懸念する声もある。

 <工場完成後ずれも>

 SCIPでは、中国石化グループがエチレン年産100万トンのナフサ分解炉を中核とする石化コンビナートを運営。外資では三井化学、三菱ガス化学、BASF、コベストロ、エボニック・インダストリーズ(以上3社ドイツ)、インビスタ、ハンツマン(いずれも米国)、セプサ(スペイン)などが工場を置いている。

 このうちBASFは、中国複数都市での感染拡大を受け、数カ月前から政府要請に沿って各事業拠点で予防措置を講じてきた。化学工業日報の取材に対しては「大部分の生産拠点が運営を続けており、グレーターチャイナにおける影響は(先週末時点で)軽微だが、状況の推移を注視し製品供給や事業継続を確実にするため必要な措置を取る」と答えた。

 同社はSCIPでエンジニアリングプラスチック(ポリアミドとPBT)やウレタン原料イソシアネート(MDI、TDI)、熱可塑性ポリウレタン、自動車用塗料などの工場を運営。浦東封鎖が始まった先月28日から今月5日まで「クローズドループ・オペレーション(従業員が工場敷地内にとどまって交代勤務する)体制を敷き、生産を続けている」。

 交通・人流規制で製品供給の遅れや途絶が生じているものの「原料や製品の輸送のため市当局と緊密に連絡を取り、特別な許可証を得ている」。状況は相対的に管理・調整が可能で、物流企業と連係し運送能力の確保に動いているという。市当局が打ち出した税減免や補助金などの支援策についても精査し、可能であれば申請を検討する。

 エボニックは4日時点で、SCIP内にあるすべてのプラントが平常通り稼働中。「感染抑制策はサプライチェーン管理に大きな困難を生じさせたが、調達や物流、プラント運営など各部門が連携を密にし対応している」とした。同社は現地で、溶媒や樹脂原料などに使われるイソホロンおよびイソホロンジアミン、樹脂コンパウンド、特殊界面活性剤、日用品・化粧品原料、不飽和ポリエステルの生産を手がける。

 コベストロは「(先週末時点で)主要工場は市場の需要に応え高い稼働率を維持している」とする一方、「交通規制の影響で物流に困難が生じており、先行きも不透明なため、今後一部工場で運転調整を余儀なくされる可能性がある」と懸念を示した。

 米インビスタはSCIPで、年内完成を目指しナイロン66原料であるアジポニトリル(ADN)の工場(年産40万トン)の建設を進めている。今年6月までにナイロン66の新ラインにも着工する予定だが、いずれも都市封鎖による影響は避けられないとみられる。ナイロン66の新系列は24年の稼働を計画。現地生産能力を年40万トンに倍増させる。

 <市民生活に影響大>

 中央政府は2日、公衆衛生政策担当の孫春蘭副首相を上海に派遣した。医療関係者に加え、食品配送を担う人々も他の省や市から多数動員するなど、早期のコロナ制圧と外出できない市民の生活負担緩和を図っているが、現時点で終息のタイミングは見通しづらい状況。

 浦東地域では措置延長に当たって、陽性者の有無や、陽性者が発生した地区への近さなどを基準に、小区(※)ごとに封鎖実施やその期間を決定する仕組みを導入した。例えば、陽性判定者がいる小区は14日間の封鎖対象となる。一方で陽性者がおらず、かつ陽性者がいる他の小区から離れた小区は外出が一部許可される。

 しかし、浦東では現状全小区で陽性者が出ているため、結果的に全域で4月1日から2週間の予定で封鎖が継続されることになった。レストランやコンビニエンスストアも営業しておらず、市民は主にデリバリーのみの営業を許可されたスーパーマーケットから食料品を調達している。ただ配送ドライバーを十分に確保できず、また上海と他の都市との間で物流が停滞しているため、食料の不足と配送の大幅な遅延が発生している。(中村幸岳)

【※】マンションなどの集合住宅がひと固まりになって住民が多い1区画、日本でいう団地が1小区となる。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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