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 ひとつのバス事業者を掘り下げて紹介する、バスマガジンの名物コーナー、バス会社潜入レポート。今回は2018年に遡って、1月発売号で掲載した東海バス編を振り返って紹介する。

 東海自動車は1917(大正6)年に設立され、翌年、現社名に変更。同一商号で営業を続けるバス事業者として、わが国最古の歴史を持ち、1971(昭和46)年に小田急電鉄の傘下に入った。

 1999(平成11)年に地域ごとの運行会社を設立し、バスの運行業務を移管。東海自動車がそれらを統括し、グループ一体となって伊豆半島の足を担っている。

(記事の内容は、2018年1月現在のものです)
構成・執筆・写真/加藤佳一(B.J.エディターズ)
※2018年1月発売《バスマガジンvol.87》『おじゃまします! バス会社潜入レポート』より
(東海バス特集 その1)


■5つの運行事業者が協調して沿線住民と観光客の足を担う

●古宇(こう)

富士山をバックに沼津駅に向かう「N24」系統。2017(平成29)年からアルファベットと数字2桁の系統番号を全路線に導入

 東海バスグループは現在、9つの企業で構成されている。伊東市に本社を置く東海自動車は、グループ全体の事務管理や資金管理、車両の調達などを担当。

 乗合バス・貸切バスの運行は、伊豆東海バス(熱海・伊東事業所)、南伊豆東海バス(下田事業所)、西伊豆東海バス(松崎事業所)、新東海バス(修善寺事業所)、東海バスオレンジシャトル(沼津事業所)が分担する。

 さらに、車両の整備などを行う東海車輛サービス、郵便運送事業などを行う東海輸送、警備事業などを行う東海綜合警備保障もグループの一員。9社合計の従業員数は635人である。

 JR東海道本線沿いの熱海・三島・沼津の3市では、市街地路線を運行。これらの一部は小田急グループ全体のバス事業再編の中で、2002(平成14)年に箱根登山鉄道から移管されたものである。このとき、芦ノ湖畔の元箱根港まで路線を延ばしている。

 熱海市内では観光スポットを巡回する「湯~遊~バス」を運行。三島市ではコミュニティバス「せせらぎ号」の運行を伊豆箱根バスとともに受託している。

 東伊豆ではJR伊東線の伊東駅を起点として、伊豆高原エリアに面的な路線を展開。観光スポットが点在するため観光客の利用率が高く、1990年代にはレトロ調バスも活躍していた。

 南伊豆では伊豆急行の河津駅・下田駅、西伊豆では松崎・堂ヶ島、中伊豆では伊豆箱根鉄道の修善寺駅が拠点。これらを相互に結ぶ幹線は利便性が高く、高頻度で運行されている。また三島駅~修善寺駅~松崎間には特急・急行・快速バスも設定されている。

 それぞれのエリア内で地域のニーズに合わせた生活路線を運行する一方、温泉などの観光資源が多いことから、観光客輸送も重要な使命である。シーズンのみに運行される観光路線も存在する。なお、2006(平成18)年には伊豆下田バスが廃業したことから、下田エリアで同社の路線を引き継いでいる。

 観光客のニーズに応え、エリアごとのフリーパスを販売してきた東海バスグループ。2016(平成28)年にはさらなる利用促進をめざし、「全線フリーきっぷ」を発売した。また2017(平成29)年には全路線に系統番号を導入するなど、「わかりやすいバス・乗りやすいバス」への努力を続けている。

■高速バスは三島・修善寺発着、南伊豆エリア中心の定観バス

●河津七滝(ななだる)ループ橋

1981(昭和56)に完成した河津七滝ループ橋は下田街道随一の見どころ。修善寺駅行きの〈C50〉系統が絶景を眼下に橋を上っていく

 高速バスは2路線が運行されている。「三島エクスプレス」は東海バスオレンジシャトルと小田急箱根高速バスの共同運行。大平車庫(沼津事業所)・三島駅とバスタ新宿を結び、平日7往復、土日祝日8往復のダイヤである。

 「伊豆長岡・修善寺ライナー」は新東海バスの単独運行。年川車庫(修善寺事業所)・修善寺駅とバスタ新宿を結び、平日1往復、土日祝日は三島地区経由の1往復が加わるダイヤである。

 定期観光バスは下田駅・伊東駅・熱海駅を起点に計7コースを設定。このうち5コースは季節限定の運行で、いちご狩り、すいせん、桜、あじさいなど、伊豆の旬を楽しむコースである。

 一般貸切バスは1999(平成11)年、新東海バスに一本化された。現在は新東海バスと東海バスオレンジシャトルを中心として、運行会社5社に分散配置されている。各社はこのほか、地域密着の契約貸切輸送を受託している。

投稿 熱海・三島・沼津の市街地から伊豆半島全域の生活と観光路線を担う東海バス自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。