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<p>ウグイスの「ホーホケキョ」は春だけ?</p><p><ホーホケキョは春限定?> ウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声は春の風物詩。 実はこの鳴き声は、ウグイスの繁殖期にオスが発する鳴き声だそう。 '声はすれども姿は見えず'のウグイス生態について専門家に伺いました。</p><p>暖かな春の訪れとともに「ホーホケキョ」の美しくも情緒的な鳴き声を響かせるウグイスは、日本人にとって古くから親しみ深い存在です。なじみがあるようで意外と知られていないウグイスの生態について、ご紹介します。</p><p>「ウグイスはウグイス科でシジュウカラと同じくスズメ目の鳥です。日本全土と朝鮮半島、中国大陸の北東部にも分布しています。山地の笹薮で繁殖し、冬は暖かい低地へ移動します。地域によっては季節ごとの移動をしない『地付き』のウグイスも存在します。ただし、気候が冷涼な北海道では春から夏にしか暮らしておらず、寒い冬に見ることはありません。 ウグイスは全身が灰褐色です。くすんだ黄緑色を『ウグイス色』といいますが、古い時代にメジロと混同されて伝わったようです。ウグイスの大きさはスズメと同じくらいの14~15cmほどですが、体形がスズメより細いのでひと回り小さく見えます。 オスのほうがメスよりもだいぶ大きくなります。肉眼で“これがウグイス”と見分けるのは難しいのですが、目の上に白いラインが入っているのが特徴です。 ウグイスの食べ物は、おもに小型の虫やクモなどですが、秋から冬にかけては植物の種子などを食べることもあります」(山本さん) ウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声は春の風物詩となっています。しかし、日本全土に分布しているはずなのに秋から冬には聞かれません。ウグイスが「ホーホケキョ」と鳴くのは春だけなのでしょうか。 「ウグイスの『ホーホケキョ』は『さえずり』といい、繁殖期を迎えたオスが自分の縄張りにメスを呼ぶために発する鳴き声です。同時にほかのオスに“ここは自分の縄張りだ”と主張する意味合いもあるようです。 一般的にウグイスの繁殖期は2・3月から7月半ばぐらいまでなので、それ以外の時期に『ホーホケキョ』と鳴くことはありません。 ウグイスが「ホーホケキョ」とさえずるときには、大きくのどを膨らませ、遠くに声を響かせます。 実はウグイスは“一夫多妻”で、オスの縄張りの中に複数のメスが繁殖しています。1羽のオスに対して、周辺に7羽ものメスが確認されたこともあります。 2022年の東京での観察では、2月23日に最初のさえずりが確認されました。もっと早くに『ホーホケキョ』が聞こえることもあるので、“今年の初音(はつね=ウグイスがその年に初めて鳴く声)の時期は平年並み”といえそうです」(山本さん) 「チャッ、チャッ」や「ケキョケキョケキョ」と鳴くことも 繁殖期のオス以外、ウグイスは鳴かないのですか。 「夏以降はオスもメスも『チャッ、チャッ』と小さく目立たない『地鳴き(じなき)』と呼ばれる鳴き声を発します。ウグイスの場合、特に『笹鳴き』と呼ばれています。これはほかの個体が近づいてきそうなときに、“自分がここにいます。距離を保ってください”と知らせるためとみられています。 繁殖期のウグイスは『ケケケケ、ケキョケキョ、ケキョケキョケキョ……』と長い鳴き声を発することもあります。『谷渡り』と呼ばれる反響する鳴き方で、ウグイスの捕食者である猛禽類(もうきんるい)や人などが近づいた時に危険が迫ったことを知らせる警戒音ともいわれますが、その意味はよくわかっていません」(山本さん) ウグイスを観察する際に注意・注目すべき点はありますか。 「ウグイスを見つけるのは難しいのですが、よく見られるのは、やぶや低木が密集したところです。声のしているところで探すか、その場でじっとしていると、小枝の先や茂みの頂点に出てきて、運良く見られることもあります。 『ホーホケキョ』のさえずりは遠くまで響くので、思いのほか離れた場所に姿を現すことも少なくありません。鳴き声が聞こえたらしばらく待って、視野を広くして注意してみてください」(山本さん) “声はすれども姿は見えず”のウグイスですが、さえずりを耳で楽しむほかに、春の訪れを告げる鳥の生態もじっくり観察してみてはいかがでしょうか。</p>