運転免許証を取得してから何年も経つと、「これくらいいいだろう……」という自分の都合のいいように解釈した運転をするドライバーが出てくる。
しかし、その勝手な解釈をするドライバーの多くは、法令違反であることや、自らの運転が周囲の歩行者や車を危険にさらす可能性を秘めていることを、よく理解していないのが現実だ。
今回はそんな困ったドライバーの運転のなかから、ウインカーを出さない、もしくは直前(曲がる瞬間)になってから出すことについて取り上げたいと思う。その危険性を知り、自らの運転を一度省みてもらいたい。
文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ写真=xiaosan@AdobeStock)
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■日々の運転で感じる、ドライバーの法令遵守意識低下
筆者はクルマは当然のこと、ロードバイクでの移動も積極的に行なっている。都内の移動は往復どちらかが渋滞に遭うことが多く、移動時間もクルマとロードバイクではほぼ変わらないからだ。そうなると燃料の節約、すなわち温室効果ガスの削減にも貢献できるし、中性脂肪が燃料になると好都合ずくめなのである。
しかし往復60km前後の行程で平均すると毎回2回は交通事故に遭いそうになっている。原因は交差点直前で追い越しての左折巻き込みやタクシーの追い越しての急停車、対向車の強引な右折……さまざまあるが、用心しているから回避できるが、ヒヤリとする瞬間は何度も味わっている。
自転車の運転マナーや法令違反を問題視するドライバーは多いが、それ以上に問題なのが運転免許を取得しているのに危険な運転をするドライバーのほうではないだろうか。
多くのドライバーは忘れているようだが、日本は原則としてクルマの運転は禁止されているのだ。それを運転免許という制度により許可されている。
これは調理免許のフグ免許や医師免許と同じ考えであり、リスクのある行為を正しく行なえる技術があることで免じて許されているのだ。
にも関わらず運転免許だけは、取得すると運転できる権利だけは行使するものの、免許取得時に覚えたはずの法律やマナーなどは自分の都合のいいように解釈されて曖昧になっていく。
自動車教習所も公安委員会よりノルマ(と言うと語弊があるが)を課せられてドライバーをじゃんじゃん育て上げてしまったことも影響しているのは明らかだろう。
基幹産業を発展させるためとはいえ、免許人口を増やすために運転免許試験のハードルを下げてきた傾向は明らかで、それがドライバーの法令遵守意識の低下につながっていることは間違いないのだから。
■ウインカーを出さないで曲がることの危険性
クルマが右左折や車線変更などの際に点滅させるウインカーは単なる合図ではなく、周囲のドライバーやオートバイ、自転車さらには歩行者に対する意思表示するための装置だ。周囲に自車の進路をあらかじめ伝えることで、お互いが安全に通行することができる。
にも関わらず、最近日本国内でウインカーの使用が、かなりいい加減になっている印象がある。これは筆者の主観ではなく周囲のドライバーも同意見だし、ネットでもウインカーを出すのが遅いドライバーが増えているという意見を見かける。
曲がる直前にウインカーを出す(曲がると同時、という印象すらある)ドライバーもいれば、まったくウインカーを点けることなく右左折や車線変更するドライバーも見かける。
周囲と十分な間隔が空いているから危険ではないという判断をしているケースもあるのだろうが、そうした運転をしていると、やがてウインカー操作を忘れて曲がるのが習慣になってしまう危険性もある。
前述の自転車乗車時に遭う左折巻き込みについても、すぐ後方に筆者の自転車がいるにも関わらず、交差点で発進してからウインカーを出し、筆者の目の前をスレスレで曲がっていく(つまり左後方を確認していない)ドライバーに遭遇したのも一度や二度ではない。
JAFの調査によれば岡山県や香川県、徳島県では、ウインカーを出さないドライバーが多い傾向にあるそうだ。
その理由としてウインカーを出すのは初心者であり、周囲に自分の行動が知られることは恥ずかしいので出さない、という意識が定着しているという情報もある。もしそれが本当なら、自分勝手な本末転倒とも言える行動であり、運転免許を返上したほうがいい。
かなり昔に免許を取得し、合図不履行違反で検挙された経験がないドライバーは、これが非常に危険な行為であるという認識が低いのだろう。
しかしもし交通事故に遭って、合図不履行が原因のひとつだとわかれば責任が重くなるのは明白だ。信号の色と同様、以前なら揉めた話かもしれないが、最近はドライブレコーダーの映像が証拠になるから、言い逃れはできない。
一時停止についても止まらないのは論外として、停止線で一度止まらず交差点内で停止して安全確認(気持ちは分かるが取り締まりに遭うリスクも高い)するのでは、出合い頭の衝突事故を起こす可能性が高い。
また一時停止の交差点では「停止さえすればいい」と思っているドライバーが少なくないことも問題だ。一時停止の目的は安全確認なのだから、交差する道路に車両が居て、それが安全に通行できると確認できるまでは発進するべきではないのだ。それが一時停止という規制の目的であることを思い出してほしい。
単に止まった止まらないで取り締まりを受けるかもしれない、ということだけに意識を置いているドライバーが多過ぎるのが現状で、ここにも運転免許を量産してきた公安委員会や自動車教習所の対応の甘さが影響している。
■地方によって交通ルールが異なるのは危険な考え
茨城ダッシュや伊予の早曲がりなど、ご当地ルールと言われているものも色々あるが、早い話これらはすべて道交法違反を別名にして容認してしまっているものだ。
先頭が右折車の場合、それが通過できないと後続車が進めないので、直進の対向車が先を譲ってくれる、という譲り合いの精神がそもそもの発端であるようだ。そこから発展して、いつのまにか先頭が右折車なら対向車が先を譲る→右折車優先という考えが定着してしまっているらしい。
譲り合いは素晴らしい精神だが、あくまでも道交法が原則で譲り合いのレベルに留めておくべきだ。毎日の運転の繰り返しでそれが常識的な感覚になってしまうとしても、厳密には法で定めた優先順位があるのだから、それを守らずに事故を起こせば責任は重くなる。
それをお決まりのルールにしてしまうことの緊張感のなさが、そもそも問題なのである。いつもの日常から変化がないと思い込んでいることの危険性に気付くべきなのだ。自分の地元を走るドライバーはローカルルールを知っておくべきというのは、自分本位の考えでしかない。
そしてこうした軽微な交通違反は、交通事故の原因になるにも関わらず、軽微な違反として警察が積極的に取り締まらないから、ドライバーも許容範囲として甘く考えてしまうようになる。
これは自転車の無法ぶりと、結局は同じことなのだ。警察が危険と判断したものは積極的に取り締まってくれればいいのだが、現状は交通事故の原因となれば行政処分を受けることになるものの、通常の交通ではほとんどがスルーされている。
一時停止や速度違反は1カ所で集中的に取り締まりを行なうが、そうした方法がむしろ取り締まり箇所以外での法令遵守意識を低下させることにつながっている可能性もある。
それでも自転車に対する交通違反の取り締まりは厳格化しているので、いずれは(気の長い話だが)自転車の運転マナーも高まっていくことだろう。それと同様にドライバーのマナーや法令遵守意識が高まることを期待したい。
ただでさえ高齢ドライバーの増加で運転操作やクルマの動きが怪しい現在、周囲の交通にいっそう注意して運転しなければ交通事故に巻き込まれる可能性が高まっている。
さらには無法自転車や、いい加減な運転のドライバーが増えれば、新たな事由による交通事故が増えることになってしまう。それを防ぐのはドライバーの運転マナーや法令遵守の意識だけだ。
あまりに理不尽と納得いかない部分もあるだろうが、それが運転免許を所持してクルマを運転するドライバーの責任なのである。自転車にも免許制度を、という意見もあるが、子供にも同じ知識と意識を求めるのは難しい。
ちなみに筆者は2021年、3度目のゴールド免許奪還に成功した。これを実現するのはかなり大変だったが、「これだけのクルマが走っていれば事故や違反はある程度仕方ない」というような言い訳的な考えを持たず、事故や違反を未然に防ぐ運転を続けて、移動を楽しんでほしい。
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投稿 教習所からやり直して…… お願いだから出して!! ウインカー遅い県、遅い人 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。