日本政府は5日から、ロシアに対する追加の制裁措置として高額の日本車や時計、酒類など計19品目の輸出を禁止した。600万円を超える乗用車や60万円を超えるバイク、20万円を超えるグランドピアノのほか、4万円を超える国産ウイスキーも対象となる。
岸田首相は4日、「全体の状況を見ながら国際社会としっかり連携し、わが国としてやるべきことをしっかり行っていきたい」と述べ、さらなる追加制裁の可能性も排除しなかった。
ロシアでも人気の国産ウイスキー
今回、輸出禁止となった19品目の中でとりわけ注目なのは、ウイスキーだ。日本産ウイスキーの人気は世界的に高い。国産ウイスキーの醸造が始まってからわずか100年と歴史が浅いにも関わらず、日本産の「ジャパニーズウイスキー」は、スコットランド産の「スコッチウイスキー」、アイルランド産の「アイリッシュウイスキー」、アメリカ産の「アメリカンウイスキー」、カナダ産の「カナディアンウイスキー」と並び、世界の5大ウイスキーに数えられる。当然、ウォッカの原産国でアルコール度数の高い酒を好むとされる、ロシア人からの人気も高い。
ロシアビジネス専門のアドバイザリーサービスを手掛けるスガハラアソシエーツの菅原信夫社長は、ロシアでの日本産ウイスキーの人気について、日系企業の駐在員向けウェブサイト「MUFG BizBuddy」(2019年10月21日付)に次のような文章を寄稿している。
ロシアではジャパニーズウイスキーに注目が集まっている。経済制裁下で、国民の懐具合は厳しさを増しているが、中級価格で希少価値があるため売り上げが伸びている。
菅原氏によると、たとえば、サントリーウイスキーのラインナップの中では「山崎12年」「白州12年」「響17年」といった高級銘柄が特に人気だったという。
ハイネケンとカールスバーグが撤退
折しも先日、欧州ビール大手のハイネケンとカールスバーグがそろって、ロシア市場からの撤退を発表している。こちらは、ロシアの若者に人気が高い。ロシアと言えばウォッカを思い浮かべる人も多いだろうが、若者の多くはウォッカよりもビールを好んでいるという。
キリンホールディングスの最新の調査(2020年)によると、ロシアの一人あたりビール消費量は、世界29位で前回調査より3ランクアップしている。一人あたりの年間ビール消費量は59.3リットルで、日本の実に1.7倍だ。
正規の酒を高くて買えない人が、メタノールなどを含んだ違法な酒を飲み、そのうち70人以上が死亡した(読売新聞2021年11月22日)ほど、酒好きな人が多いロシア人。
ロシアには、「飲んだら死ぬ、飲まなくても死ぬ、どうせ死ぬなら飲んで死ぬ方が良い」「(酒は)飲めるうちに飲め」といった、酒にまつわる諺も数多い。好きな銘柄の酒が飲めなくなったことをきっかけに、酒好きロシア人が自国の欺瞞に気づき、反プーチンに目覚めた――。ロシア軍の残虐さが報道されるにつけ、こんなことが起こってくれないだろうかと思わずにいられない。