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開幕戦で取材した、全日本ラリー選手権におけるトヨタ車増加の理由

 3月19日~20日、愛知県新城市周辺で開催された「新城ラリー2022」で、2022年の全日本ラリー選手権が開幕。最高峰クラスのJN1クラスはヘイキ・コバライネン&北川紗衣組(AICELLOラックDL速心FABIA R5)が優勝した。フィンランド人ドライバーとR5車両(競技専用車両)が速さを見せつける結果となったが、参戦車両全体を見渡してみると、実に多くのトヨタ車が参戦していることに驚きを隠せない。開幕戦に参加した注目のエントラントをご紹介しよう。

文、写真/青山義明

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ほとんどのクラスにトヨタ車が走っているという事実

エントラントの約7割がトヨタ車。スバルの巻き返しや三菱の復活に期待したい

 開幕戦に実際に出走したラリー車は41台で、そのうちの実に27台がトヨタ車。全体に占めるトヨタ車の割合は65%に達する。JN1クラス(2500ccを超える4輪駆動のRJ車両)のGRヤリスをはじめ、JN3クラス(1500cc~2000cc以下の後輪駆動のRJ、RPN車両)の86およびGR86、さらにJN5クラス(1500cc以下のRJ、RPN車両)にもGRヤリス&ヤリスがある。スズキのスイフトスポーツで占められているJN4クラスをのぞく、各クラスにトヨタ車が参戦している状況。

 JN1で昨年タイトルを獲得したのが、GRヤリスを駆る勝田範彦&木村裕介組である。その勝田選手は「今、一時期と比べたら全く比べものにならないくらい(トヨタ車の)台数は増えていますね。これって、モリゾウさん(トヨタ自動車豊田章男社長のドライバーネーム)選手がすごく頑張っているってことだと思います。その影響はすごく大きくて、モリゾウさんの活動だけでなくて、それにトヨタ全体も引っ張られている雰囲気があって……」

昨シーズンのGRヤリス投入時から2台体制で参戦するTOYOTA GAZOO Racing。今季も勝田範彦&木村裕介組、眞貝知志&安藤裕一組というラインナップ

「“ドライバーファースト”とモリゾウさんもおっしゃっていますが、今までそう思ってなかった層もそう思うようになってきています。そういう思いがあるからこそ、ぼくたちエントラントはそれに惹きつけられていると思います。それに尽きますし、モリゾウさんってモータースポーツ界はもちろん、特にラリー界の救世主だと言えます」とコメントしている。

他メーカーからトヨタ車に乗り換えるベテランドライバーも

奴田原文雄選手は、昨年からGRヤリスに乗り換え、自らのラリースクールからはトヨタのWRC育成プログラムに若手ドライバーを送り込んでいる

 勝田選手は昨年スバルからトヨタに乗り換えたわけだが、同じように昨年からJN1クラスにGRヤリスを持ち込んでいるのが奴田原文雄選手だ。奴田原選手といえば、長年にわたり三菱車でラリーに参戦してきていたが、所属していたタスカエンジニアリングが参戦を止めるということで、自らのチームを立ち上げるにあたり「戦える車両を」とGRヤリスをチョイスした。

 その奴田原選手は、2016年からラリースクールを立ち上げ、さらに2018年から若手育成プログラムとして「NUTAHARA RALLY SCHOOLジュニアチーム」という活動も展開しているが、その一期生で昨年JN3クラスのタイトルを獲得した大竹直生選手、そして二期生の小暮ひかる選手、また、昨年ラリースクールのヤングエキスパートクラスを受講した山本雄紀選手の3名を、トヨタのWRCドライバー育成プログラムであるTGR WRCチャレンジプログラムに送り込んでいる。

 そして今シーズンも、奴田原選手のGRヤリスを含め、ラリースクール生の平川真子&藤田めぐみ組(RSS86withヌタハララリースクール/トヨタ86)、そして佐藤セルゲイビッチ&明治慎太郎組(夫婦の学校ヤリスCVT/トヨタ・ヤリス)という3台のトヨタ車で参戦する。

ステップアップの流れを作っているのもトヨタ車増加の理由

GR Garage東京からは長山 等&水谷大介組(GR東京レーシング GR Yaris RS)が出場。ドライバー&コ・ドライバーは社員が務めている

 トヨタはラリー競技のグラスルーツカテゴリーへのアプローチも地道に続けている。それが入門者向けラリーシリーズである「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ(ラリチャレ)」である。時折モリゾウ選手が参戦し、ニュースになることもあるので、ご存知の方も多いだろう。

 ラリチャレを経験し、さらに上へのステップアップということで全日本ラリーへ参戦というルートをたどる選手もいる。こういった流れを受けてか、実際に車両を販売するディーラーにも波及し、ディーラーからの参戦が多いのも特徴である。もちろん、トヨタ販売店からの参戦であるからトヨタ車でという流れとなる。

 90年代からのラリーのイメージといえば、スバルと三菱という印象も強かったが、現在は、ラリーをするならトヨタ、なのである。市販車の開発フィールドに全日本ラリーの場を選び、プロモーションにつなげているのもポイント。トヨタの勢いが衰えることはなさそうだ。

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