クルマ好きはもちろん、移動手段の一つとしてクルマを持っている人にとっても頭が痛いのは維持費だろう。消耗品の塊であるクルマはそれほど乗っていなくても各部が劣化していくので定期的な点検、メンテナンスが必須となる。良好な状態で使用したいのなら、短いスパンで消耗品を交換するに越したことはないが、程度の良いものまですべて交換していたらお財布への負担は大きい……。
今回は金食い虫とも言える消耗品の交換目安や、少しでも長持ちさせるための方法を紹介していく。劇的な節約にはならないが、塵も積もれば山となる! 長い目で見ればちょっとしたひと手間が差を生むのも事実。ぜひ参考にしてもらいたい。
文/入江 凱、写真/写真AC、イラストAC
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ちょっとした気遣いでワイパーの劣化は防げる
雨の中でワイパーを動かしても拭き筋が残ったり、きれいに拭き取ることができなくなってきたらワイパーが劣化している証拠だ。ゴムが変形、硬化すると出てくるビビり音が不快なだけではなく、不明瞭な視界の中での運転には危険も伴う。一般的には、ゴム部分は半年~1年、ブレード(ゴムを支える棒状の部分)は1~2年での交換が目安と言われている。
ワイパーを長持ちさせるコツ
■定期的にワイパーゴムの汚れを取り除く
ゴム部分に付いた花粉や砂埃といった汚れは拭きムラの原因にもなるうえ、放置すればゴムの劣化を早める。定期的に濡らした布などで拭き取るだけでもゴムの劣化を遅らせることができる。また、拭き取った直後はいくらかスムーズな動きを取り戻せる。
■濡れていない状態でワイパーを動かさない
乾いたままワイパーを動かすとワイパーゴムを滑らせる要素がないので、無理矢理ゴムが動くことになる。最悪の場合は押し付けられたゴミがウィンドウの表面を傷付けてしまう恐れもあるので、晴れた日にワイパーを動かす際はウォッシャー液を使用してから動かそう。
■ワイパーを立てておく
雪が降る前には積雪によるブレードの歪みや、ゴムとガラス面の凍結による張り付きを防ぐためにワイパーを立てた状態にしておこう。また、夏の日差しにより熱くなったガラスにゴムを密着させたままにしておくことも劣化の原因に。理想は、炎天下で駐車をする場合もワイパーは立てた状態にしておくことだが、強風が吹いているときなどは、ワイパーのアーム部分が変形したりする恐れがあるので、注意が必要だ。
アーム部分に取り付けてワイパーをガラス面から浮かせるワイパースタンドといったグッズも市販されているので、うまく活用してほしい。
タイヤは走らなくても傷んでしまう!
走れば走るだけダイヤは摩耗する。摩耗が限界かどうかの判断をする指標がタイヤの溝にある1.6mmの高さのコブ、スリップサインだ。これが出てしまっているクルマは車検にも通らないため交換が必要となる。
雪道や凍結路で滑りにくいスタッドレスタイヤの場合は、スリップサインとは別に、溝の深さが新品時の50%に達したことを意味するプラットホームというサインもある。プラットホームが露出したスタッドレスタイヤは冬用タイヤとしての機能が果たせないレベルになっていることを意味しているので注意が必要だ。
また、摩耗が少ないからといって、製造から長い年月が経ったタイヤを使用するのは危険だ。見た目には問題なくても十分な機能を発揮できるとは限らない。多くのタイヤメーカーでは、使用開始から5年以上経過したものは速やかな点検を、製造から10年以上経過したものは交換を推奨している。
スタッドレスタイヤの場合は、一定条件下の試験によって3年程度は性能を維持するという結果が出ている。もちろん劣化の速度は使用状況や環境によって異なり、これはあくまで限界の目安で、それより早めの交換が安全を確保するうえでは必須だ。
タイヤを長持ちさせるコツ
■タイヤ洗う際はできるだけ水のみを使用する
洗剤を使用してタイヤを強く洗ってしまうと、劣化の原因物質からゴムを保護するための劣化防止剤やワックスによる保護層まで洗い落としてしまう可能性がある。できる限り水洗いを心がけよう。
■適正な空気圧に保つ
自転車と同様にタイヤの空気は少しずつ抜けてくる。空気圧が適正値にないと偏摩耗を招くので定期的にチェックして適正な空気圧を維持することが長持ちにつながる。
■「急」のつく動きはNG
急発進、急ブレーキといった急な動きはタイヤにより強いトラクションがかかり、摩耗を早めてしまう。スムーズな運転を心がけることは安全を守るだけでなくタイヤの消耗を抑えることにつながる。
■重い荷物を積みっぱなしにしない
荷物が重ければそれだけタイヤに荷重がかかり摩耗を早めることになる。重い荷物を運べるのがクルマの利点ではあるが、不必要なものを積みっぱなしにはしないほうがタイヤの消耗は抑えられる。
■タイヤをローテーションさせる
ローテーションとは装着済みのタイヤを入れ替えて摩耗を均一化させること。一般的にエンジンの力が加わる駆動輪のタイヤの方が早く摩耗する傾向があるため、これらを入れ替えることでそれぞれのタイヤの摩耗する箇所を分散させ、全体としてタイヤを長持ちさせることができる。
■保管方法に注意する
冬にはスタッドレスタイヤを、それ以外のシーズンは夏用タイヤに履き替える人は多いだろう。使用しないタイヤを保管する際にはゴムを劣化させる要因である日光、水分、油、熱源などを避けることができる冷暗所に保管しよう。
重量のあるホイールごと保管する場合は空気を半分程度抜いてゴムへの負担を減らし、平積みにすると変形しにくくなる。逆にタイヤ単体で保管する場合は、平積みすると上のタイヤの重さで潰れてしまう可能性があるので縦にして保管したほうがいい。
また、長い間動かさない場合、地面に接している面が潰れて変形してしまうので適度に乗ってあげることもタイヤの寿命を延ばすためには必要だ。
知らないうちに弱っていくバッテリー
一般的に鉛バッテリーの寿命は2~3年と言われている。バッテリーが弱ってくるとエンジンのかかりが悪くなったり、エンジンの回転数によってライトの明るさが変わったり、パワーウィンドウの開閉が遅くなるといった兆候が出てくるので日頃から注意しておこう。
バッテリーの寿命を減らす大きな原因がサルフェーションと呼ばれる現象だ。鉛バッテリーの場合、内部のバッテリー液と、液に浸った極板が化学反応することで電気が発生する。この極板に結晶が付着することで極板とバッテリー液が触れ合えず、化学反応を起こせなくなる(=充電できなくなる)現象だ。
放電状態のバッテリーを長期間放置したり、バッテリー液が少ないまま使用することはサルフェーションを急速に進行させてしまい、いくら充電しても元と同じ能力を発揮させることはできない。
バッテリーを長持ちさせるコツ
■チョイ乗りは避け、定期的にクルマを走行させる
放電状態での放置はサルフェーションを急速に進行させるが、サルフェーション自体は繰り返しの放電時にも発生している。しかし、微量であれば走行による充電で再び液に溶け込むため影響は少ない。ライトなど電気の消費が多い夜間走行、充電時間の短いチョイ乗りの割合が多いと充電不足かつ放電過多となりやすく寿命が短くなるため、定期的にそれなりの距離を走ってあげることがバッテリーの長寿命化に繋がる。
■バッテリー液の液量が減っていたら補充する
鉛バッテリーには液を自分で補充する必要のある開放型と補充の必要がない密閉型(メンテフリー/MF型)と呼ばれる種類がある。開放型バッテリーの場合、バッテリーに記載されているラインより液面が下がっていたら補充することでサルフェーションを予防し、バッテリーの寿命を延ばすことができる。
■バッテリー充電器を使用して補充電
テスターによってバッテリーの電圧を測定、基準値を下回っていれば充電器を用いて追加の充電(補充電)を行う、というのが正しい手順となるが、最近の充電器は高性能で接続さえすれば自動でバッテリーの状態を診断、必要なだけの充電を行ってくれる。充電器によってはある程度のサルフェーションを電気的刺激で分解してくれるパルス充電機能付きの充電器もある。
クーラント(冷却水)は常に必要十分量に維持しよう
燃焼によってエネルギーを生み出しているエンジンの温度をコントロールしているのがクーラントだ。現在主流となっている水冷エンジンはクーラントをエンジンの周りに循環、ラジエターで冷やすことでエンジンのオーバーヒートを防ぎ、適正な範囲の温度に保つしくみとなっている。
高温で沸騰した際の気泡を消す消泡剤や経路の錆を防ぐ防錆剤、凍結防止剤などが入っている有毒の液体なので取り扱いには注意が必要だ。寿命が約2年程度のLLC(Long Life Coolant)だけではなく、最近では7~8年以上交換不要と言われているスーパーLLCと呼ばれるクーラントも登場している。
クーラントを長持ちさせるコツ
■クーラントの量を定期的にチェック、必要に応じて補充する
長期で交換不要と謳われているクーラントも実際には少しずつだが蒸発していく。量が減ればクーラントを冷ましきれず劣化しやすくなるばかりか、最悪の場合はエンジンがオーバーヒートを起こし、重大な故障につながる危険性がある。
クーラントの量はリザーバータンクと呼ばれるタンクの目盛りを見るか、ラジエターキャップを開けることで確認できるが、高温時にラジエターキャップを開けてしまうと高温のクーラントが噴き出す危険性があるので注意しよう。
車種によってはクーラントが指定されていたり、製品によって成分も異なるため、混ぜ合わせると凝固して経路を詰まらせてしまう可能性もある。不安な場合は、ディーラーや専門店に任せよう。
■クーラント添加剤を使用する
長寿命化したクーラントだが使用していれば年々性能が低下していくのは免れない。消泡剤などの成分も劣化していくが添加剤を追加することでクーラントを交換することなく性能を復活させることが期待できる。
丁寧な運転を心がけてエンジンオイルを労わろう
エンジン内部のギヤ、シリンダーといった各部の潤滑を担うのがエンジンオイル。潤滑だけでなく細かい汚れを回収したり、冷却の役割も担っておりエンジンにはなくてはならない消耗品だ。空気や水分によっても劣化するため、過酷な使用環境も相まって頻繁に交換が必要となる。
交換時期に関しては使用しているオイルの種類、メーカーによって異なるが、夏や冬の極端に気温が高かったり低かったりするのはオイルにとって厳しい環境なので、半年に一度は交換しておきたいところだ。
エンジンオイルを長持ちさせるコツ
■シビアコンディションでのクルマの使用を避ける
シビアコンディションとはクルマにとって厳しい使用状況を指す。山道や未舗装路、雪道などの悪路を走ることや、チョイ乗り、ストップ&ゴーの繰り返しなどが該当する。冬場などはエンジン内部に結露が発生することもあり、この水分がエンジンオイルに混ざると乳化という変質、劣化を招く。短距離の走行では水分が蒸発しないため、ある程度エンジンが温まるまで走行することも劣化を防ぐためには必要となる。
■闇雲にエンジンオイル添加剤を使用しない
クーラント同様、エンジンオイルにも多くの添加剤が発売されている。ただし、闇雲に使用すると粘度が変わってしまったり、滑りが発生してしまうなど、逆に劣化の原因になることもある。
ちなみに、添加剤を入れてはいけないクルマもあるため、クルマの取扱説明書などで事前に確認しておく必要がある。パッケージに使用できないタイプのエンジンなどが記載されているものもあるため、パッケージに書かれている説明、注意書きは必ずチェックしよう。
■長時間のアイドリングを避ける
エンジンを低回転のまま動かし続けると、エンジンオイル内にカーボンが溜まり、劣化が進行してしまう。
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