2021年12月24日、スズキはスペーシアギアをマイナーチェンジした。今回の仕様変更はスズキコネクトの採用、内装デザインの変更、特別仕様車「マイスタイル」の追加設定が主な変更となっている。
やんちゃなイメージでデビューしたスペーシアギアだが、今回のマイナーチェンジでちょっと大人の雰囲気を匂わせる。そんなスペーシアギアをモータージャーナリストの飯田裕子氏が女性の視点でレポートする。
文/飯田裕子、写真/平野 学、スズキ
■スズキのスーパーハイト軽がこのスペーシアギア
「3395mm×1475mm」、この数字にピンときた方はフフフっ、かなりの軽自動車通ですゾ。これは近年の多くの軽自動車の全長3395mm×全幅1475mmというボディ寸法を示す数値。
そしてカタログの諸元表でその次に示されているのが全高で、今回の主役であるスペーシアギアは1800mmとスズキの軽自動車のなかではスーパーハイト系=背高ワゴンに分類されている。
日本独自のカテゴリーである軽自動車はかぎられた全長や全幅の寸法を室内に生かし、さらに全高寸法でより開放感と実用、そして個性的なスタイルを提案することでキャラクターを生み出している。
スペーシアギアはスペーシアファミリーのなかでも車名に「ギア」が付くことでも察しがつくと思うけれど、スペースを最大限に活用し、アウトドアなどアクティブなカーライフやそんな雰囲気を毎日楽しみたい方におすすめのモデルとして2018年の12月に登場。
そんなスペーシアギアは昨年末にマイナーチェンジを実施し、デザインやコネクテッドシステム、予防安全技術などを進化&熟成させて新登場しているのだ。
■グッとおしゃれになった「スペーシアギア」の内装
目に見える変更点はインテリアが中心だ。マットブラックとツや消しシルバーの配色と道具箱っぽい印象の造形と見た目、そして触れても操作しても質感へのこだわりが感じられる作り込みとともに演出し、新型ではここにカーキ色をところどこの差し色に配色している。
例えばスペーシアギアに採用されているシート。撥水加工が施されたハニカム柄もさりげなくクールな印象を与えてくれるシートのステッチ(糸)がカーキ色だ。
想像してみてほしい。それが黒でもグレーでも決して悪くない。でも、カーキ色だとグッとオシャレ度やデザインへのこだわりが増すと思わない? パーカーやジーンズもステッチの色で雰囲気が変わるでしょう? そういうところにこだわる方にはスズキのデザインのクォリティとセンスはきっと伝わるはずだ。
カーキ色と言ったっていろいろあるし、光沢の有無や強さでチープになってしまうこともある。また、スペーシアギアでは異なる素材でもさり気なくカーキ使いが上手に演出されているからいいのだ。
カーキ色の配色はほかにもエアコンのルーバーリングやメーターのリング部などにも施され、デザイン性と質感すらも高めていると感じることができる。フルモデルチェンジだと「差し色」をここまで語れないけれど、スズキって隅々までデザインして創り出す質感や世界感にこだわりが感じられるブランドだからこそ、こんな風に紹介できるのは筆者としても嬉しい。
登場当初から丁寧に作り込まれた内装のベースがあるからこそ、マイナーチェンジの有意義さを実感していただきたいというものだ。
■新型スペーシアギアに試乗した感想
そんな室内は室内高の高さも相まって広さとシートアレンジ、大小の収納スペースなど実用性をしっかりとデザイン(設計)されている。そこに今回のマイナーチェンジを受けて一見、目には見えない進化として新たに採用されたのが「スズキコネクト」だ。
事故や故障時のようなアクシデントの際にオペレーターと繋がる安心をサポート。ほかにもスマホにアプリをダウンロードすることでエアコンやドアロック、クルマの駐車位置、セキュリティ、燃費などの運転情報を得ることができるサービスをメーカーオプションで選ぶことができるようになった。
ダウンサイジングという考えがもはやクルマ選びでは当たり前の発想となっている今、さらにスペーシアギアのようなアウトドアアクティビティの遠出の足となり、遊びの基地やツールの宝箱となるようなモデルだからこそ備えて安心なサービスとも言えるだろう。
スペーシアギアは軽自動車としてはおなじみの排気量658ccの3気筒エンジンを搭載し、これに発進や加速をモーターでアシストするマイルドハイブリッドを標準搭載。そのうえ、ターボ付きとノンターボが選べ、2WDと4WDの用意がある。
試乗車はターボエンジンの2WDモデルだったが、街中のちょっとした発進や加速の思い通りのトルクや速さを得られるスマートさと高速走行の不安や不満のない頼もしさは軽自動車であることを忘れるほどだ。
街中のスマートな扱いやすさはやはりモーターアシストが効いている。エンジンにも高負荷がかかりにくいので静粛性にも優れるし、燃費に影響しやすい発進加速をモーターがアシストすることで環境性能にも貢献している。
個人的にはスペーシアファミリーのフォルムを構成するウィンドウエリアのデザインやサイズも特筆しておきたい。着座位置も高めな運転席から出窓のようなウィンドウエリアがパノラミックに広がる視界にワクワクと安心感を得ることができる。
安心感という点ではコーナリング中の背の高さをネガに感じさせぬハンドル操作に手応えと足元から天井までの一体感の満足度も高い。
■オシャレ&カワイイ特別仕様車「マイスタイル」
ところで、そんなまとまりのよさを持つスペーシアギアの新たなキャラクターとしてハイブリッドXZをベースに初の特別仕様車「マイスタイル」が発表された。デザインのこだわりはやはり配色にあり。
ルーフをホワイトとするツートーンのボディカラーのエクステリアを特徴とするほか、ヘッドランプ回りもベースモデルのブラック樹脂むき出しな演出に対し、マイスタイルはボディ同色。女性的な表現ではあるけれど、ギヤっぽさよりオシャレ&カワイイ印象に仕上げられている。
インテリアはホワイトステッチが入ったカフェのソファのようなブラウンのシート、それにフロアマットも含めて温かみと柔らかさを演出。レトロな道具箱っぽい印象を与えてくれるグローブボックスを含む、ブラウンのインパネカラーパネルのカラーコーディネイトぶりにも注目だ。
マイスタイルはベースモデルのタフな印象とは異なるナチュラルテイストが融合され、新しい個性を与えてくれている。日常の通勤から筆者の憧れでもある女性のソロキャンまでをこの1台で楽しみたいという方にも自然体で楽しめるモデルの登場と言えそう。
スペーシアは今回、ギアを含めたファミリーでマイナーチェンジを行っている。コロナ禍もあって街中から自然や郊外へと目を向けつつ、クルマ選びをする方も少ないないだろう。そんなことを考えながら駐車場で眺めたスペーシアギアはサイズ感とデザイン性も相まって自然のなかを走らせる姿、佇む姿を想像するだけで大型SUVやワンボックスにはない頑張る姿にキュンとなった。
実際に田園風景のなかでは「負けてないぜー」と愛おしさと頼もしさを抱く気持ちもサイズを超えてくれそうだと微笑ましく癒やされたのであった。
【画像ギャラリー】初マイナーチェンジでちょっとシックになった『スペーシアギア』を写真でチェック!!(31枚)画像ギャラリー投稿 田園のなかで愛おしさと頼もしさに癒された! スペーシアギア改良モデル試乗でわかったこと は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。