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GO BEYOND DIMENSIONS TOKYOに採択された4社とその街中実装パートナー各社の代表

GO BEYOND DIMENSIONS TOKYOに採択された4社とその街中実装パートナー各社の代表

東京都の「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」において、スタートアップ支援の開発プロモーターとして採択されたサムライインキュベートは、5Gを活用したサービスなどの街中実装や事業化を支援するプログラム「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」を実施している。

2月3日には、第1期として募集した中から4社が選定され、記者会見が開催された。採択されたのはYperサイトセンシングシナスタジアPlacyで、今後パートナーとなる大手企業や大学とともに、事業化を目指した実証実験などを行う。今夏には成果発表会も実施される予定だ。

採択された4社とその街中実装パートナー各社

採択された4社とその街中実装パートナー各社

夏までには一定の成果を上げ、発表を行う予定

夏までには一定の成果を上げ、発表を行う予定

東京都は、Tokyo 5G Boosters Projectとして20201年度から支援事業を開始。都が選定した「開発プロモーター」が主導してスタートアップなどの開発・事業化を支援するなどして、東京都が抱える課題を、5Gを活用することで解決しようという試みだ。2021年度にその1社に選定されたサムライインキュベートがオーガナイザーとして募集したのが今回のプログラムとなる。

サムライインキュベートのDirector Enterprise Groupの山中良太氏は、「5G普及による将来ビジョンは、AI・データ活用のケータイ化」と指摘。これはAIやデータ活用が「誰もが手軽に、いつでも利用できる」(山中氏)という意味だという。

例えば自動配送ロボットは、超高性能センサーや超高性能プロセッサを搭載するため、1大300~500万円とコスト高になる。しかし、5Gの特徴である高速・大容量、低遅延、多数接続といったメリットを生かし、クラウド側でデータを処理することでコスト低減に繋がる。これによって「サービスやソリューションが一気呵成に普及する可能性を秘めている」と山中氏。

5Gが目指す将来ビジョンとして、山中氏はエッジのシンクライアント化によるコスト低減などにより、AI・データ活用のケータイ化が起きる、としている

5Gが目指す将来ビジョンとして、山中氏はエッジのシンクライアント化によるコスト低減などにより、AI・データ活用のケータイ化が起きる、としている

これによって、自動運転車、ドローン配送、遠隔手術、xRといった社会課題を解決できるようになる。そんなポテンシャルを秘めていると山中氏は強調する。そうした世界を実現するために、スタートアップと街中実装パートナーによるタッグで、より確実に開発が進められることを狙ったのが今回のプロジェクトだ。

サムライインキュベートの山中良太氏

サムライインキュベートの山中良太氏

5Gの真価が現れる5G SAサービスが順次開始される2022年を「AI・データ活用元年」(山中氏)として、プロジェクトを推進し、実用化に繋げていきたいと意欲を見せていた。

「5G遠隔操作・監視でどこからでも配達員になれる自律走行ロボット」

採択されたYperは、もともと置き配バッグ「OKIPPA」を提供していたスタートアップ。物流のラストマイル配送を効率化するとしてOKIPPAを開発したが、加えて新たに開発しているのが自動配送ロボットの「LOMBY」だ。

OKIPPAのYperが開発している自動配送ロボットLOMBYが採択

OKIPPAのYperが開発している自動配送ロボットLOMBYが採択

Eコマースなどの通信販売やフードデリバリー、フリマアプリといったサービスの拡大で、「ラストマイル配送」の市場規模は2.5兆円に達していると同社代表取締役の内山智晴氏は指摘。宅配物の取扱量も2020年の約45億個から35年には88億個まで拡大すると予測されているが、国内労働人口は逆に約6400万人から5587万人に減少するとみられている。

宅配物の取扱量が急拡大するのに対して、労働人口が減少し、配達員が不足する懸念がある

宅配物の取扱量が急拡大するのに対して、労働人口が減少し、配達員が不足する懸念がある

結果として、物流は伸びても配送するための人員が不足することが懸念されており、「このギャップをどう埋めるか」(内山氏)ということから、今回の配送ロボットが開発されているという。

遠隔からロボットを操作することで、効率よく非対面の配送が可能になる

遠隔からロボットを操作することで、効率よく非対面の配送が可能になる

街中実装パートナーとしてJR東日本都市開発、東京都立大学、三菱地所が参画。飲食店からマンションへフードデリバリーをする実験や、都立大キャンパスでの宅配物配送や構内のフードデリバリー、東京の2つのビルにおける商業ビル内外での商品配送といった実験を計画している。

例えばフードデリバリーでは、店舗から300mほど離れたマンションへ遠隔操作で配達する

例えばフードデリバリーでは、店舗から300mほど離れたマンションへ遠隔操作で配達する

例えばフードデリバリーでは、店舗から300mほど離れたマンションへ遠隔操作で配達する

公道での配送においては、今後の法改正や警察などとの協議も必要になるが、5Gを使った映像伝送によって周囲を確認しながらの遠隔操作が可能。内山氏も、「遠隔操作では比較的技術的な課題が少ない」と話す。実証実験によって、それぞれの環境での商用利用ではどういった課題があるかを見極め、それをクリアしていきたい考えだ。

実験のプラン

実験のプラン

Yperの内山智晴氏

Yperの内山智晴氏

「減災初期対応に必要な災害時の被災状況のドローン生中継サービス」

産業技術研究所発のスタートアップであるサイトセンシングは、GPSなどの衛星測位システムの電波が届かないような地下、屋内、悪天候化の屋外などでも自律飛行ができるドローンを開発している。

サイドセンシングのドローン(画像中央)。屋内でGPS信号が届かなくても自律飛行が可能で、自動で撮影した画像を使って3Dモデルを作成する、といった開発が行われている

サイドセンシングのドローン(画像中央)。屋内でGPS信号が届かなくても自律飛行が可能で、自動で撮影した画像を使って3Dモデルを作成する、といった開発が行われている

サイドセンシングのドローン(画像中央)。屋内でGPS信号が届かなくても自律飛行が可能で、自動で撮影した画像を使って3Dモデルを作成する、といった開発が行われている

同社のドローンは、「移動体の動きにおける加速度の変化を積分して自己位置を求め、映像を使わずに自律航行ができる」(同社代表取締役の平林隆氏)という仕組みで、外部からの電波が不要で、映像も使わないので処理が軽く高速な位置測定が可能だという。

被災状況のリアルタイム把握を行うなど、様々な現場で活用できるとしている

被災状況のリアルタイム把握を行うなど、様々な現場で活用できるとしている

高精細映像が撮影できることで、そのデータを活用したサービスとの連携も可能になるとしている

高精細映像が撮影できることで、そのデータを活用したサービスとの連携も可能になるとしている

災害時にもいち早く現場で活動でき、現場の状況を素早く伝送できることにフォーカスしているそうで、その映像の伝送のために高速・大容量の5Gを生かす。ドローンからの映像を元に、災害時の避難民の数を数えたり、河川の決壊危険個所を映像から推定したり、といった外部のサービスとの連携において、映像がより高精細であるほど精度が高まるため、4Kや8Kの高精細映像を伝送できるよう、今回のプロジェクトで取り組む。

まずは開発の第1フェーズとして、小型のプロトタイプのドローンを開発。都立大のキャンパス内で自律飛行と撮影をして、5Gで映像を伝送する実験を行う。来年には大型ドローンで同様の実験を行い、24年3月には実用化に繋げたい考えだ。

今後のプラン

今後のプラン

サイドセンシングの平林隆氏

サイドセンシングの平林隆氏

「5Gによる大量普及型XR顧客体験価値向上サービス」

観光バスに乗り込んだ乗客がVRゴーグルを装着し、観光地の実際の景色と映像を組み合わせたXR周遊観光サービスなどを提供しているシナスタジアは、5Gによって機材の低コスト化と高リッチ化を実現して、サービス拡大に繋げたい考え。

VRゴーグルとリアルの観光を組み合わせたXR周遊観光サービス

VRゴーグルとリアルの観光を組み合わせたXR周遊観光サービス

現在は、京急電鉄の横浜バスツアーで導入されているがVRゴーグルに加えて処理するためのPCとバッテリーが必要で、バス1台に付き約2000万円のコストが掛かっているという。これを5Gの高速・低遅延の特徴を生かし、ネットワーク側でXR処理を行い、VRゴーグルに配信する仕組みによって、1台に付き400万円という大幅なコスト削減が可能になるという。

コストの重さが課題だったが、5Gの活用でシンクライアント化して安価に抑える

コストの重さが課題だったが、5Gの活用でシンクライアント化して安価に抑える

現在の仕組みでも、1人あたり4000円のチケットが即日完売で、利用者からも好評だという。ただ、オープントップバス1台で運用しており、これをさらに広げようとするには、現状の仕組みでは高コストだと京急側も判断。

それに対して、5Gを使ってデバイスをシンクライアント化することで、コストを削減し、今後はスマートフォン上でもXRコンテンツを配信できるようになり、幅広い環境にサービスが提供できるようになると期待する。

シナスタジアの代表取締役・有年亮博氏は、今回のプロジェクトを踏まえ、「来年度に実サービスを開発する」考えだ。

シナスタジアの有年亮介氏

シナスタジアの有年亮介氏

「オフィスにおける創造・共創を誘発するリアルワールド・メタバースサービス」「人と都市とのリアルなつながり・交流を創出するリアルワールド・メタバースサービス」

4社目のPlacyは、音楽を通じた感性解析AIを開発するスタートアップ。人の感性を推定するために音楽を活用すると精度が高くなることが「研究レベルでは出ている」と同社の代表取締役社長の鈴木綜真氏。Spotifyは、SNSで取得されるデータよりも音楽から得られたデータの方がより高精度にパーソナリティの推定が可能だとしているそうだ。

場所に対して音楽を投稿し、投稿された音楽を聴いて自分の感性と合う場所を見つける、という感性マップを提供している

場所に対して音楽を投稿し、投稿された音楽を聴いて自分の感性と合う場所を見つける、という感性マップを提供している

今回のプロジェクトでは「感性」という観点から街やオフィスの魅力を高めるサービスを開発する

今回のプロジェクトでは「感性」という観点から街やオフィスの魅力を高めるサービスを開発する

こうした視点を応用してその人と感性の合う街を紹介するといったサービスを展開してきた同社だが、今回のプロジェクトではパートナーの清水建設のオフィス内で、従業員のオフィスに最適化されたBGMを再生する。三菱地所とは、NianticのAR技術を活用し、東京・丸の内の「感性マップ」を作成し、誘客・回遊を生み出すためのコンテンツを作成する。

丸の内では、メタバースと感性マップを使って街の感性を可視化し、人の回遊性を高める

丸の内では、メタバースと感性マップを使って街の感性を可視化し、人の回遊性を高める

NiantecのAR技術を使った街クエストを開発してゲーム性も備えるサービスにする計画

NiantecのAR技術を使った街クエストを開発してゲーム性も備えるサービスにする計画

オフィスの感性マップを作成し、感性に合う環境で仕事をすることで、新たな価値の創出を狙う

オフィスの感性マップを作成し、感性に合う環境で仕事をすることで、新たな価値の創出を狙う

Placyの鈴木綜真氏

Placyの鈴木綜真氏