直近となる2022年2月の新車販売台数によると、トヨタライズが9903台販売され、SUVの販売1位になった。SUV2位はカローラクロスの6600台、SUV3位はヤリスクロスの5820台、SUV4位はヴェゼルの3826台と続く。
トヨタライズはダイハツ製のOEM車で、ダイハツブランドの姉妹車となるロッキーも、2022年2月に2025台を登録した。ライズ+ロッキーの姉妹車を合計すれば、1万1928台に達するから、まさにダントツの売れ行きだ。
なぜライズはここまで売れているのか? 人気の理由に迫ってみた!
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、ダイハツ、ベストカーweb編集部
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■ライズ好調の理由を販売現場に直撃
トヨタの販売店にライズの売れ行きが好調な理由を尋ねると、以下のように返答した。
「もともとライズは、コンパクトなSUVとして人気が高い。全長は4mを下まわり、全幅を含めて5ナンバーサイズに収まる。人気の高いSUVが欲しいが、運転のしやすい車種を買いたいお客様は、ライズを積極的に選ぶ。そしてハイブリッド(シリーズハイブリッド。ロッキーはeスマートハイブリッドと呼ぶ)も追加され、売れ行きをさらに伸ばした」。
ライズのボディサイズは、全長が3995mm、全幅は1695mmだから、販売店がコメントしたように5ナンバー車となる。ヤリスクロスは全長4180mm、全幅1765mm、カローラクロスは全長4490mm、全幅1825mmだから、ライズのボディは確かにコンパクトだ。
ライズは最小回転半径も4.9~5.0mだから、カローラクロスの5.2m、さらに大回りになるヤリスクロスの5.3mに比べて、小回り性能がいい。
ライズは前後左右ともに視界も優れているから、SUVでありながら、ヤリスやフィットのようなコンパクトカーの感覚で運転できる。販売店のコメントにもあった通り、運転のしやすいSUVを求めるユーザーにピッタリだ。
ライズは外観のデザインにも魅力がある。フロントマスクなどが直線的で、RAV4に近い印象だ。悪路向けのSUVをイメージさせる。最近はハリアーやヤリスクロスのように都会的なSUVが急増しており、シンプルな雰囲気を求める原点回帰の傾向も見られる。ライズはこのトレンドにも沿って、人気を高めた。
そしてライズの発売は2019年11月だが、2021年11月には、前述のハイブリッドも加えた。その効果により、2022年1月の登録台数は前年の1.2倍、2月は1.3倍に増えた。
ハイブリッドの燃費や価格も、売れ行きが増えた理由だ。ライズのハイブリッドは、エンジンが発電機を作動させ、発電された電気を使ってモーターを駆動するシリーズハイブリッド方式だ。モーター駆動だから加速は滑らかで瞬発力も相応に強い。
ハイブリッドの駆動方式は2WDのみで、WLTCモード燃費は28km/Lだ。ヤリスクロスの2WDが27.8~30.8km/L、ヴェゼルは24.8~25.0km/Lだから、ライズのハイブリッドは燃費性能も満足できる。
しかもハイブリッドZの価格は232万8000円だから、ヤリスクロスハイブリッドZの258万4000円に比べて25万6000円安い。
またノーマルタイプの1.2Lエンジンを搭載するライズZと比べても、価格の上乗せを28万9000円に抑えた。
ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差は、一般的にはマイルドタイプを除くと35万~60万円だ。ライズのハイブリッドは、発電機と駆動用モーターを別個に搭載するので、ノーマルエンジンとの価格差が28万9000円であれば割安になる。
しかもライズのハイブリッドでは、購入する時に納める環境性能割と自動車重量税が課税されないから、購入時の税額がノーマルエンジンに比べて2万4100円安い。そうなるとハイブリッドとの実質価格差は、26万4900円に縮まる。
そこでレギュラーガソリン価格が1L当たり160円として計算すると(現在の170円オーバーは高すぎる)、1km走行当たりのガソリン代は、ノーマルエンジンが7.7円、ハイブリッドは5.7円だ。ハイブリッドが1km当たり2円安く、約13万kmを走ると、ガソリン代の節約で26万4900円の実質価格差を取り戻せる。
ノーマルエンジンのWLTCモード燃費も20.7km/Lと優れているから、取り戻せるまでの距離が約13万kmと長くなったが、1年間に1万5000kmを走るユーザーであれば、8~9年で取り戻すことが可能だ。
またハイブリッドはノーマルエンジンに比べて動力性能が高く、加速も滑らかだから走りの質も向上する。そのためにハイブリッドは人気のグレードとなった。
このほか残価設定ローンの残価は、3年後で新車価格の51%だから、比較的高めになる(一般的には45%前後)。残価設定ローンでは、残価を除いた金額を分割返済するから、残価が高ければ返済額を抑えられる。
また残価はリセールバリューに基づいて決められるから、残価が高い車種は、数年後に高値で売却できることが多い。ライズは趣味性を感じさせるSUVでありながら、ハイブリッドの低燃費も含めて、出費を抑える上でも有利だ。
しかもボディがコンパクトで小回り性能も優れ、視界が良くて運転しやすいから、初心者ドライバーにも適している。
最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は185mmを確保したから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。駐車場と車道の段差が大きな場所でも、下まわりを擦りにくい。SUVならではの最低地上高は、街中でもメリットを発揮する。
最低地上高を高めたことで、着座位置が適度な高さに設定され、視線の位置も自然な印象だ。乗降時における腰の上下移動量も抑えられるから、乗り降りがしやすく、高齢者にも優しい。
■好調ライズの注意点は
このようにライズは、さまざまな年齢や性別、運転キャリアのユーザーが使いやすく、経済性も優れているから好調に売れている。
その一方で注意点もある。1.2Lノーマルエンジンは、実用回転域の駆動力に余裕を持たせて扱いやすいが、登坂路などで高回転域まで回すと、3気筒特有の少し粗いノイズが高まりやすい。
ハイブリッドはノーマルエンジンに比べて静かだが、登坂路などでは発電量を増やすため、エンジンを高回転まで回す。そうなるとやはり3気筒のノイズが耳障りだ。
ハイブリッド(ロッキーはeスマートハイブリッド)にはSペダルが装着され、アクセルペダルを戻すと同時に、駆動用モーターが発電を積極的に行う。この時には強めの減速も生じる。Sペダルを使うと充電効率が向上して、アクセルペダルだけで速度を幅広く調節できるが、ライズではブレーキペダルと駆動用モーターの協調制御は行っていない。
従ってSペダルの作動をスイッチ操作で解除すると、発電量も減って燃費が悪くなってしまう。燃費を向上させるには、Sペダルを使わなければならないので注意したい。
乗り心地はコンパクトSUVの中では快適で、ハイブリッドはさらに良くなるが、時速40km以下の低速域では上下に揺すられる印象を伴う。乗り心地はユーザーによって評価が分かれるので、販売店の試乗車で街中を走った時に確認したい。
居住性では、後席の足元空間に注意する。全長が4m以下に収まることもあり、身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半になる。
ライズよりもボディの長いヤリスクロスと同程度だから、SUVとして空間効率は悪くないが、ファミリーカーとして使うと窮屈に感じることもある。購入時には後席の広さも確認したい。
■ライズのお勧めグレードは?
グレード選びは、実用的にはGでも不満はない。LEDヘッドランプやアルミホイールなどを標準装着するからだ。
それでもZにグレードアップすると、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を防ぐアダプティブドライビングビーム、車間距離を自動制御できる全車速追従型クルーズコントロール、車線の中央を走行できるようにパワーステアリングを支援する機能などが加わる。アルミホイールは16インチから17インチにサイズアップする。
ハイブリッドの場合、Zの価格はGに比べて16万5000円高いが、20万円相当の機能が加わるので、プラスされる装備が欲しい場合はZの購入も検討すると良い。
なお1.2Lのノーマルエンジンとハイブリッドは、2WDのみに搭載され、4WDは1Lターボの組み合わせになる。
ターボの動力性能は、1.4Lのノーマルエンジンと同等だが、WLTCモード燃費は、2WDの20.7km/Lに対して4WDは17.4km/Lに悪化する。つまりライズの主力は2WDというわけだ。用途や予算に応じて選び分けたい。
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