今回は、「電線とケーブルの基本」についての説明です。
初めに
私達が住んでいる家庭には当たり前のように電気が通っています。
この電気は発電所や変電所からケーブルを経由して送られてきます。
ケーブルは、高耐圧のもの・柔軟性に優れたもの・耐火性の高いものなど多種多様で、用途によって使い分けをされています。
用途に合わせてケーブルを選定しないと、漏電・発火・機器の破損など思いがけない事故に繋がる可能性があります。
ケーブルの選定には接続する負荷の容量・距離・使用環境・コストなども考慮していく必要がありますが、この記事では前段階の『どんな電線・ケーブルがあるのか』について重点的に解説していきます。
解説と言っても電線・ケーブルの種類は膨大で説明しきれないので、例の如く簡単にまとめていくんですけどね。
具体的な設計基準は所属する会社の上司にでも質問して、それを順守して下さいねー。
電線とケーブルの関係
そもそも電線とケーブルの違いってわかりますか?
私はケーブルの中に電線が入っているので、電線はケーブルを構成する材料の1つだとイメージしていました。
一応以下のような区別になっているようです。
まあ、私の持っていたイメージとあまり変わらないです。
結局のところ、ケーブルは電線の1種だということですね。
電線はケーブルの1種だという主張も見られます。卵が先か鶏が先かみたいになってますね・・・。どっちでもいいわ。
ちなみに、電線やケーブルの中心にある導線のことを心線もしくは芯線と呼びます。
どちらの呼び方も間違いではありませんが、JISでは心線とされています。
『JISって何?』と思った方は以下の記事も見てみるといいかもです。
単線と撚線
電線は、内部の導線の構造によって単線と撚線の2種類に分類されます。
各々の断面図は以下の通りです。
汎用ケーブルとロボットケーブル
ケーブルには色々な種類がありますが、使用されている場所に観点を置くと汎用ケーブルとロボットケーブルの2種類に分類されます。
可動部以外ではコストが安く済む汎用ケーブルが大体使用されていると思っておけば良いかと。
一般的なケーブルの断面図は以下の通りです。
・押え巻きテープ
電線と介在を固定しているテープ。
・介在
電線を撚り合わせることによってできた隙間を埋める為の詰め物。
あくまで一般的なケーブルの例です。
テープや介在が入っていなかったり、シールド処理(通信線をノイズから保護する役割)をされていたりと色んなパターンがあるので、気になる方は廃棄予定のケーブルを切断して実際に確認してみるのが良いと思います。
電線に使用される導体
電線の導体には、基本的に銅かアルミニウムが使用されています。
それぞれの特色は以下の通りです。
・銅
導電率が高く、電流が流れやすい。
一般用途のケーブルはほぼ銅電線で構成されている。
銅には、常温・乾燥空気中ではほとんど酸化しないという特徴がある。
・アルミニウム
銅には劣るものの、導電率が高い。
銅よりも軽く、その重量は1/3程度。
銅よりも強度で劣る。
一般用途のケーブルにはほとんど使用されないが、送電線としてはよく使用される。
アルミニウムの酸化物は腐食に強いので、その酸化層に覆われるアルミニウム電線も腐食に強くなる。
アルミニウムに不純物が無いほど耐食性が高くなる。
電線径
電線のサイズは、日本では導体の断面積で表します。
単線の場合は単線の断面積、撚線の場合は撚線の断面積の総和(撚っている素線1本の断面積×素線本数)となります。
撚線の場合は見た感じの大体の断面積ではないことに注意しましょう。
電線径は、AWGとsqの2パターンの表し方があります。
AWGはアメリカで使用されている為、inchが基準にされています。
1 inch=25.4 mm
その為、AWGをsqに換算すると割り切れない値になります。
AWGとsqの換算表を以下に示しますが、AWGが小さくなるほど誤差が大きくなるので注意しましょう。
sq[mm2]の方が実際の断面積を表していますが、JISの対応サイズとしてはsqの値を取り扱います。
sq | sq[mm2] | |
AWG 4/0 | 100 | 107.2 |
AWG 3/0 | 80 | 85.03 |
AWG 2/0 | 60 | 67.42 |
AWG 1/0 | 60 | 53.49 |
AWG 1 | 38 | 42.41 |
AWG 2 | 38 | 33.63 |
AWG 4 | 22 | 21.15 |
AWG 6 | 14 | 13.30 |
AWG 8 | 8 | 8.368 |
AWG 10 | 5.5 | 5.262 |
AWG 12 | 3.5 | 3.309 |
AWG 14 | 2 | 2.081 |
AWG 16 | 1.25 | 1.309 |
AWG 18 | 0.75 | 0.823 |
AWG 20 | 0.5 | 0.517 |
AWG 22 | 0.3 | 0.325 |
AWG 24 | 0.2 | 0.204 |
AWG 26 | 0.12 | 0.128 |
AWG 28 | 0.08 | 0.0804 |
AWG 30 | 0.05 | 0.0507 |
換算方法について一応触れておきます。
AWGは導線の直径をinchで表していて、AWG〇〇毎に何inchか定められています。
例えば、AWG20の場合は導線の直径は0.0320inchとされています。
1 inch=25.4 mmなので、0.032×25.4=0.8128mmが導線の直径となります。
半径は0.4064mmなので、半径×半径×πで面積を求めれば大体sq[mm2]の値になります。
撚線の場合、7/0.08[本/mm]といった記載がデータシートなどにされている場合があります。
これは、直径0.08mmの電線が7本撚ってあるということです。
この情報から電線径を算出しなければいけない場合があったら、半径×半径×π×本数で計算しましょう。
また、断面積が大きいものは「kcmil」という単位で表されている場合があります。
1kcmil=1MCM=0.5067mm2
芯数
電線やケーブルの中心にある導線のことを心線もしくは芯線と呼ぶと軽く触れました。
つまり、ケーブル内の絶縁電線は心線扱いになります。
この心線の数を心数と呼びます。
ケーブルの心数にはいくつか種類があり、それに対する呼び方があります。
・心(C)
心線1本=1心=1C
・対(P)
心線2本の撚り合わせ=1対=1P
2本の心線を撚り合わせた所謂ツイスト線のこと。ツイストペアとも呼ぶ。
Pはペア(pair)から。
通信ケーブルには大体ツイスト線が使われている。
・Q
心線4本の撚り合わせ=1Q
4本の心線を撚り合わせたもの。
Qはクアッド(quad)やクアトロ(quattro)から・・・だと思われる。
よく使われる電線
電線の種類は色々あります。
IV・KIV・HKIV・OE・OC・DV etc.・・・その道のプロならまだしも、そんなに覚えてられません。
ということで、よく使われている電線を紹介します。
よく使われるケーブル
電線同様にケーブルも様々な種類があります。
同様によく使われているものを記載します。
あくまで初歩的な内容に触れる記事なので、簡単にまとめてみました。
もっと詳しく知りたい場合は専門的なページを探すか、本で勉強しましょう。
仕事でもっと詳しく触れる機会があればまとめるんですけどねぇ・・・。
ケーブル情報まとめリンク
個人的によく使用するケーブルをシリーズ毎にまとめてリンクで飛ぶようにしています。
管理の関係で別のページにまとめているので悪しからず…。
以上、「電線とケーブルの基本」についての説明でした。
【基礎から学ぶ電線】