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 大人気車種として一世を風靡したホンダ オデッセイが、2021年12月に生産を終了した。見た目はセダンのようにスタイリッシュでありつつ、スペースユーティリティが高い。ミニバンブームの先駆けとなったクルマである。

 初代モデルは1995年に12万5559台を販売した。一大ブームを巻き起こしたオデッセイの歴史を振り返り、その魅力を存分に語りたい。また、ミニバンのパイオニア的存在が、姿を消すに至った、衰退の理由を販売現場の目線から考えていく。

文/木村俊之
写真/HONDA

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■一世風靡したオデッセイ、その魅力とは

 初代オデッセイは、5年間で43万3028台を売り上げた大人気車種だ。2代目、3代目と改良を繰り返しながら、高い人気を維持し続ける。

 発売当時、販売ランキングの上位はカローラ、クラウン、サニー、シビックといったセダンが占めていた。この時代に、オデッセイが爆発的なヒットとなった理由には、セダン風味を感じられるミニバンだったことが挙げられるだろう。

1994年~初代オデッセイ

 また、今では当たり前のレイアウトだが、当時FFのミニバンは少なく、珍しい存在だった。オデッセイはFFレイアウトを採用することにより、低床化を実現する。ライバルにはない乗り心地と安定した走行性能が生み出されたのだ。

 さらに、乗降性の面でもミニバンの常識を覆した。

 当時から、ユーザーの反応はよく、「床が低い分、老若男女が車内に乗り込みやすい」「降りるとき、地面への足つきがよくて安全だ」という声が多かったと聞く。ミニバンは、乗車の際は足を高く上げなければいけないし、降りる時には、つまずく危険性があり、小さな子供や年配者の乗り降りに不安があった。オデッセイはセダンをベースに開発したことで、こうしたユーザーの悩みに応えられたこともあり、多くの支持を集めたのだ。

 そんな低床フロアと低重心の秘密は、開発のベースとなったアコードと同じ生産ラインを使っていたことにあったらしい。これにより低い車高とヒンジドアが、オデッセイに採用されたという話を聞いたことがある。

 3代目では、全高が1550mmとさらに低くなり立体駐車場にも入るミニバンへと進化した。これまで駐車場が確保できずミニバンを避けていたユーザー層も、こぞってオデッセイに乗り換えていったのだ。

 幅広い年齢層に愛されたプロポーションを進化させ続け、より挑発的なスタイルと、ユーザーに寄り添う姿勢が両立できたことが、オデッセイの最大の魅力と言えるだろう。

■人気のオデッセイが消滅!販売現場で感じたその理由

 2009年、累計販売台数100万台を突破したオデッセイだが、人気は少しずつ陰りを見せていた。人気が低迷した1番の理由は、顧客ニーズの変化に感じる。

 軽自動車やコンパクトカーが人気を集めるいっぽうで、ファミリーカーでは、トヨタ アルファード、トヨタ ヴェルファイア、日産 エルグランドなどの高級ミニバンや、トヨタ ヴォクシー、日産 セレナ、ホンダ ステップワゴンを筆頭とした全高が高く、快適な室内空間を確保するクルマが主流となっていった。

 現場で販売をしているとファミリー層では、子供がドアをぶつける心配がないスライドドアや、車内で着替えができる室内の高さを求める声が増えていく。しかし、全高の低い4代目オデッセイでは、そのニーズに応えることができない。オデッセイを求めるユーザーは、減少の一途を辿り続けるのだ。

 2013年から発売された5代目は流行を鑑み、車体の全高を上げ、スライドドアに変更して販売したが、オデッセイの特徴が消えてしまい普通のミニバンとなってしまった。ユーザーからは「オデッセイの名前でなくてよかったのでは?」という声も挙がっていたのを記憶している。

5代目オデッセイ アブソルート

 大阪激戦区にあるホンダカーズの営業マンはこう話した

 「エスティマの競合として5代目オデッセイは登場しましたが、時代の波に乗ることはできなかったように思います。ミニバンの人気はアルファードや、ヴェルファイア、セレナやステップワゴンなどの、箱型に集まっていましたから。ユーザーが求めていたものはステータスとなる高級ミニバンか、コスパのいいファミリーカーです。特徴のないミニバンになったオデッセイを求めるユーザーは少なく、販売店にはステップワゴンを目当てに来店するユーザーが増えていきました」

 とはいえ、2021年には2万1148台(31位)を販売し、ホンダの乗用車の中では5番目の人気があった。それでもなお、生産終了せざるを得なかったのは、アルファードのファミリーカー市場の独占と、ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンの人気に、オデッセイは追いつくことができないと、ホンダ自身が見切りをつけた結果なのだろう。

■生産終了も、まだオデッセイを新車で手に入るチャンスはある!

 2021年12月末に生産終了したオデッセイだが、まだ新車購入はできる。ホンダディーラーには、新車の在庫車が残っている可能性があるからだ。

 私が知る販売店では新車在庫が3台あった。ただし、オーダーする新車とは異なるため、ボディカラーやグレードの選択肢は狭くなる。ボディカラーは白や黒が多く、グレードは売れ筋のハイブリットEXパッケージが多数を占めた。販売店によって在庫は異なるので、複数の店舗に問い合わせすることをおすすめしたい。

2020年マイナーモデルチェンジして発売

 27年間、ミニバンブームを牽引してきたオデッセイ。狭山工場の閉鎖が生産終了の理由と言われているが、販売台数の低下も理由のひとつだろう。しかし、ホンダの販売現場では、オデッセイの代替候補がなくなってしまい、そのダメージは大きい。

 オデッセイに変わるモデルの登場は急務だ。オデッセイ、ステップワゴンと、ミニバン革命を起こしたホンダなら、さらなる高みを目指した、ユーザーに寄り添えるミニバンを生み出すことができると思う。オデッセイは、そのヒントを数多く残してくれたはずだ。

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