クルマで採用の進むLEDヘッドライトやLEDフォグランプだが、ハロゲンランプと違い発生する熱量が少なく、付着した雪が解けないという問題が挙がっている。
かつて、RV時代からフォグランプはハロゲンランプが主力だったが、消費電力が少ないという理由から最新モデルではフォグランプもLED化が進んでいる。しかし、吹雪いた時など最後の要であるフォグランプまで凍り付く、または雪の付着で役立たずになってしまう。
発熱量が大きく、雪に対して強いハロゲンランプはなぜ淘汰されてしまったのか? 雪に弱いと言われるLEDランプは、どのようにすれば雪に対応できるのか?
LEDはなぜ雪に弱いのか? から、ハロゲンランプが淘汰された理由、LEDヘッドライトの雪対策はどうなっているのかまで分析していく。
文/高根英幸
写真/ベストカーWeb編集部、デンソー、Adobestock(メイン画像=Jannik Fess@AdobeStock)
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■電動化で進むヘッドライトなどのLED化が抱える重大な問題
クルマの電動化が急速に進んでいる昨今だが、電装系を含んだ電子部品の高性能化、高効率化、小型軽量化、多機能化はそれ以前から相当なスピードで進化している。
クルマの燃費や安全性、快適性といったユーザーが購入時に求める要素のほとんどは電子制御の高度化によって実現されているのだから、当然と言えば当然の話だ。
しかし、それによる弊害がまったく起こっていない訳ではない。小型軽量、多機能化などを実現するためにはコストがかかる。それだけでなく、効率化を追求することで無駄だと思われていた部分が意外と役に立っていたことがわかることもあるのだ。
クルマのヘッドライトは、昔に比べどんどん薄型化されている。これはデザイン性もあるが、空気抵抗を抑えるためにボディを構成する要素として薄くした方が有利だからだ。
その光源もハロゲンバルブからHID、そして現在はLEDが主流だ。LEDは通電することで発光する素子で、ハロゲンバルブが電気抵抗による過熱から光ること、HIDは放電させることで火花を出している仕組みと比べると、圧倒的に効率がいい。
光量自体はHIDの方が上だとしても、LEDの効率の高さとデザインの自由度、量産性などを比較すれば、これからの光源はLED一択だろう。
しかし効率が高いということは、電気エネルギーを熱として捨てている量が少ない、ということになる。
実際にはヘッドライトに使われるLEDランプは、それなりに電力を消費するし、LED本体は基盤ごと冷却しなければ10万kmを超える耐久性を確保できないため、サーマルマネージメント(熱制御=各部品の温度管理)が導入されている。
それでもハロゲンバルブよりもずっと熱損失が小さいから、ヘッドライトを暖めるほどの熱量は発生しない。そのため冬季の降雪時にヘッドライトに積もった雪が溶けずに、ライトを覆ってしまうという状況が発生してしまうのである。
ヘッドライトの放つ光が雪によって遮られると、夜間の視界が確保できなくて自分が見えないだけでなく、周囲のドライバーに自車を認識してもらう被視認性も低下して、非常に危険だ。それでもLEDヘッドライトは普及しており、ドライバーは対策に苦労している。
同じことは信号機にも言える。今や日本全国の信号機もLEDが主流になりつつあるが、やはり降雪時に信号機に雪が積もって見えなくなるというハプニングが続出しているのだ。
表示面をやや下向きにスラントさせる、フィルムヒーターを貼り付けるなど、対策をしているタイプも登場しているが、まだ万全ではないようだ。
それまでの電球タイプでは1年に1回交換することでタマ切れを防ぎ、信号機の機能停止を防いでいるのだが、少子高齢化の日本では信号機のメンテナンスを行なう人材確保にも今後苦労することは明らかだろう。
そういった意味では、10年単位(現在の製品では寿命は6年~8年と言われている)で信号機を丸ごと交換していく、現在のLED信号機の方が日本の交通システムを支えるデバイスとして適しているのだ。
■LEDヘッドランプの雪対策はどうするべきか
ハロゲンバルブのほうが雪に強いと言っても、光量や消費電力、さらにはキメ細かい配光などを実現するLEDからハロゲンバルブに戻すような動きが起こるとは考えにくい。
しかしコストの問題もあってフォグランプはハロゲンバルブを使う車種もある。これによって降雪時のライトを確保する、という考えもあるようだ。
またクルマによっては、バンパーに内蔵されているヘッドライトウォッシャーが役立つと思われているようだ。しかしあれは、雨天走行後などにヘッドライトが汚れていた場合に作動させて、ライトのレンズ表面の汚れを落とすもので、雪を溶かすほどの能力はない。
ウォッシャー液を不凍タイプにしても、降雪時にはノズルのカバーがバンパーと凍り付いて作動しなくなってしまうこともあるため、あまり期待しないほうがいいだろう。
乗り込む際には灯火類だけでも雪を取り除いたり、解氷スプレーをヘッドライトにもスプレーして溶けやすくするなど自分で出来る対策は行なったほうがいい。
撥水効果のあるコーディングをヘッドライトレンズに施して、その上に解氷スプレーをすれば、よりヘッドライトに積もる雪は解消されるが、それでも効果は限定的だ。ライト周辺のボディもツルツルの撥水コーティングをして、雪が積もりにくくするのも対策にはなる。
アフターマーケットではヘッドライトやテールランプに貼り付けるタイプのヒーターが登場している。しかし汎用(デンソー製は車種が限定されている)なため、車種によって効果は差があるようだ。それでもヒーターなしよりは確実に効果はあるハズ。
それにヒーター部分はそれほど耐久性はないようなので(メーカーは1年で交換が推奨している)、数年後にはさらに改良された製品が登場することを期待して、まずは現行品を雪国のドライバーは導入してみてはいかがだろう。
自動車メーカーが用意する寒冷地仕様車ではヒーターやバッテリー、オルタネータが大型化されているほか、ワイパーとフロントウインドウが凍り付いてしまった場合に溶かすデアイサー(専用のヒーター)などが追加装備されるクルマもある。
SUVなど走破性を重視したクルマの寒冷地仕様車は今後、ヘッドライトにもヒーターを装備するようになるのではないだろうか。
すでにヒーター素材として薄膜の発熱コーティング剤も開発されているから、そうした工夫がランプメーカーによって施されることになるだろう。
あるいは寒冷地仕様車にはヘッドライトレンズに熱伝導の高い樹脂素材を使い、裏側にエンジンの冷却水を導入してやることで排熱利用のヘッドライトヒーターを実現することもできるかもしれない。
気候変動によって暖冬になりつつあるが、日本海側は大雪になりやすい傾向にある。灯火類の雪対策は、自動車メーカーに急務としてほしいところだ。
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