現在、日本車のラージステーションワゴンはクロスオーバーまで含めてマツダ6とスバルレガシィアウトバックがあるくらいで、それがトヨタ車になるとクルマ好きでも「その種のクルマってあったっけ?」となることが多いだろう。
しかし、ここ最近ベストカー本誌3月26日号に「FF化される次期クラウンにスポーツワゴンが設定される」という情報が掲載されたのに加え、某外国人カーデザイナー氏がカムリをステーションワゴン化したレンダリングをSNSに投稿するなど、トヨタのラージステーションワゴンが再び注目されつつある。
また、思い出すと大メーカーのトヨタだけに10数年前まではラージステーションワゴンもそれなりにラインナップしており、ここでは平成以降に販売されたトヨタのラージステーションワゴンを振り返ってみた。
文/永田恵一
写真/トヨタ、ベストカーWEB編集部
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■クラウンステーションワゴン
クラウンはクラウン自体が2代目モデルだった時代から5代目モデルまではクラウンカスタム、6代目と7代目はクラウンワゴン、8代目はクラウンステーションワゴンという車名で、ステーションワゴンモデルも設定していた。
ここでは1987年登場の8代目クラウン(S130型)のステーションワゴンを紹介しよう。このモデルも歴代クラウンステーションワゴンと同じく、全体的には「クラウンをそのままステーションワゴン化した」という印象だった。
8代目クラウンステーションワゴンで特徴的な部分はふたつある。ひとつ目は歴代モデル同様、ラゲッジスペースに後ろ向きとなる2人がけの3列シートが付く仕様もあり、さらに「ベンコラ」と略されるコラムシフト+3人がけベンチシート仕様を組み合わせると最大8人仕様もあったこと。
ふたつ目は4ドアのクラウンでは7代目モデルからあった2L直6スーパーチャージャーが加わった点だ。
8代目クラウンステーションワゴンは、4ドアのクラウン同様にモデル末期の1990年に1JZ型の2.5L直6を追加し、クラウン自体は1991年に9代目モデル、1995年に10代目モデルに移行する。
しかし、8代目クラウンステーションワゴンはクラウン自体が9代目モデルになったタイミングで比較的大きなマイナーチェンジを受けた後は、小改良はあったものの、クラウン自体が1999年に11代目モデル(S170型)になるまで12年間生産された。
8代目クラウンと後述する5代目マークII(X70型)のステーションワゴンが10年以上生産されたのは、需要と開発費の折り合いもあったにせよ、基本設計が昭和の時代だった2台は燃料タンクがラゲッジスペース下だったので、ステーションワゴン化も比較的容易だったからだ。
それに対し、1995年登場のクラウンの10代目モデル、マークIIも1992年登場の7代目モデルと1996年登場の8代目モデルは燃料タンクがリアシート背面にあったため、構造的にステーションワゴン化が困難だったという背景もあったようだ。
■クラウンエステート
クラウンのステーションワゴンは1999年に、クラウン自体がこの年11代目モデルに移行したタイミングから少し遅れて、車名もクラウンエステートに替え、ようやくフルモデルチェンジされた。
クラウンエステートもこのモデルからセダンのみとなったクラウンに準じたステーションワゴンだった。しかし、3列シート仕様が廃止された点やクラウン自体がこのモデルからスポーティなアスリートを強調し始めたこともあり、クラウンエステートもそれに準じてアスリートも設定。クラウン自体と同様に2.5L直6ターボを搭載したアスリートVもあった。
クラウンエステートも8代目クラウンステーションワゴンほどではなかったが、2003年にクラウン自体がゼロクラウンというニックネームが付いた12代目になっても継続生産され、2007年に絶版となった。
■セプター
少々わかりにくい話になるが、1992年登場のセプターは当時日本では5ナンバーサイズだったカムリの北米向けを日本仕様としたモデルである。そのため、ボディサイズは大きく、エンジンも3LV6を搭載するなど、アメリカンサイズだった。この関係は一時期のホンダアコードとインスパイアの例とも似ている。
セプターは本題となるステーションワゴンが最初にアメリカからの輸入という形で日本に導入され、のちに日本製のセダンとアメリカ製の2ドアクーペも加わった。
セプターステーションワゴンは大きなボディサイズを生かした広大なリアシートとラゲッジスペースを持ち、ラゲッジには後ろ向きの2人がけ3列目シートを持つなどの特徴があったが、華のあるクルマではなかったこともあり、印象が薄かったのも事実だ。
■カムリグラシア&マークIIクオリス
セプターは1996年、のちに5ナンバーボディのカムリを吸収する形でセプターの後継車となるカムリグラシアに移行した。
カムリグラシアはセプター同様、当時のウィンダムやアバロンといった北米向けセダンの普及モデルというポジションで、ステーションワゴンも設定。しかし、セプター同様印象の薄いクルマで、セプターにあった3列シート仕様がなくなったことくらいしか記憶がないというのが率直なところだ。
1997年登場のマークIIクオリスは、後述する長年生産された5代目マークIIワゴンの後継車である。しかし、マークIIクオリスはマークIIの車名が付き、当時のマークIIのようなフロントマスクは持つものの、FRだったマークII自体とはまったく関係のないカムリグラシアの兄弟車となるFF車である。そのため、クルマ自体の印象はカムリグラシア同様に薄い。
マークIIクオリスは2002年に後述するマークIIブリットに移行し、一代かぎりで絶版となった。
■マークIIステーションワゴン
マークIIのステーションワゴンもクラウン同様、長年設定されており、1984年登場の5代目マークIIのステーションワゴンは前述のマークIIクオリスが登場するまで販売された長寿車である。
5代目マークII自体は「マークII現象」という言葉が生まれるほど、豪華さをはじめ華のあることで人気となったモデルだった。しかし、5代目マークIIワゴンにはどうもマークII自体のような華は感じられず、印象に残っているのは「長寿車だった」ということだけだ。
■マークIIブリット
2002年にマークIIクオリスの後継車として登場したマークIIブリットは、当時の9代目マークII(X110型)のステーションワゴンで、マークIIの本流となるFR車に戻った。
マークIIブリットも9代目マークIIに準じたステーションワゴンで、9代目マークIIやクラウンエステート同様に2.5L直6ターボ搭載のスポーツモデルもあった。
マークIIブリットはクルマ自体に大きな問題はなかったものの、クセのあるエクステリアが最大の理由として低迷。だが、クラウンエステート同様にマークIIがマークXに移行しても2007年まで継続生産され、マークIIの車名としては最後のモデルとなった。
また、マークIIブリットとクラウンエステートの2.5L直6ターボ搭載車はMT車の設定こそなかったものの、MTへの換装が珍しくないドリフト業界では今も現役である。
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