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<p>『オッドタクシー』監督・木下麦×脚本・此元和津也。テレビ版から映画版まで制作の裏側を語る|Pen Online</p><p>【新着】『オッドタクシー』監督・木下麦×脚本・此元和津也。テレビ版から映画版まで制作の裏側を語る</p><p>2021年の4月から6月にかけてTV放送され、熱狂的なファンを多数生んだアニメ『オッドタクシー』。かわいらしい動物のキャラクターたちが東京を舞台に犯罪がらみの騒動を繰り広げるハードボイルドなテイスト、…</p><p>木下麦●多摩美術大学在籍時からイラストレーター/アニメーターとして活動。アニメーターや監督補佐を経て、「オッドタクシー」で自身初となる監督、キャラクターデザインを担当。P.I.C.S. management 所属。 ――おふたりは映像クリエイティブカンパニー「PICS」に参加されていますね。 木下:僕は多摩美術大学を卒業後、PICSにアルバイトのような形で入り、その後に所属しました。此元さんは『セトウツミ』の連載後ですよね? 此元:そうですね。僕は2018年に参加しました。「これまでの漫画の仕事は好きにやってもらって、PICSからの仕事はやる/やらないか自由に決めていいよ」といった軽い感じで誘われたので、じゃあ……って(笑)。 木下:元々僕が『オッドタクシー』の原型となる企画書を出したのが5、6年前。その段階では動物のキャラクターのデザインはいまとほぼ変わらない形でできていて、ただ設定は日常系のほのぼの大学生の物語だったんです。その企画書を見た平賀大介プロデューサーが「もうちょっと独自性を入れないと勝算がない。動物アニメはたくさんあるから、差別化を図らないと」とアドバイスをくれて、此元さんにアポイントを取ってくれたんです。それが出会いですね。 「かわいい動物だけど中身はすごくシリアスで、生々しい人間ドラマをやる」というのは此元さんに最初にお伝えしていました。そのギャップを此元さんがどんどん広げてくれた感じです。 ――ギャップというと、『セトウツミ』もコメディかと思いきや、終盤は驚くべきところにドライブしていきますよね。此元さんのお得意な形なのでしょうか。 此元:どうなんでしょうね。ただ、最後は滅茶苦茶にしたくなるというのはあると思います(笑)。 此元和津也●漫画家・脚本家。P.I.C.S. management所属。2010年、漫画「スピナーベイト」で漫画家としての活動をスタート。2013年、読み切りで掲載された「マジ雲は必ず雨」が人気を集め、その後「セトウツミ」に改題、連載スタート。2014年には、「聾の形」「弱虫ペダル」「僕だけがいない街」など名だたる作品と共に『第18回手塚治虫文化賞-読者賞』にノミネートされる。同じ場所、同じ二人の会話だけで繰り広げられる物語は、その後映画化、ドラマ化と拡大していき大ヒット。 2019年、「ブラック校則」では映画、ドラマ、Huluオリジナルストーリーで本格的に脚本家としての活動をスタート。現在は独自の作家性を生かして、漫画以外の領域へも活動の場を広げている。 ――木下監督は元々動物を描くのがお好きだったと伺いました。 木下:動物好きはもちろんなのですが、人間の姿を率直に描くのが照れくさいといいますか、昔から苦手だったんです。動物や宇宙人みたいに、フィルターを通して描くのが性に合っていますね。 ――『オッドタクシー』は、ジャック・ニコルソン主演の『恋愛小説家』の影響を受けているそうですね。 木下:『恋愛小説家』はすごく好きな映画の一つです。主人公が恋愛小説家だけど、すごく偏屈で頑固で、恋愛下手なんです。それがある人を好きになることで、頑なに自分のルールで生きていた性格を変えようと努力する。さえない主人公からスタートする物語の部分など、『オッドタクシー』の着想はそこから来ていると思います。 あと影響を受けているのはコーエン兄弟。『ファーゴ』や『ノーカントリー』に流れる不条理感がすごく好きで。人生っていきなり理不尽な不幸に見舞われたりするじゃないですか。みんなが目をそむけたくなる社会の暗黒面も真っ向から描く作家性には惹かれるものがあります。 此元:僕も木下監督に言われて『恋愛小説家』を観て、そこから小戸川の人物像を膨らませていったのですが、結構好きなものが共通していたんです。豊田利晃監督の映画『ナイン・ソウルズ』や奥田英朗さんの小説『最悪』といった群像劇、あとは二人ともお笑いが好きなので、元からフィーリングが近いところにあったように思います。 本作の原画。『オッドタクシー原画・設定資料集』(東京ニュース通信社)より 本作の原画。『オッドタクシー原画・設定資料集』(東京ニュース通信社)より 本作の原画。『オッドタクシー原画・設定資料集』(東京ニュース通信社)より 本作の原画。『オッドタクシー原画・設定資料集』(東京ニュース通信社)より —fadeinPager— 本作の絵コンテ。『オッドタクシー原画・設定資料集』(東京ニュース通信社)より ――此元さんといえば、絶妙な対話劇です。秀逸なセリフ回しはどうやって生まれてくるのでしょう? 此元:とりあえず一行目を書いて……そうしたら二行目を書くじゃないですか(笑)。それを繰り返していくと“面白い瞬間”に出合えるんです。それができたら遡ってそこまでの行を変更したりして、作っていきますね。 木下:此元さんの脚本は、セリフはもちろん整合性が素晴らしいですよね。僕は作品のルールや秩序の精度が高いほど信用できると思っているのですが、『オッドタクシー』においてもリアリティラインがしっかりと保持されている。それが恐怖心や緊張感につながりますし、大人向けのアニメにできた要因でもあると思っています。 此元:ドブが小戸川に「協力しろ」って言うときって、結構無理めな交渉だと思うんです。それを観ている人が納得いく形で成立させるために、結構長めの会話を書いたりしましたね。 ――伏線回収の見事さも、大いに話題になりました。</p>