WEC世界耐久選手権のLMP2クラスに2022年から参戦を開始したプレマのチーム代表、レネ・ロジンによれば、スポーツカーレースのへの挑戦が、プレマがこれまで確立してきたシングルシーターの活動に対し、さらなる「チャンス」を生み出すという。
“シングルシーターの雄”とも言うべきイタリアのプレマは、F2、F3、F4など、さまざまなジュニア・オープンホイールへの取り組みと同時に、今季はLMP2プログラムを開始した。
アイアン・リンクスとのコラボレーションにより、『プレマ・オーレン・チーム』としてWEC第1戦セブリング1000マイルレースでLMP2デビューを飾ると、ロバート・クビサ/ルイ・デレトラズ/ロレンツォ・コロンボのドライブする9号車オレカ07・ギブソンは4位フィニッシュという好スタートを切っている。
将来ハイパーカークラスへと参入することも視野に入れ、ビジネスプランにLMP2プログラムを追加することによって、F1へ到達することができないドライバーにキャリアの選択肢を提供できると、ロジンは考えている。
LMP2参入の理由についてロジンは次のように説明した。
「その理由はとても簡単だ。我々がシングルシーターで取り組んでいることの“頭上”には、F1しかない」
「大きな(資金的な)支援を持たない者にとっては、F1はかなり制限された世界だ」
「F1に行くことができないシングルシーターのドライバーに我々が提供できるのは、耐久レースのプログラムだ。FIAとACO(フランス西部自動車クラブ)がル・マン・ハイパーカー(LMH)とLMDhで行っていることは、とても興味深い」
「準備を整えて(LMH、LMDhの)マニュファクチャラーを惹きつけるためには、そのプロセスをリードするLMP2に参入する必要がある。基本的にはこれが、WECおよびLMP2プログラムに参入することを決定した背景だ」
「F1の扉は閉じてはいないが……(実際には)閉じられた扉だ。まず何よりも、新たなチームとしてF1に参戦するには2億ドルが必要だ。これは、LMP2プログラムを始めた理由の一部だ」
「我々はLMP2で学び、競争力を高めたいと考えている。これが今年の目標であり、その後に、将来何がもたらされるか分かるだろう」
「これは、我々にチャンスを与えてくれるものだ。F1の中のスペースはかなり限られている。マニュファクチャラーに関係していないドライバーがF2への参戦を終えたら、次はどうすればいい?」
「だが、そこにはまだLMP2に参戦するという選択肢があり、さらに近い将来にはLMHやLMDhに加わることができるかもしれない。これは素晴らしいチャンスだと思う」
「我々は2〜3年前から、スポーツカーを注視するようになった。これは思いつきの決定ではなく、我々がずっと考えてきたことだ」
■LMP2プログラムのために工場を購入という本気度
シングルシーターのドライバー向けに選択肢を創出するというプレマの“本気度”は、イタリア・グリジニャーノにある本社の専用の建物にLMP2プログラムを配置することで実証されている。
チームはシングルシーターのワークショップに隣接する建物を購入し、そのふたつをリンクさせ、ふたつのプログラムを区別したうえでマネジメント担当者が両方を監督できるようにしている。
「この作業は、この冬の仕事の大部分を占めた」とロジンは説明する。
「LMP2プログラム用に、新たな建物に投資した。現在、ふたつの接続された建物がある状態だ。ひとつはLMP2専用で、もともとの建物はシングルシーター用だ」
「ちょうど向かいで(建物が)売りに出されていたので、簡単ではあった。我々はいくつかの仕事を終わらせる必要があり、新たな作業を始める許可を得るために市などの行政手続きは必要だったが、それは非常に簡単なものだった」
シングルシーターでの長年の経験があるにもかかわらず、スポーツカーレースにデビューするプレマにとっては、「すべてが新しい」とロジンは認めている。
アイアン・リンクスは主にマネジメント側のサポートをしており、レースチームはLMP2の経験を持つ新加入のスタッフと、シングルシータープログラムのスタッフによるミックスで構成されている。
プレマは現在3台のオレカシャシーを所有しており、WECとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに1台ずつが投入され、3台目はスペアとして扱われている。
「我々は新しいLMP2チームであり、まず第一に、以前は一緒に働いていなかった人々を組み合わせ、まとめあげる必要があった」とロジン。
「ほんの数人が、我々のシングルシーターの経験を持つ。(契約したい)多くの人はすでに他のチームで働いていたから、非常に難しいプログラムだった」
「したがって我々はシングルシーターのスタッフの何人かをWECプログラムのいくつかのポジションへと移し、そこに(他チームで)WECの経験を持つスタッフを何名か加えることにした」
「もちろん、これは始まったばかりのプロセスだ。長期的な視点でね。我々は勝つため、そして最高の仕事をするためにここにいるわけだが、いまはまだシーズンの早い段階であり、チームは新しい。したがって、私は現実的な目標を設定しなければならない」
「だが、我々は良いスタッフのグループをまとめようとトライした。スタッフはお互いを前から知っていなくても、すでに非常にうまいこと働いている。これはプロセスの一部だし、あとは時間とレースイベント(での経験)が必要なだけだ」
ロジンによればプレマのシーズン前のテスト日数は「片手で数えられる」ほどのものだったというが、チームはセブリングで力強いスタートを切り、ユナイテッド・オートスポーツ、WRT、JOTAといったLMP2で多くの経験を持つ確立されたチームと渡り合える競争力を備えているように見えた。
「4月にヨーロッパでシーズンを開始するような場合、それはもっと簡単だったかもしれない」とロジンは言う。
「だが我々は(アメリカの)セブリングですべてを始めるため、1月にはすべての機材を送り出す必要があった。これは準備に大きな影響を及ぼした」
「だが、すべてが非常にスムーズに進められている。最初の数日間は大変な夜を過ごしたが、それは仕事の一部であり、すべてが予期したとおりに進んでいると思っている」