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日本では生産終了だけど……人気のメキシコでは大胆チェンジ!! マーチがキリっと生まれ変わる

 日産のメキシコ法人は、2022年3月1日に「マーチ」(メキシコ仕様)の2022年モデルを発表した。メキシコ市場における日産車のなかで人気トップ3に入るモデルだという。

 メキシコで販売される新型マーチは、基本設計は日本で販売される現行マーチ(K13)と共通するものの、大型のVモーショングリルやツリ目のヘッドライトなどを採用した、スポーティなフロントフェイスが特徴となる。

 残念ながら、日本では生産・販売が終わってしまう日産「マーチ」だが、メキシコでの旧型の人気はどうだったのか? またメキシコ仕様の新型のマーチがどのように変わるのか? レポートしていきたい。

文/桃田健史
写真/NISSAN

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■日本語の車名もポピュラー 日産車に対する信頼度が高いメキシコ

メキシコで販売されている日産 マーチがビッグマイナーチェンジ。日本の現行モデルに比べてシャープなフロントフェイスだ

 日本では販売終了が噂される日産「マーチ」だが、メキシコではビックマイナーチェンジされて最新モデルが登場した。いったい、どうしてなのか?

 メキシコは、日本人にとって国の名前としては聞いたことがあるが、実際に訪れる機会はあまりない国ではないだろうか。位置としては、アメリカの南側に隣接しており、カリフォルニア州、ネバダ州、テキサス州などとの間にメキシコ国境がある。

 筆者は、こうした各州それぞれの国境からメキシコに自走して入ったことがあるが、国境を越えた瞬間にあたりの雰囲気は一変する。GDP(国民総生産)ではアメリカに比べて大きく下がるため、メキシコでの生活レベルもアメリカに比べてかなり見劣りしてしまう。

 また、一部の都市では治安も悪く、海外から訪れる人にとっては盗難に対する積極的な予防策も必要となる。

 そして、メキシコ国内を走行しているクルマを見ると、かなり年季が入ったクルマも少なくない。さらには、日産車を数多く見かける。

 メキシコ全体での新車販売台数はアメリカと比べると少ないなか、日産はメキシコ市場でのシェアが高い。メキシコでは古くから、日産車に対する庶民のロイヤリティ(ブランドに対する信頼感)がとても高いのだ。

 その代表的な日産車が「TSURU」だろう。これで「つる」と読む。なんと、鳥の「鶴」のことである。

 こうした日本らしさを表現して名称では、二輪車ではスズキ「刀」が有名だ。また、海外向けの四輪車では、三菱と旧クライスラー向けで「ラムダ」で、札幌冬季オリンピックにちなんだ、その名もズバリ「サッポロ(札幌)」があった。

 日産としてはメキシコで日本車の本質をしっかり理解してもらうため、「鶴」という大胆なモデル名称を用いたといえるだろう。

 日産「TSURU」は、5代目のサニーのことだ。1980年代にメキシコで生産が始まり、なんと25年以上に渡って大幅なモデルチェンジを行わなかった。特に、タクシー車両としての需要が多く、メキシコ各地でタクシーに乗ると「TSURU」という時代が長らく続いてきた。

 こうしたメキシコでの日産車の歴史があるなかで、日産はメキシコ国内での生産拠点を段階的に拡大していった。

 なかでも大きな変化は、2013年に稼働を始めたアグアスカリエンテス市の第二工場である。筆者は同工場建設の鍬入れ式を取材したが、当時のメキシコ大統領も出席した大規模な式典となった。

 アグアスカリエンテス工場の敷地内には、日産向けのトランスミッション等を提供する各種部品メーカーも工場を拡張し、メキシコでの日産事業はしっかりとした基盤を築いていった。

■電動車の需要は少なし! メキシコのマーチがビッグMCしたワケ

 では、話をマーチに戻そう。

 マーチが登場したのは今から40年前の1982年だ。グローバルで見ると、Bセグメントに属する。日本では高度経済成長期の庶民のクルマとして、カローラ vs サニーというイメージが強かったが、マーチの登場によって日産のコンパクトカーのイメージは大きく変わったといえるだろう。

 まあ、ターボエンジン搭載車や、レース仕様車など、広い世代が比較的コストをかけずにスポーツ走行やレース参戦できるクルマとして根強い人気を博してきた。

 だが、2010年代になると、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなど新事業領域・電動化)による、100年に一度の自動車産業大変革期に突入。また、日本市場では2000年代以降に、主力セグメントがミニバンと軽自動車となっていく。

 そうしたなか、日産はコンパクトカー戦略として、ノートにe-Powerを搭載し、さらに最新モデルでは車体やデザインなどを刷新したことは記憶に新しい。その上で、マーチは時代変化の中で、日本では姿を消すことになった。

メキシコでのマーチの人気は根強く、市場全体の電動車への移行も進んではいない。モデルチェンジへの需要は充分にある

 一方、メキシコでは、「TSURU」の事例もあるように、マーチの人気は根強くあり、またe-Powerやリーフなど電動化についてはメキシコでの需要はまだ多くない。そのため、日産としてはメキシコでマーチのビックマイナーチェンジを施すという決断をしたといえるだろう。

 最も大きな特徴は、フロントマスクだ。マーチといえば、愛らしさ、やさしさを象徴する丸を基調としたヘッドライトを継承してきたが、それをVモーションのキリリとした面構えに刷新したのだ。

 インテリアについても、基本的な操作類の造形は維持しながら、コネクテッド技術を活用するためのモニターなど、若い世代に向けた先進技術のアピールを強めた印象がある。

 こうしたビックマイナーチェンジを受けたメキシコのマーチは、TSURUのように、これから少なくとも5年、いや10年近くに渡ってメキシコで新車として生き続けていくことだろう。

 なお、マーチの欧州市場車であるマイクラについて、ルノー・日産・三菱アライアンスはBセグメントでのBEV(電気自動車)専用モデルとして量産に向けた開発を行っていることを明らかにしている。

 日本人にとって長きに渡り愛されてきたマーチ。世界の国や地域で、新たなる時代に向けたさまざまな進化の時期を迎えている。

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