「東京都交通局2021経営レポート」で都営バスの系統別の各種ランキングと考察はすでに以前の記事で述べた。今回は都営バス全体と都営地下鉄の各路線を比較してみた。少々土俵が異なるかもしれないが、都営バス全体としてはどういう立ち位置にあるのかということご理解いただけるのではないだろうか。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
台数(両数)では圧勝!
都営地下鉄は浅草線・三田線・新宿線・大江戸線の4路線が営業中だ。都営地下鉄の全車両数は1190両。対して都営バスは1535台で圧勝だ。もちろん1両当たりの輸送人員が全く違うので比較に意味はないのかもしれないが、数字の上ではそうなっている。
年間の走行キロでは都営地下鉄が1憶2356万2千キロなのに対して、都営バスは4556万5千キロと半分にも満たない。この都営バスの走行キロは大江戸線単体での走行キロ4657万4千キロに近い数字だ。
年間の乗車人員は都営バスの1億8千万人は浅草線の年間乗車人員と等しい。1日平均の乗車人員50.1万人は新宿線と等しい。
肝心の収入は?
都営バスの年間の乗車料収入は284億円で大江戸線の279億円に近い。1日平均の乗車料収入7774万円も大江戸線の7644万円に近い。もちろん営業費用(支出)も多いので都営バス全体では差し引き96億1000万円の純損失になり、都営地下鉄全体では2082億9200万円の純損失になった。
2021年度はコロナの中での手探り運営だったので都営交通に限らずどの交通事業者も大変だったことは容易に察しが付く。
東京都交通局の事業の中で唯一黒字を計上したのが電気事業だ。水力発電所を持ち売電による収入がある。施設の老朽化により運営費用がかさむことはあるものの、9億1300万円の純利益をたたき出した。
都営地下鉄で黒字だったのは?
都営バスの系統別損益は別稿で述べた通り8路線しかなかった。都営地下鉄ではどうなのだろうか。2021年度という特殊な環境下だったということはあるものの、黒字なのは浅草線だけだった。
浅草線は4億円の利益で営業係数は98とかろうじて黒字だった。次いで新宿線が4000万円の赤字で営業係数は100なのでここまでがトントンといってもいいだろう。
三田線は7億円の赤字で営業係数は103、大江戸線は142億円の赤字で営業係数は134だった。営業係数は100円の収入を得るのにいくらかかったかという指標なので100を下回れば黒字ということができる。
前年比で最も乗降客減少率が高かった駅は?
都営地下鉄も都営バスに劣らず苦戦しているが、コロナの影響もあり都営地下鉄全駅で前年度比の1日当たりの乗降人員は減少している。では最も減少率が大きかった駅はどこだろうか。人数ではなく割合である。
前年度比がマイナス50%を超えたのが、大江戸線の汐留駅でマイナス52.3%、三田線の白山駅でマイナス51.1%だった。前年比半分以下だったわけだ。他には大江戸線国立競技場駅、大江戸線六本木駅、浅草線浅草駅など歓楽街や観光地の減少率がマイナス40%を超えて軒並み高い。
都営バスの経営状況
東京都交通局では多くの指標を公開しているが、都営バスの走行キロ当たりの収入は997円で全国の公営交通の平均値896円よりも高い。しかし走行キロ当たりの輸送原価が1039円(全国平均は918円)もかかるので赤字になる。
また利用者1回あたりの運行経費が187円と分析されていることから、一般路線の運賃210円はギリギリの線だろう。定期券は割引があるので全平均すれば1回あたりの運賃は運行経費を下回ってしまうのだろう。
結論は乗るしかない!
「東京都交通局2021経営レポート」で都営バスをはじめとする都営交通について3本の記事でいろいろな面を見てきたがコロナの影響によりなかなか厳しい戦いをしているのは明らかだ。
バスファン的な視点では「乗りまくるしかない!」で乗りバスすればいいのだが、マニアでもない方にはお買い物やレジャー等の外出時には積極的に都営バスに乗ることで、自分の足を支援・確保するわずかな一歩になるのではないだろうか。
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