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 2021年12月、トヨタ英国法人は「bZ4X」のグレード別価格を発表した。全部で6グレード、646万~794万円の価格帯となっている(1ポンド154円換算)。

 この価格帯、高いと見るべきか、妥当と見るべきか? 日産アリアの価格などとも比較しながら、bZ4Xの新車価格について考察してみよう。

文/桃田健史、写真/TOYOTA、撮影/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
初出:『ベストカー』2022年1月26日号

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■bZ4Xの欧州価格は700万円台に

 トヨタの英国法人が2021年12月15日、2022年にグローバル販売予定の新型バッテリーEV「bZ4X」のグレード別価格を発表した。同モデルの新車価格が公表されたのは今回が初めてだ。

 それによると、グレードは6つあり、エントリーモデルのFWD(前輪駆動車)として「Pure(ピュア)」が4万1950ポンド。1ポンド154円換算で、646万円となる。

 上級グレードの「Motion(モーション)」が4万5750ポンド(705万円)で、AWD(前輪駆動車)のX-MODE搭載車が4万8350ポンド(745万円)。

 また、もう一段上のグレードが「Vision(ヴィジョン)」でFWDが4万7650ポンド(734万円)、またX-MODE搭載で5万250ポンド(774万円)だ。

 そのほか、最上級グレードの「Premiere Edition(プレミアエディション)」はX-MODEのみの設定で5万1550ポンド(794万円)という値付けになった。

 この価格、日本のユーザーにとって高く感じるのか、それともトヨタ初のバッテリーEVとしては「許容範囲」という感覚で見るべきなのか? ちなみに、プラグインハイブリッド車のRAV4 PHVは英国で、3万4500ポンド(531万円)だ。

 今後、バッテリーなどの量産効果によってトヨタのバッテリーEV新車価格は、どのタイミングで、どの程度まで下がってくるのだろうか?

トヨタ bZ4X(画像はプロトタイプ車両)。サイズは全長・全幅・全高の順に4690mm、1850mm、1650mm。ちなみにRAV4 PHVは4600mm、1855mm、1685mmだ

■高い? 許容範囲? bZ4Xの新車価格について考える

 さまざまな観点から、bZ4Xの新車価格について考えてみたい。まずは、改めてトヨタの動きから見ていこう。

 今回、トヨタの英国法人がbZ4Xの新車価格を発表したのは、トヨタ本社が「バッテリーEV戦略に関する説明会」をMEGA WEB(東京都江東区)で開催した翌日だった。

 その説明会を現地で取材していた筆者を含めたメディアが一斉に驚いた。オンラインでライブ会見を視聴していた、または同日夜にテレビの全国ニュースで報じられた内容を見たユーザーにとって、想定以上の驚きがあったに違いない。

 なにせ、「近年中に量産する予定」(豊田社長)と明言したトヨタ車が12モデルとレクサス車が4モデル、コンセプトモデルと量産車が合計16モデルもお披露目されたのだから。

 これら16モデルのうち、量産車はbZ4Xのみだ。また、レクサス初の量産型EVとしてRZについてはテスト車両の走行風景が動画で流れた。

 bZ4Xの直接的な仲間としてbZシリーズから登場したのは、bZ Compact SUV、bZ Small Crossover、bZ SDN(セダン)、そしてbZ Largeの4台だ。

 これら各モデルが、ヤリスクロスーバー、C-HR、カローラ、そしてクラウンといった現行車の後継モデル、または併売モデルという見方ができるかもしれない。

MEGA WEBで「バッテリーEV戦略に関する説明会」を開催。トヨタ車が12モデルとレクサス車が4モデルがお披露目された

■「EV戦略の中核モデル」という位置づけから考えるbZ4Xの価格

 そのうえで、bZ4Xとはまさに、トヨタのバッテリーEV事業戦略の中核モデルだといえる。

 となると、新車価格については初代モデルとして少なくとも5年程度(2027年頃まで)は、日本のみならずグローバルでのバッテリーEV市場でのベンチマークとなるべく、トヨタは最終的な値付けを決めているはずだ。

 状況としては、1990年代後半にプリウスが登場した時に似ていると思う人がいるかもしれない。

 ただし、プリウスの場合、市場導入時点ではジャーマン3(ダイムラー、BMW、VWグループ)やデトロイト3(GM、フォード、クライスラー「当時」)にとって、プリウスは「トヨタの飛び道具」という特殊な存在という見方が強かった。

 そうした状況にあることをトヨタも充分認識していたため、その後の量産効果におけるコスト削減についても、正確なロードマップを描くことが難しかったという経緯がある。

■「KINTO ONE」を有効活用したトヨタの戦略

 一方、今回のbZ4Xでは、bZシリーズやレクサスを含めた多彩なバッテリーEVラインナップの量産計画を想定しているため、グローバル市場の今後の動きを注視しながらも、コスト削減に向けた道筋は、トヨタとして立てやすいのではないだろうか。

 それでも、バッテリーEVにかぎらず新車販売を好調に維持するために重要なことは、リセールバリュー(下取り価格/再販価格)を高めることだ。

 要するに、需要と供給のバランスをメーカーやディーラーが実質的にコントロールして、人気を高めるということだ。

 そのため、bZ4Xが初代モデルのうちに、マイナーチェンジや年次モデル発表などのタイミングで、段階的に新車価格が下がっていくというシナリオは想像しにくい。

 そう考えると、bZ4Xは日本では「KINTO ONE」を活用したサブスクリプションモデルを主体とするなど、ユーザーにとってはリセールバリューへの心配が少なく、またトヨタにとっても市場における資産管理として「手の内化」することが優先されるように思える。

 搭載バッテリーのリセールやリユースなどを考慮すると、なおさらサブスクリプションモデルとの相性がよさそうだ。

 bZ4Xのサブスクリプションモデルを通じて、テスラや日産などEV事業でトヨタを先行するブランドに対するトヨタの戦略がハッキリ見えてくるのではないだろうか。

■英国販売価格と大きな差異が生じるとは考えにくい 気になるのは日産アリアとの競争

 英国市場において、他ブランドのEV価格を見てみると、VWのI.D.4が3万4995ポンド(539万円)から、テスラのモデル3が4万4490ポンド(685万円)から、そしてモデルYが5万4990ポンド(839万円)という設定だ。

 これらと搭載バッテリー量などを含めて比較すると、bZ4Xの新車価格は妥当ともいえる。

 bZ4Xについては、日本販売価格は英国販売価格と大きな差異が生じるとは考えにくい。そうなると、やはり気になるのは日産アリアとの競争だ。

 日産はすでに日本国内でアリアの予約販売を始めているが、エントリーモデルのB6(2WD)は539万円と、bZ4Xの英国仕様価格と比べて107万円も安い。

 搭載するバッテリー容量が、アリアB6(2WD)では66kWhで満充電の航続可能距離は470kmに対して、bZ4X Pure FWDは71.4kWhで500km前後としており、アリアB6に対して基本スペックで優位な面がある。

日産のピュアEV、アリア。サイズは全長・全幅・全高がそれぞれ4595mm×1850mm×1655mmと、bZ4Xとほぼ同じサイズと言っていいだろう。エントリーモデル・B6(2WD)の価格は539万円だ

■価格はアリアに軍配? だがトヨタにとっての最重要事項はbZ4Xの位置付けと普及となるはずだ

 だが、筆者の予想のように、bZ4Xの日本仕様価格が英国仕様価格との差がないとすると、アリアB6のほうにお得感を持つユーザーが当然出てくるだろう。

 かといって、トヨタが対日産だけを意識した新車価格設定を最重要視するとも思えない。肝は、トヨタ・レクサスのバッテリーフルラインナップ化に進めるなかでの、bZ4Xをどう位置付け、サブスクリプションモデルを含めてどう普及させるかにあるはずだ。 

 それから、EV購入補助金についてだが、あくまでも本格普及を目指すための時限立法的な措置であり、普及拡大と反比例するように補助金は縮小され、そのうちなくなるのは当然のことだ。中国政府も一時、そうした制度設計を施してきた。

 いずれにしても、bZ4Xは日本メーカーのみならず、グローバルにおいて、バッテリーEVの普及の仕方(売り方・買い方)のベンチマークとなることは間違いなさそうだ。

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