もっと詳しく

 先日、宅急便のモニター車の電気トラックの取材でヤマト運輸の広報の人とご一緒した時のこと。「モニター車は新しいマークですけど、こっちの現行車はまだ従来のマークのまんまなんでよね」。

 何のことかといえば、ヤマト運輸が昨年4月1日から採用したシンボルマーク、お馴染みの子猫を咥えた黒猫のシンボルマークの話でした。

 現在は、新しいマークに置き換わる過渡期なので、新旧のクロネコマークが見られるのですが、64年間使用してきたクロネコマークにはヤマト運輸の苦難の歴史が刻まれています。

 特に1970年代後半には、ヤマト運輸の宅急便の隆盛をみて、これまで見向きもしなかった大手運送会社が次々と宅配便事業に参入。そのシンボルマークがペリカン、イヌ、カンガルー、小熊などだったことから「宅配便動物戦争」などと称されました。

 中でも、実績ある日本運送の社名を変更してまで宅配便に新規参入したフットワークエクスプレスは、ヤマト運輸をライバル視。そのシンボルマークが赤いダックスフンドだったことから、黒猫VS赤犬の戦いなどと呼ばれました。

 そのフットワークエクスプレスも玉砕し、今や宅急便は文字通り宅配便の代名詞。そんなヤマト運輸の歴史をシンボルマークから読みといてみました。

文/フルロード編集部 写真/フルロード編集部・ヤマトホールディングス


■ヤマトHDのシンボルマークの歴史と新しいクロネコマーク

 現ヤマトホールディングスは、宅配便などを手掛けるヤマト運輸を中核とするグループ企業で、1919年創業の大和運輸株式会社が始まり。

 100年以上の歴史のある老舗企業だが、「クロネコヤマトの宅急便」のキャッチフレーズで知られる宅配事業がスタートしたのは今から約46年前の1976年のこと。

 その宅急便のポップアイコンとして親しまれてきた親子猫のクロネコマークは、実は宅配事業がスタートする約19年前の1957年から使用が始まっている。

完成当初のシンボルマーク。当時のキャッチコピーは「まかせてあんしん」だった

 このデザインは、同年に業務提携を結んだアメリカのアイランド・ヴァン・ラインズ社のシンボルマークが元になったとされている。

 アイランド・ヴァン・ラインズのシンボルマークにはクロネコマークと同じ子猫を咥えた親猫があり、マークに込められた「careful handling(丁寧な荷扱い)」の意味に創業者・小倉康臣が共感。同社より使用許諾を得て、今では日本人の誰もが知るクロネコマークが制定されたのである。

 ちなみに、ヤマトHDの正式な社章は「桜にY」のマークだが、クロネコマークは1985年より準社章という扱いになっている。ヤマトにはクロネコマークのイメージが定着しているが、宅急便が始まる以前のトラックには桜にYのマークが刻印されていた。

新しいクロネコマークが備わったヤマトの超低床ウォークスルーBEV

 64年間使用されたヤマトホールディングスのシンボルは、2021年4月1日より新しいクロネコマークに変更され、徐々に新マークに置き換わりつつある。また、同時期に新たにアドバンスマークも新設、社名のロゴタイプも同時に変更されている。

 クロネコマークが変わったとはいっても、従来の親子猫は踏襲されているので、気づいていない人も多いかもしれない。新デザインは猫の耳や顔の輪郭、手足をよりシンプルにしたものになっている。

2021年4月1日に新設されたヤマトのアドバンスマーク

 新しいクロネコマークについてヤマトHDは、

「親ネコが大切に子ネコを運ぶ『クロネコマーク』は、1957年以来『安心・丁寧』のシンボルとして、お客さまに信頼いただけるマークとなるよう、全社員で大切に育んできました。その『クロネコマーク』に込めた想いを変えることなく、都市や街、地域の環境により調和し、溶け込みながら、日々重ねてきたサービスをさらに進化させていく意思の表明として、より未来志向のデザインに磨き上げました。」

と語っている。またアドバンスマークの新設については、

「新マークは、これからの時代に求められるサプライチェーンの変革に向け、個人、地域のお客さまはもちろん、法人のお客さまの経営を支援するパートナーを目指す、また、サステナビリティへの取り組みを強化し、社会インフラの一員として、社会課題を解決する物流のエコシステム創出を目指す、という新たなヤマトグループの意思と、ビジョンを表すシンボルです。」

とのことだ。

 新しいクロネコマーク、皆さんはどう思いますか? 個人的には猫ちゃんの顔が丸くなったことで可愛さがアップしたかなと思います。余談ですが、クロネコマークは人によって四つ目の妖怪に見える人もいるようですよ!

投稿 マークが新しくなったのを知っていますか? 動物戦争を勝ち抜いたヤマト運輸のクロネコマークの秘密に迫る!自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。