令和4年(2022年)4月1日、から、令和4年5月以降に発売される新型車に「バックカメラ」が義務化される。
現在継続生産されているモデルに関しては令和6(2024)年5月まで適用は延長され、現状では新車のみの装着が義務化されることになる。
バックカメラは、一度味わってしまうと未装着のクルマが煩わしく感じるほど便利な装備だが、本当に必要なのか? 過剰な装備だ、という意見もある。
本企画では、バックカメラの今はどうなっているのか? また後付けバックカメラは法令違反にならないのか? 最新バックカメラ事情をお届けしたい。
文/岩尾信哉
写真/国土交通省、トヨタ、日産、三菱、スバル、Adobe Stock
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■バックカメラの義務化は後退事故防止の国際基準に準拠したもの
令和3(2021)年6月に国土交通省は、車両後退時の事故防止のための国際基準を導入することを発表した。
道路運送車両の保安基準等及び保安基準の細目を定める告示等の一部改正について、「後退時車両直後確認装置に係る協定規則(第158号)」が国際連合欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において新たに採択されたことなどを踏まえ、我が国においてもこれらの規則を導入するとともに、改正された他の規則を保安基準に反映させることなどを目的として保安基準の改正等を行います」としていた。
実はこの安全装備の基準の導入を提案して推し進めたのは日本であり、いち早く導入されることになった経緯があるようだ。
細かい規則を見てみると、以下の「自動車(二輪車を除く)に後退時、運転者が運転者席で自動車の直後を確認できる後退時車両直後確認装置を備えることを義務付ける」という文言に注意しつつ確認しておきたい。
今回の保安基準等の主な改正項目の細目を抜粋すると、
「車両後退時における事故を防止するために、車両直後を確認できる装置の要件に適合する後退時車両直後確認装置(バックカメラ、検知システムまたはミラー)を、自動車に備えなければならないこととする」とある。
基本的には目視による確認が必要だが、「バックカメラ」により具体的に確認しなければならない車両直後のエリアの範囲は、前左図のように、高さ0.8m、幅0.3mの障害物を確認できる、車両の全幅の範囲で後方に伸びる最大3.5mまでの長方形のエリアを指す。
まず確認したいのが、この改正法に該当するのが二輪車を除く「自動車」であることだ。すなわち、乗用&商用、軽自動車、商用トラックなどを問わず、車両全般に適用される広範囲な法規制ということになる。
これには乗用系車両の駐車時や商用トラックが作業現場での移動時など、ヒトが車両後部に立っていたり、通過するような場合(特に幼児や児童、低く背中をかがめた状態のお年寄りなどは要注意)、車両後方の直視できない場所に位置するような場合などでの事故を防止する意図がある。
たとえば、法令文中の検知システムとしては、最近では車両のコーナーや前後に装着される場合が多い超音波ソナー(センサー)がある。これを装備すれば、警報音と組み合わせられることで該当する機能となる。
超音波を発射して対象物からの反射の時間を測定して距離を計測する、すでに馴染みのあるこのセンサーの測定距離は約10m以下と、検出範囲がミリ波レーダーなどの測距センサーよりも狭いという特徴があり、低速で移動時にカメラなどと併用されている。
カメラ単体などセンサー類の設置位置は規定されていないが、小型カメラはテールゲートの取っ手のくぼみ部分やリアスポイラーの下部、ナンバープレートの上部付近に取り付けられていることが多い。物理的に上記のような車両「直後」を確認するには、設置位置は自然と限定されることになる。
■日本で普及が進む「バックカメラ」
現状として日本メーカーは多くの車両で、バックポジションの選択時に連動する後方視認用カメラと車内に設置されたモニターを通じて車両後方の状況を確認可能として、後退時の事故防止や駐車時や車庫入れなどの際に利用可能な「バックカメラ」機能を、多くのモデルで標準装備としている。
ちなみに、現在では商用のトラックやトレーラーヘッドなどでは、アフターパーツの後付けも含めて安全装備として普及していることも見逃せない。
バックカメラの多機能化は進んでおり、乗用系車両でもナビゲーションシステムや後退時のバックモニターとして、駐車時のブレーキサポート機能などと組み合わされている。
さらにトヨタでは、雨滴除去機能付きの「マルチビューバックガイドモニター」が用意され、機能的にも標準ビュー/ワイドビュー/ワイドビュー+トップビューのモニター上での表示切り替えが可能となった。
輸入車でも、メルセデス・ベンツやBMWなどの輸入車はリアビューカメラとして採用してドライブアシスト機能に装備している。ちなみに、メルセデス・ベンツの車両ではリアエンブレム部分が開いてカメラが出てくるといった仕掛けが与えられ、「パーキングアシストリアビューカメラ」と呼ばれている。
■純正バックカメラの後付けは難しい?
バックカメラは、現在新車では純正品として装備され、ナビゲーションシステム用ディスプレイなどとともに、メーカーおよびディーラーオプションの設定で5万~10万円ほどで取り付けることができる。
たとえば日産のノートでは後部の単体カメラを「バックビューモニター」として純正ナビゲーションシステムとともにディーラーオプション設定している(価格は3万8000円、取り付け費・消費税込)。
とはいえ、セレナでは後部カメラ用の配線を設定しつつも、カメラ単体での設定は見られないといったように、車種ごとの設定方法が変わるので注意が必要だ。
メーカーに後付け対応について問い合わせてみると、今回の法改正では対象は新車なので慌てて所有車に後付けする義務はないので、基本的にはディーラーで旧モデル用などの純正バックカメラ単体を、所有車に後付けするようなことは簡単ではなさそうだ。
■アフターパーツは豊富でも……
たとえば新車でなくても、所有車の純正ナビが旧式になって、社外品に買い換えたい場合に、純正品と手軽なアフターパーツ、どちらのバックカメラを選ぶべきか考えるユーザーもいるかもしれない。
後付けのアフターパーツとしてカメラ&モニター(ハーネス)をセットとして販売される製品をみると、価格は2000円(主に海外製品)から1万円程度まで(工賃含まず)、小型カメラの解像度などの性能、ルームミラー型などモニターの形式やサイズなどによって変化する。
配線作業が不要となるワイアレス機能付きの製品や前後左右でカメラ4台を装着するような商品もある。接続ハーネスはアフターパーツで1000円程度だ。ともかくバリエーションが豊富なだけに価格などのバラツキが大きく、選択には苦労するはずだ。
いっぽう、各メーカーがディーラーオプションとして設定している純正ナビゲーションシステムを手がけるような大手メーカー製であれば、取り付け可能であれば2万円前後で見つかる。
ただし、純正ナビに一般的な社外バックカメラをつなぐためには、専用の変換アダプター(ハーネス付き)などを利用するケースがほとんどだ。
問題はむしろ工賃で、アフターパーツ量販店で購入して取り付けるのであれば、車種にもよるが設置が簡単な小型カメラとハーネス部品を使用した場合は、前述のように1万~1万5000円で済むはず。
ただし、配線作業、バンパーやパネル加工などが加わってしまうと、場合によっては取り付け工賃が増加してしまう可能性もある。
このようにアフターマーケットに出回っているバックカメラには、レンズ単体に近い小型品や車種を指定した専用品、ボディの加工を必要とせずナンバープレート付近にはめ込むタイプなど多くの種類がある。
それでも自らの手で後付けするのは難しく、プロに依頼したほうがよいだろう。なにより、取り付けに関しては画像が正常に映るように調整する必要があり、素人には取り扱いが複雑な配線作業があればそう簡単には行かないからだ。
加えて、正確に画像(映像)が表示されるためには、カメラについては画角の広さと画質をチェックしておきたい。
バックカメラには、標準レンズと広角レンズを使用する製品があり、標準レンズは肉眼に近い画角の画像になるため後方にある障害物などとの距離感は掴みやすいが、視認できる範囲が狭いため確実に目視で確認するべきだろう。
いっぽう、広角レンズは視認範囲が広いため後方の死角が少なくなるものの、肉眼とは見え方が異なるので距離感を把握するには慣れが必要になる。
画質に関しては、夜間でもある程度鮮明な画像が得られる30万画素以上のものがあり、赤外線センサーやLEDライトが付属する製品であれば、夜間でも後部を明るく照らせるので画像が見やすくなる。
■後付けはあくまで慎重に
今回の法改正によって新車での装着が義務化されれば、多少なりともセットオプションなどを含めて、新車の価格設定に反映されることが予想される。モニターが標準装備に設定されることから、ナビゲーションシステムの設定も影響を受ける可能性もある。
またバックカメラは保安基準を守らないと取り付けができないので注意が必要だ。外装表面に「曲率半径が2.5mm未満である突起」があると保安基準に違反。バックカメラが剥き出しにならないように、リアガーニッシュ下部に取り付ける必要がある。
車検整備に関してもバックカメラの映像がモニターに正確に映し出されるかどうかが点検の対象になる可能性が高く、手間がかかるようになることも想定される。後付けについての動きに関しては、全体の推移を慎重に見守ることが必要だろう。
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