富士スピードウェイで行われた2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦決勝。3番グリッドからスタートした笹原右京(TEAM MUGEN)は、スタート時のエンジンストールで一時最後尾まで後退も、そこから怒涛の追い上げをみせて10位入賞。終盤には小林可夢偉(KCMG)と白熱した接近戦を繰り広げるなど、見せ場を作った。
前日の第1戦決勝ではポールポジションを獲得する速さをみせた笹原。第2戦の予選では、調子の良さからさらに欲をかいたことが裏目に出てしまい、2日連続のポールポジション獲得とはならなかった。
それでも3番グリッドを手にし、ノーポイントに終わった第1戦決勝のリベンジに臨んだが、スタート時にまたしてもエンジンストールを起こしてしまった。
「正直、何が起きたのかさっぱりわからない状態でしたが、(症状は)同じでした。第1戦のあとにエンジニアをはじめいろいろな人と話し合い、(第2戦は)最悪ポジションを落としてでも確実に発進しようという考えで、ゆとりを持ってスタートをきったつもりでした。ですが、まさか同じことが起きるとは思いませんでした」
「(第2戦の)レース後にチームと話しましたが、どうやらメカニカル関係で何かが起きているかもしれないと。チームとともにしっかりと原因究明をしたいと思います」
2日連続で、予選で獲得したポジションを失うかたちとなってしまった笹原だが、今回は序盤にセーフティカー(SC)が入ったことで、他車との間隔が縮まった状態で再スタートをきることができた。そこからは、一心不乱にポジションアップだけを考えて走ったと笹原は話す。
「一番後ろまで下がってしまったので、オーバーテイクシステム(OTS)もタイヤも使ってフルプッシュしました。タイヤのライフとかも考えずに、追い上げるしかなかったです。タイミングよくポジションを上げることもできましたし、途中のピットストップでチームがものすごく速い作業をしてくれて……本当に助けられました」
こうして最後尾からポジションを上げ、26周目には10番手に浮上した笹原。さらにポジションを上げようと試みるが、そこに立ちはだかったのが可夢偉だった。
あの手この手を使って前に出ようと試みる笹原だったが、可夢偉が巧みに笹原の動きを封じ込めポジションを死守する。そのバトルは10周以上にわたって続いたのだが、そのなかで徐々に可夢偉の術中にハマっていってしまう雰囲気があったという。
「可夢偉選手に追いつくところまでは良かったんですが、そこからはタイヤも使い切っていたり、OTSもかなり使っていた後だったので、可夢偉選手を相手に手を打つのが難しい状況でした」
「各コーナーでバトルを展開しましたが、可夢偉選手がこちらの要点を理解しているのかなと。こちらがどういう状況だとか、相手の強みと弱みをしっかりと把握している感じでした。物事を俯瞰で見ていられる姿勢があって、すごいなと思いました」
「ディフェンスの際の動きも、良い意味で“嫌らしい”感じで、なかなか抜きづらかったです。その辺のクルマの位置どりだったり、動かし方というのは他のドライバーとは違い、やはり世界の舞台で戦い、引き出しをたくさん持っている選手だなと思いました」
なかなか突破口を見出せない状態が続いた笹原だが、ポジションを上げたいという気持ちが消えることはなかった。TGR(1)コーナーでは何度もオーバーテイクを試みたが、ブレーキングで膨らんでしまう場面もあったほか、34周目のメインストレートでサイド・バイ・サイドになっている際にお互いのタイヤが一瞬接触する場面もあった。ギリギリのところで可夢偉が回避したため、事なきを得たが、この行為に対して笹原には黒白旗が提示された。
「可夢偉選手の方がストレートエンドの伸びが良かったので、サイドスリップを使って、前に出切ったかたちでTGRコーナーに入らないといけないと思っていました。激しく争っているなかで、相手を故意に弾き飛ばしたり、押したりしようという気持ちはないですし、それは安全に関わることなので、重々配慮していました」
「ただ、状況としてお互いに(バトルで)熱くなっていたところもありました。僕は後ろから仕掛けていく立場でしたので、あれは申し訳なかったと感じています」
あの手この手を使いポジションアップを試みた笹原だったが、結局可夢偉の前に出ることは叶わず、10位でフィニッシュとなった。ただ、可夢偉とのバトルは非常に良い経験になったと振り返る。
「僕も抜きにいくにあたって引き出しはいくつか持っていましたが、その場面ごとで、出した引き出しが間違いだったなと思いました。でも、相手をそういうふうにさせるのも可夢偉選手のうまいところだなとも思います。今回はすごく勉強になりました」
2レース開催となった今週末、多くのことを経験した笹原だが、なかでも初めてのポールポジション獲得は、自身にとっても大きな収穫となったようだ。
「まず、ポールを獲得できたことはすごく良かったです。このスーパーフォーミュラというカテゴリーで一番速く走れるということは、自信になりました。決勝でもオーバーテイクを含めてさまざまな経験ができました。レースペースに関しても非常に良かったです」
「なにより今年の参戦に当たって、協力をしてくださった方、声を上げてくださった方に結果で返したいという思いがあります。決勝でしっかりとスタートをきって、決勝の結果で恩返しをしたいと思います」
「課題は多いですけど、今後に向けた見通しという部分では、めちゃくちゃ収穫がありました」