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AMDでは2022年4月15日より、Ryzen 5000シリーズのミドルレンジモデルを3モデルリリースする予定としていますが、今回海外のサイトから発売前のレビューが掲載、Ryzen 7 5700、Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500のベンチマーク結果が掲載されています。

Ryzen 5000シリーズ初のミドルレンジモデル

AMDでは2020年末頃にRyzen 5000シリーズを発表しましたが、当時は比較的価格が高いRyzen 5 5600XやRyzen 7 5800X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 9 5950Xの4モデルのみを発売しており、2022年1月頃からIntelが発売開始したAlder Lake-Sのミドルレンジモデルに対抗できるモデルが無い状態が続いていました。

そんなAMDですが、3月15日にRyzen 5000シリーズに追加でラインアップされるRyzen 7 5700X、Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500を発表し、日本では4月15日から発売が開始されると公式発表がされています。

CPUモデル 搭載CPU世代 コア数/スレッド数 価格(米ドル) 日本円 ベース ブースト キャッシュ (L2) キャッシュ (L3) TDP
AMD Ryzen 7 5800X3D Zen3 Vermeer-X 8コア/16スレッド $449 US 58,828円? 3.4 GHz 4.5 GHz 4 MB 64 MB + 32 MB 105W
AMD Ryzen 7 5800X Zen3 Vermeer 8コア/16スレッド $449 US 58,828円 3.8 GHz 4.7 GHz 4 MB 32 MB 105W
AMD Ryzen 7 5700X Zen3 Vermeer 8コア/16スレッド $299 US 42,800円 3.4 GHz 4.6 GHz 4 MB 32 MB 65W
AMD Ryzen 5 5600X Zen3 Vermeer 6コア/12スレッド $299 US 39,380円 3.7 GHz 4.6 GHz 3 MB 32 MB 65W
AMD Ryzen 5 5600 Zen3 Vermeer 6コア/12スレッド $199 US 28,800円 3.5 GHz 4.4 GHz 3 MB 32 MB 65W
AMD Ryzen 5 5500 Zen3 Cezanne 6コア/12スレッド $159 US 23,300円 3.6 GHz 4.2 GHz 3 MB 16 MB 65W

今回、発売日が発表されると同時に、海外の一部サイトにてRyzen 5000シリーズの新モデル、Ryzen 7 5700X、Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500のベンチマークが掲載されました。

シンセティックとゲーミング共にAlder Lake-Sが優位。ただしTDP差があるため注意は必要

今回ベンチマークが掲載されたのは中国や韓国、アメリカの複数サイトですが、Ryzen 7 5700X、Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500の3モデルが取り上げられているサイトは少なく、また比較対象となるCPUもCore i5-12400Fまでとあまりベンチマークを取る時間が無かったかのような組み合わせになっています。

ここではRyzen 7 5700XはCore i5-12600Kと比較した結果が掲載されているHothardwareとQuazarZone、Ryzen 5 5600とRyzen 5 5500はCore i5-12400とCore i3-12100を比較しているToms Hardwareの情報を紹介します。

Ryzen 7 5700X

Added Ryzen New Menu! Benchmark | for the R7 5700X, R5 5600 and R5 5500 benchmark > Quasarzone


Ryzen 7 5700XについてはCinebench R23やCPU-ZなどのシンセティックベンチマークにおいてはRyzen 7 5700XはCore i5-12600Kに対しては約20%ほど差を空けられている状態になっているものの、Core i5-12400Fに対してはCinebench R23では10%優位、CPU-Zでは20%優位なスコアが記録されています。

Core i5-12600KについてはTDPが最大125WであるためTDP 65WのRyzen 7 5700Xはワットパフォーマンス面においては善戦しているという見方は出来そうです。



ゲーミング時のベンチマークは有名所ではELDEN RINGやRoreza Horizon 5、League of Legendsなどをここでは取り上げますが、他にも多くのゲーミング時のベンチマークがQuazarZoneにて取り上げられています。

スコアとしてはForza Horizon 5やLeague of LegendsなどではRyzen 7 5700XとCore i5-12600Kの差は2%程度でForzaではRyzenが優位、LoLではCore i5が優位とCPUへの最適化度合で差が出ているとも言えるようなスコア差になっています。Elden Ringに関してはCore i5-12600Kの方がRyzen 7 5700Xより7%上回るスコアにはなっているものの、こちらも最適化の違いがスコア差に表れている可能性はあるようです。

Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500

AMD Ryzen 5 5600 and 5500 Review: Firing Back at Alder Lake | Tom’s Hardware



Ryzen 5 5600とRyzen 5 5500のシンセティックベンチマークはCinebench R23とHandbreakにおけるH265エンコードをここでは取り上げますが、Toms Hardware上では他にVRAYやH264、FLACなど様々なベンチマークも行われています。

Cinebench R23においてはシングルコア性能ではRyzen 5 5600および5500ではライバルであるCore i5-12400、Core i3-12100に対して10%以上の差があります。一方で、マルチコア性能においてはRyzen 5 5600はCore i5-12400に対して同等の性能を発揮し、Ryzen 5 5500についてはCore i3-12100を26%上回るスコアを出しています。

H265のエンコードにおいてもCinebench R23のスコアと結果は似ており、Ryzen 5 5600とCore i5-12400のスコアは同等、Ryzen 5 5500はCore i3-12100を20%ほど上回るスコアを記録しています。

Cinebenchや動画エンコードでは良好な結果を出していたRyzen 5 5600と5500ですが、ゲーミング時のベンチマークになるとRyzen 5 5500だけ若干傾向が変わってきます。Ryzen 5 5600とCore i5-12400ではゲーミング時のパフォーマンスはシンセティックベンチマークと同様に同等性能と言える範囲に収まっており、大きな差は出ていません。一方でRyzen 5 5500についてはシンセティックベンチマークではCore i3-12100に20%以上優位なスコアを出していたもののゲーミング時のパフォーマンスでは6%下回るスコアが記録されています。

ここまで大きくスコアが異なる背景としてはRyzen 5 5600では32MBのL3キャッシュを搭載するZen3 Vermeer が搭載されている一方で、Ryzen 5 5500ではL3キャッシュが16MBに縮小されているZen3 Cezanneが搭載されています。このL3キャッシュの大きさでゲーミング時のパフォーマンスには大きな差が生まれていると見られています。

Alder Lake-Sと比べるとコスパは微妙。一方で初代Ryzenからの乗り換えには最適。

Ryzen 7 5700X、Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500についてはAMDからメーカー希望小売価格が発表されています。

CPUモデル メーカー希望小売価格(税込み)
AMD Ryzen 7 5700X 42,800円
AMD Ryzen 5 5600 28,800円
AMD Ryzen 5 5500 23,300円
Intel Core i5-12600KF 38,290円
Intel Core i5-12600 32,750円
Intel Core i5-12400F 24,530円
Intel Core i3-12100F 14,980円

ただ、メーカー希望小売価格であるため高めには出ていますが、コストパフォーマンス面ではAlder Lake-Sに対してかなり苦戦を強いられそうな状態と言えそうです。

Ryzen 7 5700Xは42,800円で性能面はCore i5-12600KFよりは低く、同じTDP65WとなるCore i5-12600が最も近い性能のライバルモデルと見られています。一方で価格面では性能がより高いCore i5-12600KFでも38,290円と4500円ほど高価でコストパフォーマンス面で見ると劣った状態になっています。

また、Ryzen 5 5600やRyzen 5 5500においても同様の傾向が見られ、Core i5-12400Fと性能が同じRyzen 5 5600に対しては4300円程、Ryzen 5 5500はCore i3-12100Fに対してゲーミング時のパフォーマンスでは差が大きくないものの8300円近くの価格差が存在するなどコストパフォーマンスを求める方であればAlder Lake-Sを購入した方が良いという判断になりそうです。

一方で、初代Ryzenなどを利用しており、これからCPUをアップグレードしたいというユーザーにとっては少々話が変わってきます。Ryzen 5000シリーズでは従来までは2019年に発売開始された400シリーズマザーボードまでしか正式に対応しておらず、初代Ryzenと同時に登場した300シリーズマザーボードには非対応となっていました。

しかし、今回のRyzen 5000のミドルレンジモデル追加と共にAMDでは300シリーズマザーボードでもRyzen 5000シリーズ対応とする事が発表されました。そのため、初代RyzenやZen+ Ryzenなどと組み合わせて300シリーズマザーボードを持っているユーザーもRyzen 5000シリーズに乗り換える事が可能となっています。

そのため、初代RyzenやZen+ Ryzenなどからパフォーマンスを大幅に上げたいという方であれば、今回登場したRyzen 7 5700XやRyzen 5 5600、5500はマザーボードの総入れ替えまでのコストを考えると安価に収まっているためそのようなユーザーにとっては今回のRyzen 5000シリーズは最適な選択肢とも言えそうです。

今回登場したRyzen 5000新モデルは当初2021年初頭にリリース予定だった?

2022年4月15日から発売が開始されるRyzen 5000シリーズのミドルレンジモデルですが、これらのCPUはどうやら2020年頃から生産されており、AMDでは2021年初旬に発売を予定していたのでは無いかと見られています。

というのもMEGAsizeGPU氏によると、一部のRyzen 5 5600などではCPUの刻印が『2020 AMD』と記載がされており、CPU-Zなどに掲載されているCPUステッピングも古いB0となっています。

AMDとしては当初はRyzen 5000シリーズのハイエンドモデルを登場させた後に今回登場したミドルレンジも2021年頃に発売する予定だったものの、当時は半導体不足でTSMC 7nmのキャパシティーは不足、またRyzen 5 5600Xなどは非常に好調な売り上げを記録していたことからわざわざ利益の薄い価格を下げたモデルの市場投入をする必要性は特になく、その結果これらミドルレンジモデルは2022年4月に発売になったと考えられます。

 

Ryzen 7 5700XやRyzen 5 5600、5500はRyzen 5000シリーズとしては待望のミドルレンジモデルとなっていますが、メーカー希望小売価格とパフォーマンスを見る限りAlder Lake-Sに対抗するつもりは無く、初代RyzenユーザーをAlder Lake-Sへ流れるのを防ぐための商品のように見えます。

AMDでは今後Ryzen 3 5100などエントリー向けのRyzen 5000シリーズも発売予定のようですが、今回のベンチマークや希望小売価格を見る限りAMDでは闇雲に安く売ってシェアを稼ぐというよりは、既存のAMD顧客を囲い込んでシェアを維持する方向のようで、本格的な反転攻勢に出るのはZen4 Ryzen 7000シリーズからなのかもしれないですね。正直、AMDとしてはサーバー向けCPUのEPYCでかなり儲かっているのコンシューマー向けCPUのシェアがIntelに奪われているからと焦ってAMD CPUは安いというイメージをまた付けたくないという思惑もありそうですね。

Intel Core i5 プロセッサー 12600K 3.7GHz( 最大 4.9GHz ) 第12世代 LGA 1700

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