スーパーフォーミュラ2022シーズンの開幕が近づいている。1月にホンダから発表されたTEAM MUGENの体制は野尻智紀の1台エントリーだった。
しかし2022年3月、TEAM MUGENから笹原右京の追加エントリーが発表された。フル参戦が決まった状態での参戦は初めてという笹原右京に段純恵氏が直撃インタビュー!
文/段 純恵、写真/SPJ-JS、HONDA
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■開幕直前のフル参戦決定
開幕前からフル参戦が決まった状態でスーパーフォーミュラに出場するのは今回が初めてです。2020年は最終戦まで出場したけど、最初から年間で決まっていたわけじゃなく、本当にいつどうなるかわからない状況でしたし、去年も開幕2戦だけの出場でしたし。
この代役記録、今後も塗り替えられることはないと自信を持って言えそうです(笑)。
代役で乗るのって、会場入りの瞬間から映画『24』のようにカチッとスタートして、どんどんカウントダウンされていくイメージです。
土日の二日間、48時間の中で自分がいかに何かを残し、何かを証明し、次につなげられるかということを全部完結しなければならない。『もうこれが最後かもしれない』って思いながら、他人の服を着て、いきなりそこにあるクルマに乗ってレースをする感じです。
去年のダンディライアンさんは、自分がレギュラーで乗るかのように本当に手を尽くしてくださいました。ただ同じワンメイク車両でも、チームによってこれでもか! というくらいマシンの感触が違う。
今回、無限さんのクルマに乗って改めてそれがわかりました。マシンの深いところを知るためには、やはりどうしても時間が必要ですね。
僕、SFのルーキーテストって今まで一度も参加したことがないんです。2016年にホンダさんのスクール、SRSフォーミュラに入校してスカラシップを獲ったんですが、2018年末にホンダの育成から外れました。
2017年のF4でも2018年のF3でもスクールの同期に負けたことがなかったので『なんで?』と思う部分はありましたが、それを引きずるわけにはいかない。じゃあどうする? ってところに気持ちをすぐ切り替えました。
2019年のポルシェ・カレラカップやアジアンF3、SRS時代の2016年に欧州F3にスポット参戦できたのも、すべて自分を支えてくださるパートナーの方々の応援のお陰です。
■ポールポジションと優勝は絶対に獲りたい
2020年スーパーGTにチーム無限から参戦することになった経緯は、僕も詳しいことはわかりません。無限さんから『GT500に乗らないか』と電話がきたんです。僕のことを見てくれる人はきっとどこかにいると信じてはいましたが、電話をもらって本当に有り難かった。
SFも、代役で乗っている時も乗った後もずーーっと、乗りたい乗せて欲しいと伝えていました。昨年末、2022年のラインナップ発表後のSF鈴鹿テストを、1コーナーで他の選手たちが走っているのを見ているのはすごく辛かったです。
自分は戦えるという自覚があるのに、それを外から見ているのはめちゃくちゃ辛いし悔しい。なんとしてでも次の1年、フォーミュラに乗らない時間を作りたくない、次の1年が自分の今後の人生を大きく左右するんだ、そう思ったんです。
ただ人それぞれに考えがあるし、それを摺り合わせていくなかで合致する部分もあれば噛み合わない部分もある。その合うポイントがなかなか見つからなかった。言ってしまえば僕の力不足でもあったと思います。
それでも結果的に無限からフル参戦できることになって本当に嬉しいです。15号車のスタッフはSGTでも最初から一緒にやっているお世話になっているメンバーです。人間関係の土台の出来ている環境で、現状の課題を効率よく改善していこうという感じで、やはり代役の時とは精神的にも全然違います。
でも何が一番嬉しいといって、関係者やSF、モータースポーツを応援してくれる皆さんが、例えばネットなどで『なぜ笹原の名前がないんだ?』と声を挙げてくださったことが一番嬉しかったです。
僕が年間で乗るためにすごく頑張って下さった無限や支援パートナーの方々をふくめ、本当に誰ひとり欠けても実現が難しい話だったと思います。こんなに応援してもらえて本当に幸せだし、その皆さんの思いを乗せて走るのだから、僕にしかできない闘いを1年をかけてやっていきたい。
速さと強さで、まだ実現できていないポールポジションと優勝は絶対に獲りたい。そしてチーム・タイトルを野尻智紀さんやチームのみんなと協力して獲りたいです。
自分のことやSFそのものをもっと多くの人に知ってもらうことも大事で、どうすれば認知されるだろうと日々考えています。僕もその一人のレッドブルアスリートには、他競技、例えばジャンプの高梨沙羅さんなどいろんな人がいます。
レッドブルアスリート同士の異業種の交流をもっと増やして、そこで新しいコンテンツを生み出せれば、見ている人たちにモータースポーツに興味を持ってもらえるのではないかと思うんです。
年末に参加したレッドブルのイベントに来たお客さんたちは、ほぼレースを知らない人たちでした。でもレーシングマシンが爆音をたてて走ると『なんだこのクルマ!』『この人たち、なに?』といったダイレクトな反応があったんです。そんな経験を、各自がSNSなどでどんどん発信してもらえたらすごく嬉しいですね。
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