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 11月には『フォーラムエイト・ラリージャパン』が予定され、日本のラリー変革期となる今年。『トヨタ GAZOO Racing ラリーチャレンジ(以下、TGRラリチャレ)』の2022シーズンが、3月13日(日)に広島の安芸高田市から始まった。

 前々身となる『TRD Vitzチャレンジ』から数えて20年近くになるこのイベントは、「モータースポーツ初心者でも参加できる気軽な草ラリー」の部分を継承しつつ、海外のラリーファンからも注目されるイベントへと成長してきた。

 今年は開催地からの歓迎もグレードアップし、早春の安芸高田市がにわかに盛りあがった。シーズン幕開けとなる「日本のラリー」らしい写真もあわせて、ぜひ御覧いただきたい。

文・写真/西尾タクト

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■GRヤリス登場から間もない昨年度、初勝利をあげたのは「あの人」だった!?

 昨シーズンのTGRラリチャレ安芸高田ラウンドの記事について、ご記憶のかたもおられるだろうか。

 2020年9月のGRヤリスの発売から半年がたつ2021年3月、世界最速のタイミングでGRヤリスRCを競技車にして出走。総合優勝を収めたのがトヨタ自動車の豊田章男社長……もとい、TGRのモリゾウ選手だったという衝撃の開幕戦だ。

104号車:TGR MORIZO GRヤリス(MORIZO/勝田範彦選手組)最終SS5のフィニッシュ前ラスト一直線でロケット噴射!観客からも歓声があがるカッコよさ

 昨年は全日本ラリーの開幕戦が2021年3月19日からの新城ラリーであったため、3月14日に開催されたTGRラリチャレ安芸高田2021が実質、世界に先駆けてGRヤリスという車両の最速ラリーデビュー、および初勝利だったのだ。

■2022年シーズンのキーワードは『ラリーツーリズム』のさらなる拡大

 さて2022年の今年は、広島県は3月6日にまん延防止等重点措置が解除され、有観客のイベントとして開幕戦が開催された。開会式では石丸伸ニ市長の登壇をはじめ、伝統芸能である神楽舞の面々がセレモニアルスタートを彩るなど、去年にも増して安芸高田市がラリーを強力にバックアップしてくれた

 TGRが旗を振っている『ラリーツーリズム』という試みのとおり、地域と密着したイベントであるラリーが観光と連携した盛り上がりを見せている。開催地域の事も知ってもらいたいという考えに、行政や地元企業がギアを合わせてくれているのだ。

 今回もサービスパークからほど近い『神楽門前湯治村』の温泉街を抜けるラリー車の様子は、ぜひ世界に見てほしい「日本のラリー」のワンシーンであった。ラリージャパンでもこうした「日本らしい演出」をみなさんの手からもSNSなどに発信して広げてほしいところだ。

 セレモニアルスタートに並んだ安芸高田の神楽は、天照大神信仰の『天岩戸伝説』に基づく演舞なのだそうだ。この日も当初の雨予報を覆す好天に恵まれた事から、神様たちもイベントを愉しんでくれたのでは無いかと感じる1日になった。

■日本のラリーでは貴重なグラベルのSS。土煙をあげるラリー車は美しい!

 今ラウンドは、競技としては5本のSS(初心者クラスは4本のみ)を走るミックスサーフェスラリー。まずSS1/4は、新たに設定された大狩山林道のターマック(舗装路)だ。

 SS2/3/5はおなじみとなった『テクニックステージタカタ(TESTA)』を使った、日本のラリーでは貴重なグラベル(未舗装)路面のステージ。SSの最終セクション、ゆるやかな下り坂からの直線ではWRCを思わせる土煙のロケット噴射!やはり土煙を巻き上げて爆走する様子には美しさすら感じる。

 グラベルが多く残る海外と違って、日本国内ではグラベルの公道を使ったイベントは数えるほどしかない。それだけに、こうしたダートトライアルの聖地をフル活用したグラベルラリーも大変貴重なのだ。皆さんも機会があれば、土煙をあげるラリー車を生で観戦して頂きたい。

 開会式で選手代表として挨拶をした104号車のモリゾウ選手組は、惜しくも総合優勝を逃したがポディウムで総合2番手となった。

順位 ゼッケン クラス 車両名称 ドライバー Co.ドライバー
101号車 E-4 HAL GRヤリスーORC AkiHATANO 岸岡悠太
104号車 E-4 TGR MORIZO GRヤリス MORIZO 勝田範彦
103号車 E-4 小倉クラッチGRヤリスーORC 小倉康宏 高田高志

■各所で話題、小さな「D-SPORT コペンGRスポーツ」が世界に挑む物語

 TGRラリチャレは基本的にトヨタ車のためのイベントなのだが、大会規則には「ダイハツの軽自動車も出場が可能」とされている。そんな規定に当てはまるD-SPORT Racing Rally Team コペンGRスポーツ(相原泰祐/萩野司選手組)の挑戦を御存知だろうか。

 日本が誇る軽自動車たちは世界でも特異な存在だ。セントラルラリー2019の際には、ペター=ソルベルグ選手がわざわざ彼らのサービスを見にくるなど、いまこの660ccの小さなラリー車が各所で注目を集めているのだ。

モリゾウ選手もわざわざD-SPORTのサービスまで足を運んで激励。ダイハツ工業の社員でもある相原選手は緊張しつつも、TGRラリチャレのトップカテゴリー選手であるモリゾウ選手と並べてご満悦

 この日はラリー好きというダイハツ工業の松林淳会長も現地を訪れ、クルーやD-SPORTチーム員を激励。モリゾウ選手もD-SPORTチームのサービステントを訪れ、コペンラリー活動の今後にも期待がもてそうな雰囲気だ。

■日本でのラリーは、良くも悪くもソーシャルディスタンスな競技

 海外で開かれているWRCやERCといった大会を見ると、ギャラリーステージには人がひしめき合っている。これは特定の場所に限らず、雪山や砂漠の道端にも熱心なファンが立っている様子がオンボード映像に映り込んでいる。

 一方、日本では安全面やコロナ禍への配慮からか、あまりイベントとして大々的に宣伝がされていないように感じられる。また宣伝する担当者側もよく解っていなかったりして「どこで、だれが、なにをしている〝レース“なの?」くらいの認識がしばしばある。

 ラリーはサーキットと違い、公道を使わせてもらう競技だ。毎年その開催場所や実際に走るコースも変動する。それらもあってか熱心なラリーファン以外には、今ひとつ競技の内容なども伝わりにくいのだろう。

 ラリーというのは「旅をする騎士道の武芸に端を発するモータースポーツ」と言われている。「旅好き」や「地図好き」はたまた「写真好き」や「民俗学好き」、いろいろな人たちに注目してもらい、日本各地を元気にするお祭りツアーとして浸透してほしいと願う。兎にも角にも、コロナまわりが落ち着いてくれる事を祈るばかりだ。

■さあ、準備はいい?いよいよ11月にはラリージャパンがやってくるぞ!!

 ほぼ毎月、日本のどこかで開催されているTGRラリチャレや地方選手権。そして全日本ラリーにぜひ注目していただきたい。その際はカメラやスマホをお忘れなく!

 海外のTGRグローバル公式アカウントから、ハッシュタグ #TGRgram をつけてツイートする事で、「日本の皆さんが撮影したトヨタ関係のラリーマシンの写真を公式でも紹介したい」と呼びかけがあった。ぜひTwitterやInstagramなどでチェックしてみてほしい。

 日本各地を元気にするラリーの火をもっと大きなものにしていけるよう、ぜひ皆さんの力も貸していただきたいところだ。 2022年11月を開催予定とする『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』まで8ヶ月。まだまだこれから様々な仕掛けがあると思うが、何より世界へ発信する日本のラリー「お・も・て・な・し」は、皆さんの手にかかっている。

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