首都圏大手私鉄の一角、東急電鉄(東京都渋谷区、髙橋和夫社長)は、4月1日から運行するすべての路線で使用する電力を、“実質再生可能エネルギー由来”に100%切り替えたと発表したことがネットで話題になっている。
同社は、東京・三軒茶屋から下高井戸を結ぶ世田谷線については、すでに2019年3月から切り替え済みだったが、今回、東横線や目黒線、田園都市線といった他の7路線に対象を拡大したとしている。
東武電鉄も4月1日から、日光・鬼怒川エリアで運行する電車や駅施設などに使用する電力を実質再生可能エネルギー由来に切り替えるなど、鉄道業界でも脱炭素に向けた取り組みが始まっているが、運航する鉄道路線の全線を実質再生可能エネルギー由来としたのは全国の鉄道会社で東急電鉄が初めて。
好意的な意見の一方で懸念も
この東急電鉄の発表を受けて、ネット上では様々な声が溢れた。好意的な意見は次のようなものが多かった。
こうやって再エネの電気を買うことでますます再エネ業界も潤い、規模の経済で再エネのコストも下がっていくことでしょう。
業界として良い流れではないでしょうか。
流石の東急ですね…!JR含む全電鉄で初の取り組みとなります。他の大手私鉄もこの流れは避けられないでしょう。
また、再生可能エネルギーに切り替えたことで、運賃が高くなってしまうのではと危惧する声も少なくなかった。
いい事だけど運賃値上げは勘弁な!
運賃に跳ね返る。
雨の日は発電量不足で運休したり運賃上がったりするの?
なお、東急電鉄によると、電力切り替えによる運賃改定は予定していないという。
東急が打ち出す環境と調和する町のイメージ
「実質再生可能エネルギー由来」って?
東急電鉄が切り替えたという、「実質再生エネルギー由来」の「実質」や「由来」に注目するユーザーも少なくなかった。
排出量取引じゃなくて、実際に発電できたものだけで、走らせたらいいのに。
あくまで「実質的に」「みなされる」お話。難しいよね。
実際に発電された電力のみで運行するのではなく、電力の総使用相当量の「非化石証明書」を排出量取引で購入することで辻褄を合わせる方法か
ネット民の指摘通り、東急電鉄が使用する電力の全てが再生可能エネルギーに切り替えられたわけではない。東急電鉄は、電力を「実質再生可能エネルギー由来」に切り替えたのであって、「再生可能エネルギー」に切り替えたわけではないのだ。東急電鉄の発表にも、次のように記載されている。
鉄道7路線は東京電力エナジーパートナー株式会社、世田谷線は引き続き株式会社東急パワーサプライの再エネ電力メニューにより、CO2排出量が実質的にゼロとなります。
「CO2排出量が実質的にゼロ」を実現する、このスキームには「非化石証書」が活用されている。「非化石証書」とは、太陽光や地熱といった再生可能エネルギーなどの非化石電源により発電された電力量を証書化したものだ。
要は、東急電鉄は関連会社や協力会社が再生可能エネルギーで発電した電力量と、火力発電などで発電された電力量とを交換することで、「CO2排出量が実質的にゼロとなります」と言っているわけだ。だから、天候にも左右されずに、運賃も値上げされない。
ただ、やらないよりはやった方が良いことは確かだろう。それに、2030年までのCO2排出量半減を目指す日本にあって、東急電鉄の取り組みが与える、社会へのメッセージやインパクトは決して小さいものではない。