フルモデルチェンジしたノア&ヴォクシー、そして受注予約が始まった新型ステップワゴン。いずれもこれまで5ナンバーサイズのミニバンだったが、3ナンバーとなってしまった。ノア&ヴォクシーの全長と全幅は4695mm×1730mm、新型ステップワゴンは標準車のエアで全長4800mm×全幅1750mm。
ちなみに5ナンバーの条件は、排気量2000cc以下、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下。この基準を1つでも超えたクルマは3ナンバーとなる。
日本の風土に合った5ナンバー車(小型車)は数少なくなる一方であるが、本当に日本の道に適したサイズといえるのか? 日本独自のガラパゴス基準なのか、モータージャーナリストの永田恵一氏が解説する。
文/永田恵一
写真/トヨタ、ホンダ、スバル、スズキ、ベストカーweb編集部
■そもそも5ナンバー車とは?
軽自動車ではない登録乗用車はボディサイズと排気量によって、ナンバープレートの地名に続く数字が小型乗用車では5、普通乗用車では3となる。
これが5ナンバーと3ナンバーになるのだが、小型乗用車の規格が現在のものになったのは1960年のことで、小型乗用車の規格は全長4700×全幅1700×全高2000mm、排気量2000ccが上限となっており、現在もこの4つのうち1つでも超えると3ナンバーとなる。
今では当たり前になった3ナンバー車だが、昭和の時代まで日本車の乗用車は5ナンバー車がほとんどだった。
というのは平成元年度(1989年)まで3ナンバー車は贅沢品という扱いで、当時の自動車税は排気量2リッターの5ナンバーサイズなら3万9500円だったのに対し、3ナンバー車は3リッター以下で8万1500円と非常に高額だったことが最大の理由だ。
そのため、昭和までの日本車に3ナンバー車は少なく、当時はクラウンやセドリック&グロリアでも5ナンバー車が中心で、「5ナンバーで質の高いクルマを造る」、「2リッターで3リッター級の動力性能を得るため過給器付きの2リッターの6気筒エンジン」といった技術が進んだという面はあった。
しかし、5ナンバー規格が特に高額な日本車の国際競争力向上の足かせとなっていたことや、トヨタマークII三兄弟以上の車格のモデルにとってはいろいろな意味で物足りなさもあり、5ナンバー規格は歪んだものだったのも否めなかった。
という背景に加え、5 ナンバー規格は特にボディサイズや排気量が大きい米国ビック3から「非関税障壁になっている」という外圧もあった。
平成元年度から自動車税はボディサイズに関係なく、排気量に応じて3リッターまでは500cc刻みで5000円から6000円づつ高額になるという公平な制度となったこともあり、平成に入って日本車でも3ナンバー車は激増した。
■現在ラインナップしている5ナンバーの乗用車
●トヨタ
パッソ、ルーミー、ヤリス、アクア、カローラアクシオ、カローラフィールダー、シエンタ、ライズ
●日産
マーチ、ノート(オーラ系以外の標準車、セレナ標準車、キャラバンワゴン標準ボディ、NV200バネットワゴン
●ホンダ
フィット、シャトル、フリード
●マツダ
マツダ
●三菱自動車
デリカD:2、ミラージュ
●スバル
ジャスティ(OEM)
●スズキ
イグニス、クロスビー、ジムニーシエラ、スイフト(スイフトスポーツを除く)、ソリオ、ランディ
●ダイハツ
ブーン、トール、ロッキー
■輸入車
ルノートゥインゴ、フィアット500、フィアットパンダ
乗用車全体で見ると5ナンバー車は、しばらく前に比べめっきり減った。そのため、日本車が日本で2021年に約240万台販売されたうち5ナンバー車は約40%と、20年前の2001年は5ナンバー車が約75%だったのを思い出すと、時代の変化を痛感する。
しかし、現在も日本で販売される日本車の約40%が5ナンバー車というのは、5ナンバー車の車種数などを考えると「根強い需要がある」とも言える。
■3ナンバー車が激増し、5ナンバー車が減った理由は?
排気量に関しては近年ハイブリッドカーや排気量を小さくしたぶんを過給機で補うダウンサイジングターボの増加により、2リッター以上のエンジンを積むクルマが減少していることもあり、ボディサイズだけで考えてみる。
●日本の人口減少によりクルマの需要も減少し、日本専用車は作りにくくなり、ボディサイズをそれほど考えなくていい海外向けのモデルとの共用化が進んだ
●日本向け、海外向けともに主に側面衝突への対応のため、全幅の広いクルマが増えた
と上に挙げた2点が大きい。
■5ナンバー車と3ナンバー車はどちらが使いやすいのか?
日本の道路は3ナンバー車が増えても、道幅が広がった道はほとんどないのに加え、住宅地などの道や駐車場は5ナンバー車を想定したところが多いのもあり、日本では依然として5ナンバー車が乗りやすいのは確かである。
しかし、車種によっては全幅1700mmを超える3ナンバー車でも、5ナンバー車と取り回しをはじめとした感覚がそれほど変わらないこともしばしばある。
その要素としては、
●ミラーtoミラーと呼ばれるドアミラーも含めた実質的な全幅は、5ナンバー車でも3ナンバー車と意外に変わらないことは少なくない。ミラーtoミラー次第では狭いところの通り抜けなどは5ナンバーも3ナンバーも同等に感じる場合もよくある。
●全幅が広いとタイヤの切れ角が大きくなる場合もあり、そういったクルマだとボディサイズの割に駐車やUターンなどがしやすいこともある。
その好例が全幅を5ナンバーいっぱいの1695mmから1730mmに広げた4代目レガシィで、4代目レガシィはターボ車同士だと最小回転半径は5.4mと3代目モデルの5.6mより小さく、実質的な取り回しは全幅が3ナンバーサイズになっても向上していた。
といったことが挙げられる。総合すると日本では5ナンバー車が乗りやすいのは確かながら、視界や全幅の掴みやすさなどによっては3ナンバー車だからといって極端に運転しにくいとも限らないといえる。
■まとめ
コンパクトクラスを中心に5ナンバーをキープしている比較的新しいモデルは、現在の日本において拍手モノの存在だ。しかし、ヤリスやスイフトの海外仕様は3ナンバー幅となっており、日本仕様を5ナンバー幅にしてくれているのは有難いことながら、こういった配慮がいつまで可能なのかも不透明なのも事実だ。
例えば、日本仕様のカローラセダン。グローバル仕様は全長4630×全幅1780×全高1435mm、ホイールベース2700mmに対し、日本仕様のカローラセダンは全長4495×全幅1745×全高1435mm、ホイールベース2640mmと、全長135mm、全幅35mm、ホイールベース60mmも小さくしている。
トヨタはこれまでの日本の5ナンバーカローラオーナーのことを考えてサイズを小さくしたのだ。とはいえ、さすがにカローラアクシオの全長4400×全幅1695mmという5ナンバーサイズまでは収まりきれなかった。
そのあたりも考えると、もちろん歯止めのないボディサイズの拡大は賛成できないが、自動車税は排気量次第なのもあり、1750mm付近の全幅までは準5ナンバーのように許容してもいいのではないかと思う。
というのも1750mm付近の全幅であれば4代目レガシィや20年以上前のクルマとなるが、90系と100系のマークII三兄弟、現行車ではカローラセダンとカローラツーリングなど、取り回しは5ナンバー車とそう変わらず、前述の側面衝突への対応や走行性能の向上、見た目のドッシリ感といったバランスも取れるのではないだろうか。
つい10年ほど前まではセダンが全幅1800mmを超えるとデカすぎという声も多かった(2012年に登場したBMW3シリーズは日本の道路事情に合わせてドアノブを改良し全幅1800mm以内に収めた)が、今やミドルセダンは1830~1850mm級でも驚かなくなった。
ノア&ヴォクシーの全長と全幅は4695×1730mm、新型ステップワゴンの標準車のエアで全長4800×全幅1750mm。ちなみにLサイズミニバンのアルファードは全長4950×全幅1850mmだ。
カローラスポーツはグローバルカローラと共通の全幅(1790mm) だが、セダンとツーリング(ワゴン)は取り回しを考慮し、1745mmと、1750mm以内に収められている。
そんなことを考えていると、ノア&ヴォクシーと新型ステップワゴンの全幅1750mm以内が、これまでの全幅1700mm以下という5ナンバー基準が時代とともに拡大した数値で、これからのスタンダードに見えてくる。
今後、日本ではコンパクトカー以外は、5ナンバー車が減少していくのはやむを得ない流れとなりそうだ。
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