乗りバスの記事はよく書くが、取材そのものに撮影が必要なので撮りバスの記事は書いたことはなかった。なかなか観光にも行けない世情だが、撮りバスのついでにプチ観光もしてしまおうということで、現実的に持ち運びができる折り畳み電動アシスト自転車をレビューしながら、鉄道輪行と観光と撮りバスをしてみた読み物記事だ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
折り畳みで実際に運んでいる人は少ないか?
折り畳み自転車は便利だし収納に場所を取らない。持ち運びもできるということになっているが、実際に持ち運ぶとなると大変だ。
記者が所有する電動アシスト自転車は折り畳み式だが、重量が25㎏以上あるので持ち運ぶことは不可能に近い。自宅の車庫にある車に乗せて運ぶのであれば別だが、公共交通機関で輪行となると重量がありすぎてその気が起きない。
鑫三海(しんさんかい)がMakuakeで展開しているクラファンプロジェクトで現在進行中の「Carbon Age」は、電動アシスト車でありながら15.5㎏と軽く、輪行バッグを使えば現実的に持ち運びは可能だ。今回は「Carbon Age」のレビューを兼ねて撮りバスをした。
今回は北九州市営バスの撮りバスと北九州市若松区のプチ観光をすることにした。バスの場合はバスに乗って停留所で下車すれば、鉄道よりも停車間隔が短いのでどこでも撮れるし、わざわざ自転車で行く必要はない。それをあえて輪行にしたのは、プチ観光もプラスしたかったからだ。
鉄道の場合は輪行バッグに入れれば、JRをはじめ、ほとんどの鉄道会社で自転車の持ち込みは無料で可能であり、別途で手荷物料金を支払えば可能である鉄道会社もある。利用予定の鉄道事業者で確認していただきたい。
バスの輪行は一部の例外を除いて難しい
一方、バスの場合は重量・容積・長さ等の制限が鉄道より厳しく、現実的には難しい。路線バスはほぼアウトと思って間違いない。ただし高速バスの場合は大きさや重量の条件を満たせば、トランクに収容可能なバス事業者や路線がある。
有料・無料もバス事業者により異なる。例えば西鉄バスは高速バスの全路線で条件を満たせば、折り畳み自転車であれば無料でトランクに収容可能であることをホームページで公表している。
今回の取材では路線バスも高速バスも乗車せず、撮りバスと観光目的なのでバス輪行はしていないが、利用する場合は事前に確認することをお勧めする。
電気機関車のような進段が必要?
折り畳み自転車は概してタイヤのサイズが小さく、ギア付きであってもオマケ程度またはバッテリー切れを想定してのことであり、アシスト時のスピードはあまり出ない。
スピードが出ないということは、法令で定められたアシストが切れる24km/h以下で走っていることの方が多く、タイヤが大きいいわゆるママチャリタイプよりも電力消費が大きい。
本品は中国製だがギアはシマノ製外装7段を装備し、アシスト時でも適切なギアに入れて走ることを前提にしているようなワイドなギア比だった。よって発進時や坂道では抵抗を短絡していくわけではないが、電気機関車のような進段を行うことにより快適に走れた。
高速ギアでは若い人ならば24km/hを超えるのは容易なので、バッテリーは長持ちするだろう。本品の各機構の詳細やバッテリーの位置関係については画像ギャラリーに収録しているので、そちらでご確認いただきたい。
筑豊電鉄とJRで輪行
最初に輪行したのは北九州市八幡西区と直方市を結ぶ筑豊電鉄。全線が専用軌道だが、元は西鉄北九州線に乗り入れていたので現在でも路面電車タイプだ。筑豊電鉄では輪行バッグに入れれば無料で持ち込みが可能だ。
とはいえ路面電車タイプなので、ラッシュ時間をさけて電停で自転車をたたみバッグに収納する。工具は不要で折り畳みに3分、収納に3分の合計6分ほどで完了した。
乗車時間は15分程度で終点の黒崎駅前に到着。エスカレーターを乗り継いで直結するJR黒崎駅から鹿児島本線に乗車。JRも輪行バッグに入れておけば無料で持ち込みができる。そして戸畑駅で下車した。駅前で自転車を展開。若戸大橋を目指して走る。
戸畑渡場
戸畑渡場(わたしば)は、以前は西鉄戸畑線が発着していた路面電車のターミナルで廃止後は、跡地の一部を利用して西鉄バスのターミナルになっていた。それこそ数分おきに路線バスが発着し、福岡行きの高速バスも頻繁に発着していた。その戸畑バスセンターも閉鎖され、バス停は路上に移設されたが本数は激減した。
戸畑区と若松区を結ぶ若戸大橋と近年完成した若戸トンネルは人と自転車等の軽車両は通行できないため、昔から市営の若戸渡船がある。自転車で通学する高校生にはなくてはならない足だが、戸畑側も若松側も渡場まで来るバスが激減したために通勤客は減ってしまったようだ。
若戸大橋には西鉄と北九州市営のバスが走るが、戸畑駅から若松駅間は西鉄210円、市営280円と運賃が異なる。渡船の運賃は100円なので利用は減っているとはいえ、通学や日常生活の足や旅行者にとって、なくてはならない大切な公共交通機関である。
若戸渡船の運賃は自転車付きで150円!
渡船は自転車をそのまま載せられるのでたたむ必要はない。自転車の運賃は50円なので、人の運賃とセットになった自転車付乗船券を自販機で150円で購入して改札口の係員に渡せば、自転車利用者は先に桟橋に入れるので桟橋上で到着を待つ。
やがて若松渡場から出港した渡船が近づいてきて戸畑渡場に到着する。乗組員が自転車利用者に対して後部デッキに手招きするので、自転車ごと乗りこめばよい。自転車スペースはオープンデッキなので、潮風に吹かれながら東洋一のつり橋の名をほしいままにした美しい若戸大橋の下を若松に向けて走り出す。
ものの数分で到着するので下船して若松渡場バス停から撮影スタート。バスの便は少ないので、海岸線に沿って若松駅方向に自転車で走る。若松南海岸通りには近代建築の歴史的遺産があり、「北九州市旧古河鉱業若松ビル」もその一つ。大正8年建造のレンガ造り2階建てのビルは美しい。
若松で若戸大橋を走る市営バスを撮る
若松渡場からJR若松駅までは1km弱で徒歩10分ほどだが、自転車であれば数分だ。通りの洞海湾に面したテラスから、海岸通りを走る北九州市営バスや若戸大橋を渡るバスを撮影する。バスが走る橋上から撮影地までおおむね1kmといったところか。
若戸大橋を走るバスは肉眼では豆粒にしか見えないが、ここは一眼レフと望遠レンズで狙えばAPS-Cのカメラで135mm程度でもトリミングで何とかなる。今回の撮影機材は「Canon EOS 50D+EF-S18-135mm IS STM」というお手軽な構成だ。
自転車であれば事前にロケハンする必要はないし、バス停がない場所でも撮影ができるのが利点だ。ブレーキは前後ディスクブレーキで強烈に効くので、フルエアブレーキの要領は言い過ぎだろうが、いい場所だと思って急ブレーキにならないように注意したい。
若松駅から筑豊本線で輪行する
一通りの撮影と名所を見た後、若松駅に近いこともあったのでJR筑豊本線で輪行することにした。若松駅はかつては石炭の積み出しで栄えた駅で筑豊本線の起点だ。しかし現在ではローカル線化しており複線ながらも非電化で、架線蓄電池車のBEC819系「DENCHA」が2両編成で走る。
若松駅は朝ラッシュ時以外は無人駅だが駅舎の横にコンビニが、また待合室の一角に東筑軒の店舗があり、うどんや駅弁(かしわめし)の購入ができる。駅で自転車を折り畳んで再び輪行バッグに収納してからうどんを食べて、BEC819系に乗り込んだ。
非電化区間を電車のように走り折尾駅で少々停車後にパンタグラフを上げて架線集電走行。中間駅で下車した。
自転車での走行距離14.8km
この日に自転車で走った距離は14.8kmだった。電動アシストの強さは0-5(0はアシストオフだがマルチデジタルメーターは動作)で常時「5」で走行したが、バッテリーインジケーターは4段階のうち2つが残っていたので、残容量は半分弱といったところか。
ちなみにデジタルメーターにはUSBポートがあり、自転車のバッテリーからスマホの充電ができるので、これを利用しながらの残容量だ。
強烈な坂道にもチャレンジしたが適切なギアを選択すれば何とか登れたので、通常の坂道であれば全く問題はない。車を持っていなくても鉄道輪行し、街歩きやプチ観光、そして撮りバスを楽しんでみてはいかがだろうか。駐輪場を利用して自転車を預けて乗りバスを楽しむのもアリだ。
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