EVとは「Electric Vehicle」の略。要するに電気自動車のことで、近年では最も注目されているカテゴリーのひとつ。電動式モーターを動力にするクルマがEVであり、広い意味ではエンジン(内燃機関)をモーターで補佐するハイブリッド車(HV)もEVに含まれるし、燃料電池で発電しながら走るFCVも同様だ。
しかし、今回の記事では充電式バッテリーをエネルギー源にするピュアなEVが主役。
他のEV車と区別するため、BEV(Battery Electric Vehicle)と呼ばれることもあるこのタイプの特徴は、走行時に排気ガスを出さず環境への負荷が軽減できること。
2035年にガソリン車の販売が禁止となるであろう欧州で特にシェアを拡大しているEV(BEV)の現状はどうなっているのか? 輸入車メーカーの最新EV事情を見ていこう。
●トピック
・「EV先進国」欧州から続々上陸する輸入モデルたち
・近日上陸予定!? の輸入EV
・【番外コラム01】日本を一歩リード!? 韓国・中国のEV競争は超熾烈
・【番外コラム02】EV化加速の流れでメーカーの垣根がなくなる!?
※本稿は2022年1月のものです
文/長谷川 敦、写真/ベストカー編集部 ほか、EDIT/オフィス福島
初出:『ベストカー』2022年2月10日号
■「EV先進国」欧州から続々上陸する輸入モデルたち
「ヨーロッパでは、2035年までにガスを排出するクルマの販売が禁止される」。この法案を耳にした人も多いだろうが、販売禁止車両のなかにはHVやPHVも含まれるため、事実上完全EV化を目指すということになる。
日本を含む欧州以外の国々がすべてこの流れにのるわけではないが、すでに欧州の各メーカーはEVにシフトしている。つまり今後輸入される欧州車の多くがEVとなる。
●アウディ e-tron 50 quattro
ドイツのアウディからはすでにいくつかのEVが販売されているが、ここではe-tron 50 quattroに注目。このモデルではスペース効率に優れたSUVスタイルが採用され、先行販売のe-tron Sportback 55よりも価格が抑えられるなど、より身近なEVとなった。
●BMW iX xDrive50
前輪と後輪をそれぞれ別のモーターで駆動する4WDタイプのEV。前輪用モーターのほうが高出力で、FF的な味つけのモデルと言える。
本来は無音であるEVだが、このモデルではアイコニック・サウンド・エレクトリックを搭載して、オーディオスピーカーから特別に作曲した音が流れ、EVならではの走行音を体感することができる。
●メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC
2030年までに100%EV化を宣言したメルセデス。こちらのEQCは、前後のモーターを合わせると408ps(300kW)というハイパワーを発揮するSUVタイプのモデルだ。
負荷の低い状況ではフロントモーターのみで走行し、パワーが必要な場合はリアモーターも駆動してバッテリーのエネルギーを効率よく使う。充電サポートも充実。
●ポルシェ Taycan GTS
ポルシェ初のフル電動スポーツカー。スポーツカーメーカーのポルシェが送り出すEVだけにそのパワーは強烈で、静止状態から100kmにはわずか2.8秒(欧州参考値)で到達する。
航続距離は条件によって異なるが、354~431kmと実用性も充分。リアラゲッジスペースを拡張したタイカン4クロスツーリスモもラインナップ。
●プジョー e-2008 GT
EVモデル開発に積極的な姿勢を見せるステランティスグループ。その基幹メーカーであるプジョーが開発したEVがこのモデル。ガソリンモデルの2008と共通のプラットフォームやボディを持つが、e-2008は純粋なEVで、50kWhのバッテリーを搭載。
シチュエーションに応じて3タイプのドライビングモードに切り替えができるのも特徴のひとつ。バッテリーには8年(16万km)の保証も付けられる。
●テスラ Model X Plaid
創業以来一貫してEVのみを生産し続けているのがアメリカのテスラ。第一号は2008年にリリースされ、以降は着実に実績を重ねている。このModel X Plaidは2022年に納車開始のクロスオーバーSUVで、フロントドアは一般的な横開きだが、リアは上に開くファルコンドアを採用。
モデルX上級グレードのPlaidでは3基のモーターを搭載し、最大7人乗りでも軽々と運んでくれる。
●ジャガー I-PACE HSE
イギリスのジャガーが完成させたSUVタイプのEVは、90kWhの大容量型バッテリーを搭載し、前後2基のモーターが400psの最高出力を絞り出す。
全輪駆動(4WD)だが、走行中の状態をモニタリングして、最適なモーター出力とブレーキ制御を行う独自の方式を採用。安全性も配慮される。高速時に車高を下げて抵抗を減らし、バッテリーを節約するアクティブエアサスペンションも装備。
●ボルボ C40 Recharge Twin
ボルボが日本に初導入するEVがC40 Recharge。ボルボでも2030年までに全モデルをEV化する計画を持っているが、C40 Rechargeはその第一弾。
EV専用プラットフォームが用いられ、78kWhのバッテリーは最大485kmの航続距離を約束。EVならではのワンペダルドライブも実現した。Googleと共同開発した通信システムが搭載され、ナビをはじめとする各種サポートが受けられる。
●DSオートモビルズ DS 3 CROSSBACK E-TENSE
フランスのDSオートモビルズ製EVは、ステランティスグループ共通のプラットフォームを使用するSUVで登場。
ノーマル、スポーツ、エコの3パターンのドライブモードを備え、エネルギー回生を行うブレーキも2つのモードから選択できる。駆動輪はフロントで、136ps(100kW)を発生するモーターを搭載。50kWhのバッテリーにより最大398kmの走行が可能。急速充電にも対応する。
■近日上陸予定!? の輸入EV
●オペル…2022年に日本での販売を再開するドイツのオペル。同社のガソリンモデル、モッカやコルサは日本での販売が予定されているが、これらのモデルにはEV仕様もあり、群雄割拠するヨーロッパのEV市場でも健闘している。現状では、日本での販売に関する正式発表はない。
●ヒュンダイ…業績不振を理由に、2009年をもって日本市場から撤退していた韓国のヒュンダイがEVを引っさげてカムバック? 2022年に再上陸を果たすと噂されるヒュンダイは、日本国内で販売するモデルをEVのイオニック5とFCVのネッソに絞るとも言われているが、はたして?
●ルノー…日産や三菱と提携しているフランスのルノーも、グループ共通EVプラットフォームのCMF-EVを使用した新型車を発表した。メガーヌE-TECHと名付けられたそのモデルは、クロスオーバーSUVスタイルが採用され、ボディは現行のメガーヌと共通のものとなる。
●フォルクスワーゲン…現在の日本国内では、フォルクスワーゲン(VW)製EVは販売されていない。しかし、VWはEV化を進める欧州のメーカーであり、2028年までに全世界で約2200万台のEVを販売する方針を表明している。その尖兵となるのが『国民車』ビートルの意志を受け継ぐID.シリーズだ。
●フィアット・クライスラー…フィアット・クライスラーでは、現時点で日本国内でEVを販売していない。しかし、フィアットがリリースした500eは、イギリスのニュースUK モーター・アワード 2021でスモールカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど注目を集めており、正式な輸入販売を期待したい。
【番外コラム01】日本を一歩リード!? 韓国・中国のEV競争は超熾烈
大気汚染が問題となっている中国では、有害物質を含むガスを排出しないEVへの関心は高く、国の政策もあって市中でのEVは増加している。需要があれば供給が増えるのは道理で、現在の中国では新たなEVメーカーが次から次へと誕生中だ。
注目なのが、新興EVの価格が安いこと。日本円で50万円ほどの激安EVが販売され、大きく売り上げを伸ばしている。これは中国政府がEVメーカーに助成金を出しているからであり、助成金がなければ本来はもっと高価格になるクラスのクルマだ。
韓国を見てみると、近年はヒュンダイがEVに力を入れていて、EVの本場とも言うべきヨーロッパでも評価を得ている。今後はヨーロッパ車を脅かす存在に成長するかもしれない。
【番外コラム02】EV化加速の流れでメーカーの垣根がなくなる!?
EVモデルの増産に伴って注目されるのが、グループメーカー内でのプラットフォーム共用だ。この手法はガソリン車でも用いられているが、これまでにない技術が要求されるEVでは、すでにノウハウを有するメーカーの協力を得るのが早道だ。ただし、これはEVの没個性化につながる危険性もある。
【画像ギャラリー】欧州・中国・韓国……電気の武者たちが日本に攻め込む!! 増殖する輸入EVカタログ!!(33枚)画像ギャラリー投稿 欧州・米・中国・韓国… 電動の黒船襲来!! 日本市場に猛攻をかける輸入EVたち は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。