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もし車検の手続きを忘れてしまったら? クルマで安全に走行するために大事なこと

 2022年2月9日には北海道網走市、同月14日には滋賀県長浜市にて公用車の車検と自賠責保険の期限切れがあったことが報道された。

 車検とは、国の定める保安基準に適合しているか、またクルマの所有権を明らかにするため登録する制度のことを指す。一般的に初度登録から3年目に受ける初回車検、2年ごとに受ける継続車検がある。その際に自賠責保険の加入と重量税の納付も行われる。

 そこで本稿では車検、自賠責保険の仕組みを確認しつつ、万が一車検を継続し忘れたときにどう対処するのか、解説する。安全に走行するための大事な車検、いま一度確認しよう。

文/御堀直嗣
アイキャッチ画像/Kumi@stock.adobe.com
写真/Adobe Stock

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車検と自賠責保険とは何か

 車検(自動車検査登録制度)とは、国の定める保安基準にクルマが適合していること、それから、クルマの所有権を明らかにするため登録する制度だ。道路運送車両法により、車検を行わないと公道を走れないことになっている。

 新車登録の際と、継続検査の折に、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)と重量税の納付も、車検に合わせて行うことになっている。

 自賠責保険は、交通事故による被害者を救済するため加入が義務付けられており、これにより強制保険と呼ばれることもある。クルマを適切かつ安全に利用するため、国の保安基準に適合しているかを検査することも車検の大切な役目だが、自賠責保険の加入も車検をきっかけに更新されるので、車検を適切に継続する重要性がある。

 ところで、車検の継続をし忘れることは誰にでも起こり得る。販売店などに定期点検整備を任せている所有者および利用者は、期日が近づくと通知されることもあるが、自ら点検をしていたり、ユーザー車検を活用していたりする場合は、自己管理しなければうっかり忘れることもあるだろう。車検切れとなったら、どうなるのか。

もし車検の継続を忘れてしまったら?

車検切れで走ってしまうと法令違反となり、違反点数や罰金が課される。さらに、自賠責保険も期限切れの場合には、より重罪として罰則が重くなる

 まず、その時点で公道を走ることはできない。車検切れで走ってしまうと道路運送車両法違反となって、違反点数6点、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金、30日間の運転免許証停止の罰則が課せられる。交通違反の前歴がすでにある場合は、免許証の取り消しになる可能性もある。

 さらに、自賠責保険は交通事故被害者を救済する目的であるため、車検の期日が過ぎてもそこから1カ月ほど長い保健期間で加入しているはずだが、これも期限切れで違反すると重罪となり、違反点数は6点だが(車検切れと合わせれば合計12点)、90日間の免許停止となり、1年6カ月以下の懲役または80万円以下の罰金が課せられることになる。万一の事故に際し、人命を軽んじたことになり、うっかり忘れたでは済まない悪質さが加わるからだ。

 したがって、とくに走行上の不具合を感じずに日々クルマを利用しているとしても、車検の期限の確認には充分に注意を払うべきだ。ちなみに継続車検は、1カ月前から期間を維持したまま更新できる。

 車検切れに気付いてから継続検査を受ける場合、まず、整備工場へ入庫するにしても、検査場へ行って検査を受けるにしても、そのままでは違反行為となるので、自ら走らずに移動する手立てをつけなければならない。レッカー車を頼む場合は、1万円から1万5千円ほどの費用が掛かる可能性がある。この分が余分の出費となる。

 業者などに依頼せずに移動するには、仮ナンバー(臨時運行許可)を申請する方法もある。臨時のナンバープレートのことで、市区町村の窓口で発行してもらえる。利用期間は5日までと短期だ。それでも、整備工場や車検場などへ継続検査をしに行くには充分な日数だろう。

 仮ナンバーを申請するには、車検証/印鑑/運転免許証/自賠責保険証/手数料が必要だ。印鑑は認印でよく、自賠責保険は車検切れとなってすぐの段階であればまだ加入期間のはずだが、もし切れていたら短期で加入するか、車検期間の2年+余分の期間で加入する。いずれにしても継続車検を取るには加入が必要だ。仮ナンバー申請の手数料は、1000円前後だろう。

 仮ナンバーが発行されたら、既存のナンバープレートの上に取り付ければ、走ることができる。その際、仮ナンバーは必要な用事のために臨時に発行されるものなので、一人で乗車するのが原則だ。

 移動の経路も申請時に明らかにするので、買い物に行ったり、友人と出掛けたりすることには使えない。そして期限内に、返却する必要がある。レッカー移動や仮ナンバー取得によって、継続車検をするための移動の段取りは付いたことになる。

車検はクルマを安全に使うために必要なこと! 定期点検も重要なポイントに!

車検では、ウインカーなどの灯火の点灯、ブレーキの効き具合など、クルマが保安基準に適合しているかを確認する

 車検は、保安基準に適合しているかを確認する検査なので、ヘッドライトやテールランプ、ウインカーなどの灯火の点灯、速度計の正確さ、排出ガスの浄化性能、ブレーキの効き具合など、安全に走行するための基本性能が基準どおり満たされているのが目的だ。そのため、とくに不具合がなければ個人で検査を受けることができる。ユーザー車検と呼ばれるのがその制度だ。

 いっぽう、販売店など整備工場に継続車検を依頼する場合は、たとえばブレーキパッドの減りなどが確認されると、性能としては機能していても、この先クルマを利用する間に摩耗が進むため、車検の折に新品に交換することを薦めたりする。このため、車検という制度の時期をきっかけに、先々クルマを安全に利用できるようにするための定期点検と整備代(必要に応じて部品代)が追加請求される。

 クルマは、法規によって1年ごとの定期点検を義務化しているので、その項目を点検する作業が含まれ、ことに2年ごとの点検は項目数も2倍以上に多くなり、この点検代も車検の折に追加となる。

 一般にいわれる車検整備代とは、2年ごとの点検項目を整備工場が代行する料金だ。これに、修理や部品交換など整備が発生すると追加料金が掛ることになる。

 ただし、これら国が定める1年点検や2年点検は、クルマを所有する本人が、日常の点検と同じように自ら行うことも認められているので、自分でやれば余分な費用は掛からずに済む。以上を整理すると、車検とは、現在使用中のクルマが保安基準に適合しているかを確認する検査であるということ。

 車検切れをしてしまったら、その時点で公道を走ることはできないので、車検場や整備工場などへ移動させるには、レッカー車の手配あるいは仮ナンバーの取得が必要になること。当然ながら、そのために余分の費用が発生する。

 それ以外は、通常の継続検査と変わらないため、車検費用や、自賠責保険の更新、自動車重量税の支払いを行い、点検整備を整備工場などに依頼する場合はそのための費用が発生する。

 車検切れを忘れて公道を走行してしまうと、法令違反となり、違反点数や罰金が掛り、自賠責保険も期限切れとなっていた場合には、より重罪として罰則が重くなる。

 車検は、所有者の登録事項でもあり、それによってクルマを持つことの責任が明確化される。日々何事もなく利用できていると点検・整備のことを忘れがちかもしれないが、タイヤの摩耗を含めクルマは走れば走るほど劣化していくものなので、当然性能は落ちているはずだ。定期点検はもちろん、車検の期日は意識し、継続検査を忘れないことが、余分な面倒や出費を抑えることにつながる。

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