2021年軽自動車販売台数(暦年)で、ホンダN-BOXが1位になった。2011年に初代モデルが登場してから、2022年で11年目を迎えながらも、高人気を維持し続けている。2017年から2020年までは、小型/普通車を含めて、国内販売総合1位を獲得した実力のあるモデルでもある。
そこで、今回はホンダN-BOXの人気を維持し続けられる理由をひも解きつつ、オススメのグレード選びや、購入時の注意点について解説する。
文/渡辺陽一郎、写真/HONDA
【画像ギャラリー】黒基調で精悍になったN-BOXカスタムの特別仕様車「スタイル+ブラック」(18枚)画像ギャラリー歴代N-BOXの販売推移から読み解く人気の高さとは?
2021年1~12月の軽自動車販売状況(以下暦年)を振り返ると、N-BOXが1位になった。N-BOXの高人気は既に長く続いており、2011年に発売された先代(初代)モデルが、2013年に初めて軽自動車販売の1位になっている。
このあと、2014年には軽自動車の販売1位を先代タントに譲ったが、2015年以降は、一貫して1位であり続ける。さらにN-BOXが2代目の現行型にフルモデルチェンジを受けた2017年から2020年までは、小型/普通車まで含めて、国内販売の総合1位であった。
2021年にはヤリスが21万2927台を登録して、N-BOXの18万8940台を上まわり、国内販売の総合1位になった。N-BOXは軽自動車の販売1位とされている。
ただしヤリスの登録台数には、コンパクトカーのヤリス+SUVのヤリスクロス+スポーツモデルのGRヤリスがすべて含まれる。ユーザーがクルマを選ぶときの感覚では、ヤリスとヤリスクロスは別のクルマになる。
そこで2021年の登録台数を別々に算出すると、ヤリスが10万1460台で、ヤリスクロスは10万4000台であった(残りはGRヤリス)。そうなると国内販売の実質的な1位は、18万8940台のN-BOXだ。従ってN-BOXは、2代目が登場した2017年から、一貫して国内販売のトップを独走している。
N-BOXが長い人気を保っている背景には、先代(初代)モデルの成功がある。先代N-BOXも現行型と同じく全高は1700mmを上まわり、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も前輪駆動の軽自動車では最長の2520mmであった。車内はとても広く、4名で乗車しても快適だ。燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席は床面へ落とし込むように格納されて、荷室に変更したときは自転車も積みやすい。
外観は視覚的なバランスが良く、スライドドアの装着で乗降性も良い。N-BOXはミニバンの要素を軽自動車サイズのボディに凝縮させ、ステップワゴンの軽自動車版のように思えた。
そのために先代N-BOXを初めて見た人は、全員が車内の広さに驚いた。「ここまで広い車内が自分にとって必要か」という本質的な判断は抜きにして、購買意欲を刺激された。かつての軽自動車は「これでイイ」という選ばれ方をしたが、N-BOXは「これが欲しい!」と思わせ、ユーザーは積極的に購入した。
このように、N-BOXでは、届け出台数の推移も、ほかの車種とは違っていた。通常は発売直後に最も多く販売され、次第に新鮮味が下がって売れ行きも下降する。ところが初代N-BOXの届け出台数は、2012年は21万8295台、2013年は23万4994台と増加した。2014年も前年と同等の台数を維持している。
この販売推移は、ワゴンRなどを含めて、息の長い人気車に多いパターンだ。初期の売れ方は控え目だが、街中で見かける機会が増えると、ユーザーの共感を呼んで売れ行きも増加する。このような売れ方をするクルマは、市場に確実に定着していくから、好調な販売を長く保ちやすい。N-BOXはその典型だ。
そして人気車だから、中古車市場の流通台数が多い割に、数年後の売却額が高かった。高値で売却できれば、先代N-BOXを売却して新型を買うユーザーも増える。そのために2代目の現行N-BOXは、届け出台数が発売の翌年となる2018年には24万1870台に達した。
1カ月平均で2万台以上を届け出している。2019年には、さらに増えて25万3500台となった。2代目も時間の経過に連れて売れ行きを伸ばした。
現行型N-BOXの売れ行き好調の理由とは
現行型が好調に売られた理由は、膨大な先代型のユーザーが乗り替えることを考えて開発されたからだ。先代型のユーザーは、外観や内装のデザイン、シートアレンジなどを気に入っているから、基本路線は変更しなかった。
その代わり内外装の質感、乗り心地や静粛性、安全装備と運転支援機能は大幅に充実させている。2代目N-BOXが大量に販売されることは、開発の過程で分かっていたから、開発と生産に多額のコストを費やした。
このように開発された現行N-BOXは、先代型からの進化が分かりやすく、先代型のユーザーは「欲しい! 乗り替えたい!」と考えた。そこで前述のとおり、1カ月の届け出台数が2万台を超えるヒット商品になった。
ここまでN-BOXが好調に売られると、今まで関心の薄かったユーザーも振り向く。販売店では「先代N-BOXのお客様は、以前からホンダ車に乗っている方が多かったが、現行型は顧客層を広げた。先代N-BOXを始めとするホンダ車のお客様に加えて、他社からの乗り替えも増えている」という。
初代と2代目の連係によってN-BOXは定番商品になり、軽自動車の購買層が幅広く関心を寄せる商品に成長した。
一部改良でさらに安全装備が充実に! 特別仕様車はお買い得か
2021年もN-BOXの販売は好調で、前述の18万8940台を届け出したが、同年9月の売れ行きは前年に比べて37%減った。10月はマイナス54%だから、半数以下まで落ち込んだ。
ここまで売れ行きを下げた理由は、各種のパーツやユニットの供給不足に加えて(半導体はごく一部だ)、N-BOXが2021年12月に一部改良を実施したことも影響している。車両を刷新するために、届け出台数が一時的に大きく減った。
その代わり改良後の商品力はかなり向上した。全車のパーキングブレーキが、従来の足踏み式から電子制御式に変更され、先行車との車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも進化したからだ。
従来はクルーズコントロールの作動中に、速度が時速25km未満まで下がると、制御が解除された。そこが改良後は、追従停車した後も継続的に止まっていられる。停車時間が長引いたときは、パーキングブレーキを自動的に作動させるからだ。渋滞追従機能も備わり、クルーズコントロールの快適性が大幅に向上した。
この改良に伴い、売れ筋のLとカスタムLは1万9800円値上げされた。それでも電子制御式パーキングブレーキの使いやすさと、クルーズコントロールの機能向上を考えれば、従来型よりも少し割安になっている。
またNシリーズの登場10周年を記念して、特別仕様車のN-BOXカスタムLスタイル+ブラックと、Lターボスタイル+ブラックを加えた。外観はアルミホイールも含めてブラック基調になり、外観をたくましい印象に仕上げた。
Lスタイル+ブラックの価格は192万9400円だから、カスタムLよりも13万9700円高いが、5万5000円でオプション設定される右側スライドドアの電動機能、アレルクリーンプラスシート、本革巻きのステアリングホイールとシフトノブも加わる。
これらのプラスされる装備を価格に換算すると7万1000円だから、価格差の13万9700円からこの金額を差し引いた6万8700円が、内外装をカッコ良く変更したことの対価だ。Lターボスタイル+ブラックの場合は、ベースのグレードも装備が充実して上乗せはほとんどないため、カスタムLターボと比べたときの価格アップは6万8200円に収まった。
この特別仕様車は、色彩などの変更で6万円以上を上乗せしたから、価格が割安とはいえない。それでも内外装が気に入ったなら選ぶ価値はある。
購入する前に必ず試乗をしよう! レンタカーで一日過ごすのもあり!
このように絶好調に売られるN-BOXだが、いくつか欠点も見られるから、販売店の試乗車で確認したい。室内空間では後席の座り心地だ。前席に比べて後席は座面の柔軟性が乏しく、腰の近辺にサポート不足を感じる。
後席は背もたれを倒すと簡単に畳めて便利だが、広げた荷室の床には傾斜ができる。荷物を積むときに不都合がないかを確認したい。
運転感覚では動力性能に注意する。車両重量は大半のグレードが900kg以上だから、登坂路などでパワー不足を感じることもある。そのときはターボも試乗する。ターボは最大トルクがノーマルエンジンの1.6倍に増えて、WLTCモード燃費は5%しか悪化しない。効率が優れている。
標準ボディ、カスタムともにLターボの価格はノーマルエンジンのLに比べて19万9100円高いが、装備も充実する。ノーマルエンジンのLは、サイド&カーテンエアバッグ、右側スライドドアの電動機能はオプション設定だが、ターボには標準装着されてパドルシフトも加わる。これらの装備は11万円に換算されるため、ターボの正味価格は約9万円だ。そうなるとターボも割安になる。
N-BOXは機能が多彩だから、試乗チェックを入念に行いたい。可能ならばN-BOXのレンタカーを借りて、実際に買い物などに出かけてみると使い勝手が分かりやすい。今はホンダの販売店で貸し出すレンタカーも用意されているから、活用すると良いだろう。出費は増えるが、間違いのないクルマを選べる。
【画像ギャラリー】黒基調で精悍になったN-BOXカスタムの特別仕様車「スタイル+ブラック」(18枚)画像ギャラリー投稿 “真の”2021年日本一売れた車!! ホンダ N-BOXが圧倒的に売れ続ける訳と意外な「売れ方」 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。