法務省は16日、商業登記のルール改正に関する省令案について、パブリックコメントの募集を開始した。現行の登記制度では、代表取締役の氏名とともに住所も記載する必要があるが、古川法相が前日の閣議後記者会見で「インターネット上で閲覧可能な登記情報提供サービスにおいては、会社代表者等の住所を一律に表示しないこととする」と明らかにしていた。今年9月に施行する方針だ。
住所の明記を巡っては、「個人情報保護等の観点から問題があるのではないかとの指摘がされていた」(古川法相)。法制審議会が2019年に会社法制の改正を議論した際、配偶者やパートナーからの暴力行為(DV)などの犯罪被害を受ける恐れが指摘され、附帯決議に盛り込まれていた。
このニュースを受け、ツイッターでは朝から「社長の住所」の取り扱いをめぐる“パブリックコメント”が一足先に展開された。
ネット広告関連企業の経営者は「当たり前だろと思ってたけどやっとキタようです。今まで(今でも)社長であれば無条件で自宅を特定されていました。普通に危ない」と安堵した様子。ある司法書士は「ネットで社長の住所をお気軽に全世界公開して強盗さんのサポートするのもなんだし、改正はいいことだと思います」と皮肉を交えつつ、歓迎した。デジタル通貨を手がけるJPYC(東京・千代田)の岡部典孝代表は「女性起業家育成の為にも重要」と指摘した。
ただ、法務局で取得する紙の登記では引き続き、犯罪の恐れなどが認められない限りは住所の記載は継続する。
中小企業診断士の男性は「紙の謄本は偽名でも取れるし、郵送もしてくれるんだよなあ」と、現行制度の欠陥を指摘。
企業法務が専門の弁護士は「破産者の氏名住所や代表取締役の住所の開示といった明治の制度が惰性で維持されている結果、プライバシーや起業にマイナスの影響を及ぼしている」との見方を示した上で、「破産者マップ事件などがその典型例。そもそも制度の根幹から問い直さなければ、プライバシー保護や日本経済の発展は望めない」と今後の課題を指摘した。
元ミクシィ社長で、投資ファンド経営の朝倉祐介氏は「今年一番の良いニュース。これで世の経営者達がセキュリティのために、登記用の不要な賃貸物件を契約したりせずに済むようになります」と評価。「『ネットでは住所を示さない』となっていますが、合理的な理由がない限り、代表者の住所は全面的に非開示にすべきでしょう」との持論を述べていた。