ここのところ90年代スポーツモデルが話題になることが多い。環境対策が進む中で新型のスポーツモデルの選択肢が少なくなっていることも影響しているだろうが、何といっても米国の25年ルールが大きく影響しているだろう。
発売後25年過ぎると右ハンドルの日本車が米国で販売できるようになる。日本車のスポーツモデルは人気で、高い価格で販売されることもあり、これに引っ張られて国内での販売価格もどんどん高くなっている。
しかしその一方で、古いクルマということで保険の評価が低く、価値に見合わない保険にしか入れないことが多いという。そんな保険の打開策を探ってみる。
文/藤田竜太
写真/Nissan、AdobeStock(トップ写真=umaruchan4678@AdobeStock)
■ネオクラ高騰で浮上した自動車保険問題
ご存じの通り、第二世代のスカイラインGT-Rを筆頭に、昨今1980~90年代の中古スポーツカーの価格が高騰している。そうした中、古いスポーツカーのオーナーを悩ませているのが自動車保険だ。
万が一の事故や盗難に備えて、自動車保険に加入していても、自動車保険で支払われる保険金はそのクルマの時価額まで(これは対物無制限の保険に入っていても同じこと)。
困ったことに、この時価額は市場価格と連動しているわけではなく、通常、30年も前の国産車など、保険会社からすれば減価償却済みの時価額ほぼゼロのクルマとして扱われてしまう。
したがって、いま中古車相場で平均価格が1600万円オーバーのR34GT-Rでも、もし誰かにぶつけられてしまったとすると、加害者が加入している自動車保険からは極端な話、数10万円しか支払われない可能性だってあるわけだ。
被害者=R34 GT-Rのオーナーからすれば、愛車の価値は1600万円以上。それに対し、加害者側の保険会社からは、「全損扱いでも80万円しか出せないと」などといわれれば大揉めになるのは避けられない!
このように、古いクルマの場合、修理費用が時価額を上回って、事故相手と揉めることは多々あるので、最近、大手の自動車保険では「対物超過修理費用特約」を標準化する流れがある。
この「対物超過修理費用特約」を付けておけば、保険会社から見た時価額以上の修理費用でもカバーしてもらえるのでひと安心、といいたいところだが、「対物超過修理費用特約」も上限50万円までというパターンが多い。
一部の保険会社では「対物超過修理費用特約」も無制限を選べるものが出てきているが、まだまだ少数派……。
■ネオクラスポーツも補償上は単なる中古車に
相手がどんな保険に入っているかわからない以上、やはり古いクルマのオーナーとしては、自分で手厚い車両保険に入って自衛するのがベストなのだが、じつはここにも大問題が!
車両保険は、車両購入時には購入価格に見合った高額の補償額で加入できるが、そのクルマに長年乗り続けていると、年々補償額が引き下げられてしまう。
補償額が下がっても、中古車価格も同時に落ちていっている場合は、まだ納得できるが、80年代、90年代のスポーツカーのように、中古車価格が急騰しているクルマだとたまったものではない。
おまけに古いクルマに関しては、純正部品も毎年値上がりを繰り返しているので、修理費も高くなる一方。製造廃止になったパーツだって増えてきている。
例えば、筆者が1992年に新車で購入したスカイラインGT-R(R32)の今年の自動車保険は、車両保険が30万円まで。「車両修理費支払い限度額引き上げ特約」のオプションを付けても、50万円が限度というものだった。
※修理費が車両保険の保険金額以上となる場合で修理を行ったとき、免責金額を差し引いた金額を50万円を限度に保険金として支払う
R32GT-Rの純正パーツも、順調に値上がりし続けているし、中古車相場もいまや630万円が平均。にもかかわらず、次回の更新からは、車両保険の補償額が25万円に下がるという連絡が……。
さすがにこの車両保険の金額では困るし不安だと、じつは去年の更新のときにも代理店に「なんとかならないのか」と交渉した。
が、「同じクルマでも(今年)中古車で購入したクルマなら、その購入価格に合わせて補償額を設定できるのですが、ずっと乗り続けているうちに、中古車価格が高騰してきたというクルマの補償額は上げられません」と断られてしまった。
調べてみると、旧車やクラシックカーなど、製造から25年以上経過した国産車及び輸入車に対し、市場価格を考慮した車両保険を提供する「クラシックカー保険」なども見つかったが、年間走行距離が5,000km以内などの加入条件があり、普段使いをしている古いクルマにはマッチしづらい点も。
■親身になってくれる代理店を探して根気よく交渉を
最終的にはどうしたかというと、元々契約していた国内大手保険会社の代理店と再交渉し、さまざまな資料を提示しつつ、担当者も親身になって動いてくれたこともあり、補償額を25万円から600万円にアップすることに成功。気になる保険料も年間で11480円のアップで済んでしまった!
2年越しの交渉になってしまったが、最終的に得られた成果は十分納得ができるものだった。そしてやってみてわかったことは、保険会社そのものより、引き受けてくれるかどうかは代理店次第だということ。
筆者が更新した代理店の担当者も、「今回で、上(本社? 支社?)の説得方法がわかったので、これからは1980~90年代のスポーツカーでも、万が一のときに、十分損害をカバーできる車両保険を提案できます」と語ってくれた。
またR31スカイラインの専門店として有名な「R31HOUSE」や、第二世代GT-R専門ショップの「目黒メンテナンスサービス」などでも、古いクルマの車両保険の見直し相談などを行なっている。
「古いクルマだから車両保険が安くても仕方がない」「車両保険に入れない」と諦めずに、根気よくいい保険屋さん(代理店)を探してみよう。
高騰し続ける古いスポーツカーに乗りながら、雀の涙のような車両保険にしか加入していないのは、裸で林の中に入り、蜂の巣を棒で叩くようなもの!? 大事な愛車だからこそ、事故で揉めないために、盗難などで泣かないために、価値に見合った車両保険に入るのが重要だ。
付け加えると、古いクルマのオーナーとして、もうひとつ気になっている特約がある。それは損保ジャパンの故障運搬時車両損害特約。
これは契約した車両が故障により走行不能となり、レッカーけん引された場合、故障損害に対して、協定保険価額または100万円のいずれか低い額を限度に保険金を支払うという特約。
加入条件はあるにせよ、故障修理も補償してくれる保険が出てくるとはビックリ(2019年~)。早く他社でも採用して欲しい特約だ。
カーライフに欠かせない大事な自動車保険、定期的に見直して、頼れる保険に加入しておこう。
【画像ギャラリー】GT-Rの価格高騰に車両保険金額が見合わない!! 歴代GT-Rを画像で振り返る!!(14枚)画像ギャラリー投稿 うわっ……私のクルマの補償額 低すぎ……? 古いスポーツカーオーナーを悩ませる車両保険問題 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。