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3Dプリンティングの大手Carbon(カーボン)は米国時間1月27日、同社の次世代3Dプリンティング主力製品である「Carbon M3」と「Carbon M3 Max」を発表した。ハイエンドのプロトタイピングと製造プロセスを対象としたこのプリンターは、サブスクリプションベースのパッケージで提供され、前世代のプリンターに比べて多くのアップグレードや改良が施されている。

新シリーズのハイライトの1つとして、簡素化されたプリンター体験が挙げられ、プリントプロセスの制御性が向上し、障害モードの低減が図られている。同プリンターはデザインスペースが広いため、旧世代のプリンターでは作れなかったパーツを作成でき、新しい形状や高強度のパーツをさらに開放する。熱管理(加熱と熱拡散の両方)が改善されたことで、プリンターのプリント速度が上がり、解像度が高くなってより滑らかなパーツの造形が可能になり、3Dプリントによる表面仕上げの精度が向上している。また、より再現性の高いプリントが可能なため、各パーツのばらつきを抑えることができる。

M3 Maxプリンターはビルド領域も拡大し、ピクセルサイズと密度はM3と同じでありながら、ビルド領域は事実上M3の2倍を実現。大型パーツの成型や小型パーツの量産に適している。

同社はこの新しいプリンターの価格について奇妙なことに堅く口を閉ざしている。市場が持ちこたえる分だけ顧客に課金するというエンタープライズの駆け引きを進めているためであろう。

「Carbonは工業用プリンターを製造しており、M1は月額約2100ドル(約24万円)からで、36カ月間の保証付きです」とCarbonのプロダクトマーケティング責任者であるRob L’Heureux(ロブ・ホイルー)氏は説明する。「価格について話す前に(私たちの顧客が)何を求めているのかを知り、彼らのために適切なデバイスを推奨していることを確認したいと思っています。一般的に、システムの規模と性能が向上するにつれて、パーツあたりの価格は下がっていきます」。

読者が今自宅で電卓を操作しているなら、旧世代のプリンターの3年間の価格は7万5000ドル(約863万円)になることがわかるであろう。つまりこれは、いとこのために風変わりなポケモンのフィギュアをプリントするのに時折使うような戸棚にあるプリンターではなく、本格的な産業用の仕事道具だということである。

「パーツあたりのコストを削減し始めると、対応可能な市場が拡大します」とCarbonの最高プロダクト責任者兼最高ビジネス開発責任者のPhilip DeSimone(フィリップ・デシモン)氏は説明した後、価格が下がっても、製造ミックスに射出成形向けの余地があることを強調した。「価格設定の観点で(3Dプリンティングが)射出成形と競合する時期については、さまざまな議論があります。プラスチック製のフォークやスプーン、Kカップなどに関しては、価格面で射出成形と競合することは決してないでしょう」。

高額な値札が付けられたプリンターは、製造を迅速に実施する必要がある場合や、小さな変更を継続的に行う必要がある場合、あるいはカスタマイズが重要となるプロダクトの場合に特に有用である。現在市販されているカスタマイズプロダクトの例としては、座面がライダーの体型にフィットするようにカスタマイズされた450ドル(約5万円)のSpecialized(スペシャライズド)のバイクサドルや、アディダスのカスタム3Dプリント製「4D」シリーズなどがある。

「製造におけるボトルネックは、多くの場合、従来の製造技術にあります。自動運転センサーに必要な電気コネクターを作るとしたら、その射出成形ツールに50万ドル(約5750万円)かかり、自分の仕事の物理的な部分を見るまでに6カ月から8カ月を要するでしょう」とデシモン氏は嘆き、3Dプリンティング技術について説得力のある主張を展開した。「私たちにとって、そのボトルネックのあらゆる小さな断片を切り詰めることに意義があります。人々がより早く生産ツールを手に入れることに私たちが貢献できたなら、それは私の考えでは勝利を意味します。革新的なプロダクトをいち早く市場に投入することを支援するという当社の目標は達成されたことになります」。

製造スペースでCarbonの技術を活用する上での主な推進力は、プリンターを使用することにある。何もしないで無為に時を過ごすプリンターはお金の無駄使いとなる。

「3Dプリント技術を採用した施設の多くで、設置されているプリンターが使用されていないのを目にします。私たちにとってそれは望ましいことではありません。こうしたプリンターが確実に使用されるようにしたいという思いがあります。その思いが主軸になって、あらゆる業界にまたがるインストールベース全体で、業界をリードする週40時間以上のプリント時間を確保しています」とデシモン氏は語っている。「当社の『Design Engine』ソフトウェアと『Carbon DLS』素材を組み合わせた、業界をリードするこの次世代プリンターを使用することで、さまざまな業種の設計チームはこれまで以上に迅速かつ効率的に、エンドユースのパフォーマンスを備えた極めて高品質なプロトタイプを作成することができます」。

2016年にM1が発売されて以来、Mシリーズのプリンターはしばらく存在している。これらのプリンターは現在も生産が続けられていて、今でも同社から入手可能である。だが真新しいM3にはさらに多くの付加機能が追加されており、特定のプロトタイピングや生産要件により適している。

1つには、M3の方がはるかに優れたユーザー体験を提供することが挙げられる。タッチスクリーンは、消費者向けプロダクトに期待されるユーザーフレンドリーさを加えている。同社によると、M3 Maxは4K DLPライトエンジンを採用した初めての3Dプリンターで、これまでのマシンと比べてほぼ2倍の解像度を維持しながら、プリント速度を犠牲にしないという。

「従来の3Dプリントでは、プリントサイズが大きいことが問題でした。ビルド領域が大きくなるにつれて、精度、プリント速度、一貫性が低下します」とデシモン氏は説明する。「そのため、新しいプリンターのローンチを心から喜ばしく思っています。ユーザーにとって既知のことや愛着のあることをすべて維持しながら、より大きなビルド領域を実現できるのは今回が初めてです。それを可能にするために、膨大な数のエンジニアリングが行われました」。

プリント速度はCarbonチームが特に誇りにしている領域の1つであり、M3シリーズはそこで顕著な改善を見せている。それはユーザーが必ずしも予期していないかもしれない角度からの速度増加である。

「このプリンターは2つの要因で高速になっています。1つはフォースフィードバックと呼ばれる技術です。従来のプリンターでは、マニュアルスクリプトと呼ばれるものを使って最適化していました。生産を最適化する方法に基づいて、さまざまな領域でパーツのプリント速度を変化させることも可能です。私たちがそうしたことを排除しようと考えたのは、それがプリントプロセスのダークアートのようなものであったからです。フォースフィードバックは、そのすべてをリアルタイムで行います。ビルドプラットフォーム上には、z方向への上昇に対応する高感度センサーが装備されています」とデシモン氏は説明する。プリンターが追加の吸引力を感知すると、プリンターは自動的に減速する。「閉ループのフィードバックシステムを採用しているため、可能な限り高速にプリントすることができます」。

「2つ目の主要なプロダクト機能は、完全に再設計されたウィンドウテクノロジーです。ご想像の通り、材料のプリント方法は熱によって大きく左右されます。材料によっては、発熱反応が非常に高いために冷却して熱を逃がした方が効果的なものもあります。また、樹脂によっては、加熱して粘度を下げた方がより良い結果が得られます」とデシモン氏は述べ、加熱と冷却によってプリントプロセスの制御性がさらに向上することを説明した。「これは、従来のテクノロジーでは実現できなかった方法でプリントプロセスを最適化することを意味します。必要に応じて熱を逃がすだけではなく、熱を加えることができるため、非常に効果的です。これらの技術革新が一体となって、速度の向上を実現しています」。

画像クレジット:Carbon

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)