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JAIA輸入車試乗会に参加して フィアット500Cツインエア ドルチェヴィータ試乗記

甘い生活(ドルチェヴィータ)

ヒトが自動車を購入する時、どんなことに魅力を感じて決め手とするのだろうか。「カッコウがいかす」、「色がきれい」、「内装が素敵」、「携帯電話を置いただけで充電できて便利」、あるいは「値引き条件が良かった」というのもあるかもしれない。

とにかく(我々の行為を自ら否定するような発言で申し訳ないけれど)「アンダーステアがどうあたらこうたら」とか「エンジンの回り方が官能的」とか「乗り心地がフラットでアンジュレーションにも影響しない」などと言っているのは、世の中の少数民族であって、だいたいは「普通に」気に入って購入したクルマで、クルマそのもののことなどあまり脳裏に浮かべず、買い物行ったり送迎したりキャンプ行ったりするわけである。

今回の「フィアット500Cツインエア ドルチェヴィータ」で走り出した途端、あまりの変わりなさに大笑いしてしまった。変速の度に(特に1速から2速)途切れる加速、開口部の大きいボディということもありユルイ剛性感、お洒落な内装ではあるけれどアクティブクルーズコントロールもナビもない丸腰状態の電子デバイス・・・。ぷるぷるっと揺れるルームミラーで、常にゆがむ後方視界を見ながら、妙な懐かしさが込みあげて来ると同時に、ずいぶん前に乗った500ツインエアとのあまりの変わりのなさに驚いた。大きな進化とか熟成とか大幅に進化した部分はどうやらなさそうである。

話に花が咲き、大いに盛り上がる

にもかかわらず、JAIA試乗会当日、同乗者と一番話が弾んだのも、ああだこうだと大笑いしたのもこの「500」の車内であったことは事実である。だからと言って、この「500」が太鼓判の一台だとも思わないし、楽しいからと言って誰にでも無責任に薦めるような自動車ではない。でも、改めて自動車の魅力とはなんだろう、人がその自動車を好きになる瞬間とはなんだろう、そんなことを考えさせてくれたことは確かである。

2021年、発売14年目にして「フィアット500」は、日本市場において過去最高の販売台数を記録したという。ヒトは自動車のどこに魅力を感じて選ぶのだろうか。永遠の命題である。

フィアット500Cツインエア ドルチェヴィータ

自動車文化遺産に勝手に認定。屋根を開けて街中や田舎道をトコトコ流すだけで幸せな気分になれる。天気の良い日に公園でトイプードルを散歩させてるような、お洒落かつほっこりした感覚。セミATは熟成されており、マニュアルを運転できる人なら問題なし。昔のクルマに乗ってるみたいな楽しさ。(アウトビルトジャパン編集記者の感想)
ルーフを開け放って、パタパタ可愛いサウンドの2気筒エンジンを聞きながら街なかを流すのはまさにドルチェヴィータ(甘い生活)。(KH)
懐かしいエンジン、懐かしいミッション(試乗車はデュアロジック)、懐かしい乗り心地とお洒落な内外装。懐かしすぎて後方視界が霞んで見える・・・。と思ったらルームミラーがずっと振動して後方視界が揺れていたのであった。そんなところも含め、ちょっと昔のヨーロッパ車が大好きな人には好適。でもできればMTで乗ってみたいし、MTで乗るべき。(KO)

Text: 大林晃平(KO) / 日比谷 一雄(KH) / AUTO BILD JAPAN(アウトビルトジャパン)
Photo: 中井裕美 / 大林晃平 / 日比谷一雄 / AUTO BILD JAPAN