2021年8月に販売を開始したランドクルーザー300。発売当初から大人気となり、予約段階で年間販売台数の3倍以上になる注文を記録している。
その波は今も収まらず、2022年1月19日にトヨタはランドクルーザーの納期が4年程度となることを発表した。街中でも納車されたランクル300を見る機会は、まだまだ少ない。
これまでさまざまなクルマが、長期のバックオーダーを抱えてきたが、さすがに4年待ちを公表した例は、筆者の記憶にない。異例とも言える人気と納期の長さに、ユーザーも販売店も大きく振り回されていることだろう。ランクルの販売を続けるトヨタ販売店へ取材を行い、見えてきた現状と今後の取り組みについて解説していこう。
文/佐々木亘
写真/TOYOTA
■キャンセルを見越しての納期発表? 4年の納期にユーザーの反応は?
異例の長納期となったランクルだが、この要因は日本市場における想定外の高い需要と、それに見合わなかった日本市場に対する新型ランクルの割り当て台数(年間販売予定台数5000台)にある。
ランクルの主戦場は日本ではなく海外だ。世界全体の販売台数のうち、約9割を中東やロシア、そしてオーストラリアが占め、残り1割をほかの地域で按分している。
予約時点で、長納期は確定的なものとなり、現在まで半年以上の月日が経っている。一般的には納期が長いクルマに対して、受注台数は段々と先細るはずなのだが、ランクルの注文台数は増え続けていった。
トヨタは、ランクルの初期受注台数を発表することで、受注数の調整を狙ったと思うが、それがうまく機能しなかったようだ。メーカーの想いとは反対に、ユーザーの興味はランクルに集まり、バックオーダーが日を追うごとに増えていくこととなる。
今回、異例とも言える納期4年という回答をメーカーHPで出した背景には、これから買おうとするユーザーはもちろん、現在納車を待つ人にも、ランクルを一旦あきらめて欲しいという気持ちが表れているのではないだろうか。
「4年も待つなら、もうやめよう」と、注文自体を取り下げてくれれば、それだけバックオーダーが減り、平常運転に戻れるまでの時間が短くなる。こうしたメーカーの意図を、ユーザーはどのように感じているのだろうか。
取材を行った販売店では、4年の納期公表後も、変わらずバックオーダーは増えているという。多少のキャンセルは出たものの、新規注文数が大きく減ることはなく、納期短縮は見込めないと話す。
ランクルを待ち望む声は多く、注文を入れたユーザーは「絶対にランクルじゃないとダメ」な人が多いのだろう。メーカーの目論見は、思ったような効果を発揮していないように見える。
■過去に類を見ない4年という長納期、販売店はどう動く
販売店ではこの異常事態で悲鳴を上げるところが多い。クルマが売れるのは嬉しいことだが、販売店では「登録・納車」ができなければ、1円の価値にもならない。注文書を受け取るだけでは利益にはならないばかりか、注文客の管理に労働力が割かれてしまう。
筆者も長納期車の販売は数多く経験している。1年程度の納車待ちでもかなり骨が折れる業務なのだ。
例えば、通常納期であれば、注文時に終わる下取り車の査定が行えず、別途日程を割いての対応となる。また、手続きが終わり、納車を待つだけだからといって、数カ月の間ユーザーを放置しておくことはできない。2週間に1回から最低でも月に1度は様子を伺うために電話をし、数度来店してもらって顔を合わせながら、納車までの期間を過ごさなければならないのだ。
この先4年間、通常業務に加えて、ランクル注文ユーザーの管理という仕事が増えるトヨタ販売店。営業マンのスケジュールを大きく割かなければならない仕事も多く、納車するまで終わらないこの仕事は、販売店への負担を大きくするだろう。
「いっそのこと落ち着くまでは注文できないようにしたほうがいいのでは?」と筆者は思うのだが、メーカーからの動きはない。販売店からの悲鳴は日々大きくなっている。
■転売防止に誓約書! 今後のランクル販売はどうなっていくのか
ランクル300で大きな問題となったのが、転売目的での大量購入だ。人気のゲーム機や限定グッズなどで話題となる「転売」だが、ついに自動車の世界にまで入り込んできたかと、ため息が出る。
当初は転売目的の注文が多く、長納期化したのだと騒がれた。メーカーは購入ユーザーへ、登録から1年間は転売しないことを約束させる誓約書を提出させるとともに、明らかな転売目的の購入元を、排除するように動いている。
一定程度の効果は生まれたのだろうが、すべてを防止することはできていない。先日オークションへランクル300が出品されて大きな話題となっている。誓約書だけでは、転売を完全に防ぐことはできないということだ。
今一度、この転売に対して考えてもらいたい。もちろん転売を行う者が大きな非難を浴びるべきだが、転売という行為が成立するためには、購入者がいることを忘れてはならないのだ。あなたが転売者の利益に加担することがないよう、トヨタ販売店以外からのランクル300購入は控えて欲しい。買わない勇気が、転売を防ぐ一番の方法だ。
今後の販売状況や納車状況だが、まだまだ先を見通すのは難しい。発売から半年が過ぎた今でも、先の見えないランクル300の販売事情。トヨタもメーカーとして本腰を入れて、問題解決に動かなければ、この異常状態は終わらないだろう。
筆者としては、まず注文停止を発令し、異常事態を鎮静化させるのが先だと思う。トヨタの代表車種であるランクルによって、トヨタ販売店が窮地に陥る状況は避けて欲しい。製造と販売の両輪がしっかり噛みあい、双方が平等に重荷を負担する状況へ、動き出すべきなのではないだろうか。
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