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 クルマ関連のメディアでよく見かける言葉に「フラッグシップモデル」というものがある。最高級車とか最上級車など、その扱いはメーカーによってさまざまだが、実際のところ現在の国産各メーカーのフラッグシップカーはどのクルマに当たるのか。そして、それらのクルマには他車となにが違い、どこが最上級なのだろうか。

”フラッグシップ”と称される理由となる部分をピックアップしていこう。

文/フォッケウルフ
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スバル、ダイハツ、スズキ

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■ブランドの頂点に立つクルマ

 フラッグシップモデルとは、ある製品の一連のシリーズのなかで最上位に君臨する製品のことを言う。これはクルマに限ったことではなく、家電やパソコンなどでも使われる言葉だ。元来フラッグシップ(Flagship)とは「旗艦」を意味しており、司令官が乗船している艦船のことを指していた。それが転じて「同じ類の物のなかでもっとも優れた重要なもの」という意味になったと言われている。

 クルマの場合、メーカーがラインナップしている全車種の頂点に位置付けられるフラッグシップをはじめ、ジャンルが細分化している昨今ではそのジャンル内での最上位モデルのことをフラッグシップモデルと表現することもある。前者はメーカーを象徴する車種であり、後者はジャンルのトップに位置付けられる車種を指すことが多い。

 いずれもメーカーが持つ技術を結集して開発された「妥協のない製品」であるということは共通しており、メーカー、あるいは車種の”顔”として内外から一目置かれる製品と言える。

 たとえば、現在各メーカーのフラッグシップと呼ばれる車種を挙げてみると、次のようになる。

●トヨタ → クラウン
●レクサス → LS
●日産 → フーガ
●ホンダ → レジェンド
●マツダ → マツダ6
●三菱 → アウトランダーPHEV
●スバル → レガシィアウトバック
●スズキ → スイフト
●ダイハツ → アルティス(OEMだが最上級車種)

各ブランドのフラッグシップと想定されるモデルたち

 フラッグシップモデルは必ずしもメジャーではなく、新しくもなければ、数多く売れているというわけではない。それは自販連が発表する「乗用車ブランド通称名別順位(2021年1月~12月の累計)」のトップ50にランクインしているのがクラウンとスイフトだけという事実でも証明できる。しかし、技術という観点から見るとフラッグシップたる理由が見えてくる。

 いずれの車種もクルマの基本性能については高い水準にあり、クルマの魅力は年数を経ても色褪せることがない。

 たとえばフーガのように設計が古い車種でも、世界初(当時)の技術である電動油圧式電子制御パワーステアリングや電動型制御ブレーキ、さらにモーター2クラッチパラレルフルハイブリッドシステムといった最高位の技術が採用されたことで、登場から12年を経過した現在でも高性能サルーンとしての地位は健在だ。

 同様のことはスカイアクティブ技術を採用したマツダ6や、初代コネクティッドカーとして登場したクラウンにも言える。

■新しい時代のフラッグシップらしさ

 技術という点では、「CASE」と呼ばれる新しい領域の技術がどれだけ採用されているかもフラッグシップモデルにふさわしいか否かを判断する材料となるだろう。今どきは、CASEに関わる技術開発が積極的に行われており、C(Connected:コネクテッド)とE(Electric:電動化)、S(Shared:シェアリング)については、コンパクトカーのようなリーズナブルな車種でも採用されるなど、かなり普及が進んでいる。

 しかし、A(Autonomous:自動化)の分野については、技術だけでなく社会的、法律的な課題解決が伴うこともあって、現在実用化されているのは自動運転レベル3(条件付運転自動化)にとどまっている。それでもADAS(先進運転支援システム)の普及は軽自動車にまで拡大し、自動化に向けた研究開発はさらに進んでいくとみられている。

 国内では、ホンダのフラッグシップであるレジェンドが2020年11月にレベル3の自動運転機能を搭載し、世界で初めて認可を受けたモデルとなった。レジェンドといえば、日本車として初めての運転席SRSエアバッグを採用したり、FF車で世界初のトラクションコントロールを搭載したり、日本車初の280馬力自主規制超えを果たすなど、エポックメイキングなクルマとして歴史にその名を刻んでいる。

 売れ行きはともかく、自動運転に向けた技術革新という点では、最も進んだクルマであることは間違いなく、ホンダのフラッグシップとして先進的で優れた機能を有したクルマである。

「レジェンド」=「伝説」という車名のとおり、自動車界に数々の伝説を残した

 日本が誇るフラッグシップとして広く認知されている「レクサス LS」も、風格を主張したスタイルや最上級のおもてなしを実現する快適装備を多数備え、走りや安全性においても最高かつ最先端の技術が奢られている。LSも2021年4月に「Advanced Drive」という、高速道路や自動車専用道路での走行を支援する、自動化レベル2に属する高度運転支援技術を採用。CASEの各分野において最高レベルの機能、装備を備え、こちらもフラッグシップにふさわしいクルマへと進化を果たしている。

■ジャンルごとに見られる最上位の存在

 ジャンルにおけるフラッグシップというのも存在する。ただし、この場合のフラッグシップは、すべてのジャンルに存在するわけではない。ミニバン、SUV、セダンにはあるが、コンパクトカーや軽自動車、ワゴン、スポーツカーでフラッグシップという言葉が用いられるケースは少ない。

 よく見かけるケースを挙げるなら、トヨタミニバンのフラッグシップ=アルファードとか、レクサスのフラッグシップSUV=LXなどがある。いずれもフラッグシップという言葉を用いることで、ジャンル内で最も優れた機能を持ち、車格も価格も最上級に位置付けられている車種であることを訴求し、ジャンル内でのヒエラルキーを明確にするという狙いが見てとれる。

高級車でありながら販売台数もケタ外れに多いアルファードはミニバンのフラッグシップ

 車種が多様化し、ユーザーのクルマに対する価値観が劇的に変化してしまった現在では、車種間にあったヒエラルキーが崩壊しつつあり、フラッグシップモデルに対する畏敬の念が希薄になったと言わざるを得ない。かつては、メーカーが作り出した最新鋭の技術はフラッグシップモデルから採用が始まり、順次下位のモデルへと普及していったものだが、今は再量販モデルから採用されることがしばしばある。

 どんなに優れたメカニズムや機能を生み出しても、それが広く普及しなければ意味がない。そういった事情が、フラッグシップの立ち位置を曖昧にしてしまった感は否めない。それでもフラッグシップモデルは、最新鋭の技術力が惜しみなく注がれた、メーカー(ジャンル)のなかで最も機能が優れ、最も重要なポジションのモデルであり、あらゆる性能における指標となるべき存在であることに変わりはない。

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